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超過酷な電波環境で使える生中継ルーターはWiMAX、SB 4G、LTE、どれ?

2012年10月15日 13時00分更新

UQ WiMAX『WM3600R』
CEATEC2012モバイルルーター配信テスト
Softbank ULTRA WiFi 4G(AXGP)『102Z』
CEATEC2012モバイルルーター配信テスト
Rakuten SUPER WiFi
CEATEC2012モバイルルーター配信テスト

 盛況だったCEATEC JAPAN2012のASCIIブース。そのUstream生中継の裏側で、実はちょっとしたテストをしていました。それは、「どのモバイルルーターが配信に耐えうる速度が出るか」です。

 モバイルルーターが高速化している昨今、その辺の路上などで実施する普通の配信なら、特になにも気にする必要はありません。スマホからだって、余裕で配信できるくらいですからね。
 でも、CEATEC会場となると話はまったく違ってきます。ハッキリ言って、ここの電波状況の過酷さは異常なレベルです。
 会期中になると、1日あたり最大で4万人の”電機業界関係者”と”各業界のプレス関係者”と”デジギア好き(半プロ)”が詰めかける幕張メッセ会場。この時点で、スマホと共用する電話回線を使う電波は、利用できる帯域が相当厳しい状態になることが予想されます(※……と予想していたのですが、実際にはASCIIブースは周辺にドコモブースとKDDIブースがあり、双方ともLTEアンテナを強力に用意していたため、30Mbps近く出てしまう爆速状態でした。まさに行ってみないとわからない!)。

 しかも周囲は無線LANの電波が飽和状態で飛び交っています。どれだけ酷いかはこのスクリーンショットをご覧あれ。

CEATEC2012モバイルルーター配信テスト

 これ、縦はフルHD解像度あるわけですが、1画面ぶんびっしりとアクセスポイントが見えてます(実際には1画面ぶんを超えてます)。この飽和状態では何が起こるかというと、とにかく電波飛ばない! 昨年はブース内のルーターと6m先の機材の間で通信できないできないということが起こりました。今年も似たような状態で、周波数帯を選ばないと、安定してWiFi通信ができません。

 こういう環境でのモバイル生中継では、以下の条件を満たすものが必要になります。

1)アップストリームの速度がなるべく高く、安定していること
 →瞬間的に速度が出ることよりも、コンスタントに一定速度でアップできることが望ましい
2)電話回線と相乗りがない回線であること
 →会場内では数万人がスマホを携帯しています。どこかで誰かが通信を始めると、それだけで回線が不安定になり、生中継が中断する可能性が高まります
3)できるだけ強くWiFi電波が送受信できること
 →規格上の電波出力は決まっていますが、アンテナ設計次第で実用感度は変わってきます

2)を求める時点で、候補の回線はSoftbank ULTRA WiFi 4G(AXGP)、UQ WiMAX、イー・モバイル
LTE(実際に使ったのはRakuten Super WiFi)の3社に絞られました。
 純粋にケータイとの相乗りを(ほぼ)してない回線は、Softbank 4GとUQ WiMAXですが場所によっては割と速いイー・モバさんの状況も気になります。
 個人的事前予測で言うと、「昨年も使ったWiMAXが安定?、ダークホースで場所により爆速のULTRA WiFi 4Gか?」というところ。実際、週アス本誌や週アスPLUS上でも、AXGP回線の状況が良いときの速さは何度かレポートしています(関連リンク/上野駅や秋葉原では20Mbps近く出てます)。回線が空いているというのはやっぱり強い。

 あとは、各キャリアがどの程度手厚く、イベント用の臨時アンテナを手当てしてくれているか。こればっかりは行ってみないとわかりません。

実測テスト開始、今年のCEATEC2012会場でUstream生配信向きだったのは……

 さて、前置きはこれくらいにして実測の結果から。時間帯によってまったく速度が変わってしまうので、実際の中継に使う時間帯(14時30分ごろ)に計測した値を採用しました。3回計測し、その平均をとっています。計測サイトはRadishの大阪サーバーを使用しています。

CEATEC2012モバイルルーター配信テスト

 パッと見てわかるのは、(Ustream配信に直接関係あるかはともかくとして)UPとDOWNの速度差でしょう。特にイー・モバ回線を足回りに使うRakuten SUPER WiFiが苦戦していて、下りは平均で0.5Mbpsほど。上りが2.31Mbps(平均)出ていることから、下りは利用ユーザーが多くてCEATEC会場では速度が出ないのかもしれません。
 速度が安定しない点も用途によっては気がかりです。今回はPCなどでの手元モニタリングはしなかったので問題はないのですが、配信しつつカメラマンが状況をノートPCなどでモニターする場合には、下り回線についても安定的に一定の回線速度を確保できることが望ましいところです。

 上り下りともに比較的安定して速かったのはUQ WiMAXで、特に上りの速さが際立っています。帯域のブレも少なく、上りでは平均して3Mbps以上出ていました(ただし下りは、最大2Mbps、最低1.1Mbpsとそれなりにブレはあります)。
 AXGP方式のSoftbank ULTRA WiFi 4Gは、ある程度事前の予測どおり。上り下りともにまずまずで、特に下りの平均速度は最速でした。苦戦するキャリアが多いのに下りで勝つというのは、やはり帯域が空いている良さが出ているということでしょう。

生放送に使ったキャリアはWiMAX……でも理由は速度だけじゃなかった

 何度も書きますが、CEATECの電波環境は非常に特殊です。なので、今回の計測数値は一般的な利用用途・利用環境ではあまり参考になりません(一般的なPC用途にはむしろ下りが重要)。そうした特殊環境でUstream配信が求めるレベルの通信安定性などを勘案して、ULTRA WiFi 4GとWiMAXの2キャリアに絞り込みました。
 そして最終的に実際に使ったのはUQ WiMAXの『WM3600R』。なぜこのモバイルルーターを選んだかというと、ちょっと特殊な事情があります。

 帯域的にはULTRA WiFi 4G(102Z)でもWiMAX(WM3600R)でも構わなかったのですが、WM3600Rには有線接続できる“クレードル”のオプションがあります。これが、会場での生中継採用の決定打になりました。

CEATEC2012モバイルルーター配信テスト
CEATEC2012モバイルルーター配信テスト

 冒頭に書いたように、WiFiチャンネルが常時飽和し、電波が輻輳した環境のため、WiFi通信はできる限り使いたくありません。可能であれば、モバイルルーターとUstream配信機器は有線LANで結びたいところ。ちなみに今回使用したUstream配信機材はCerevoの『LiveShell』(関連リンク)です。

 WM3600R+クレードルの組み合わせは、有線LAN配信が唯一可能でした。現地で試してみるまではクレードルには別途電源(エネループなど)が必要かと思っていたのですが、実際には本体にガシャコンと合体させるだけで使えます。果たして、NECアクセステクニカの設計者が過酷環境でのストリーミング配信という特殊用途を想定していたのかは不明ですが、実用性高い装備であるのは確かです。ちなみにクレードルを用意する製品はWM3600Rが初めてではないのですが、編集部のUstream配信で使ったのは初でした。

 なお、この配信環境での画質がどの程度だったかは、こちらのUstream放送アーカイブをご覧ください。歩きながらの配信のため、定点計測時ほどの帯域確保ができず画質はそこそこ荒いですが、安定して生中継できています。


Video streaming by Ustream

 特設スタジオからのUstream生中継、ニコニコ生放送、会場内を歩きながらのUstreamロケ放送と色々な配信を実施したCEATEC2012でしたが、機材まわりの新しい発見も多くて、Ustream配信チーム全体の経験値がぐっと上がったイベントでした。

 次の大規模な配信は今秋、11/25(日)開催の『冬のASCIIフェス2012』です。創刊15周年で盛り上がる週刊アスキー、年末にかけてもよろしくお願いしますね!

ASCIIブースで展示した、時代を写し取った15年ぶんの表紙(一部)
CEATEC2012モバイルルーター配信テスト
今年もアスキーをよろしくね!
CEATEC2012モバイルルーター配信テスト
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