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OMAPの魅力とは? バランス重視で進化するスマホ向けCPU

2012年08月23日 14時00分更新

 日本テキサス・インスツルメンツ(TI)は、同社のスマホやタブレット向けチップセット『OMAP 4』の詳しい仕様などを解説しました。

 OMAPシリーズは日本市場で採用されて11年。たんなるCPUではなく、映像処理や音声処理、カメラ機能の制御など、様々な機能を統合した“システムオンチップ”(SoC)と呼ばれる種類のプロセッサーです。1チップで多くの機能が実現できるため搭載機器の高機能化がしやすくなり、省電力化も高められます。

今年以降の製品ロードマップ
OMAP

 シリーズの初代製品『OMAP』は2001年に登場しました。その後2、3と進化を続け、現行最新モデルは『OMAP 4』となります。同OMAPシリーズの特徴は5つあるとTIは説明します。

1. 情報端末として必要となる優れたパフォーマンス
2. 長時間のバッテリー駆動を可能とする低消費電力
3. 高いソフトウェアの互換性を保つことによる端末設計の柔軟性の高さ
4. モバイル端末に欠かせない優れたセキュリティー機能
5. サードパーティーと連携した最新デバイスに対応するソフトウェアの提供

 スマホなどの携帯端末で、優れたパワーと省電力性が要求されるのは当然。OMAPは、それだけにとどまらず、端末設計時の高い柔軟性やソフトウェア部分でのサポート、優れたセキュリティー性を実現しているからこそ、スマホ市場の世界トップ13社のうち9社がOMAP 4を採用しているとTIは述べています。

OMAP 4採用製品
OMAP
↑スマホでは、GALAXY S II、GALAXY NEXUSのほかモトローラ製品、2011年モデルのPRADA Phone、ARROWS X、ARROWS Z、2012年夏モデルのELUGA V P-06Dなどが搭載。タブレットでは、LifeTouch LのほかKindle FireやBlackBerry PlayBookも採用している。
スマホ・タブレット以外にNexus Qなども
OMAP
↑Android 4.0搭載のメディアプレーヤー、Nexus Qなどスマホとタブレット以外の機器にも採用されている。

 またOMAPシリーズは、世代が進むと同じ処理をした場合に同等か低い消費電力を実現し、価格も同等か安くするというコンセプトで開発をしていると説明。性能が高くなってもコストは従来通りなので、端末メーカーにはもちろんユーザーにとっても大きなメリットがあるわけです。

シリーズ初のデュアルコアモデル『OMAP 4』

 現行モデルのOMAP 4については、チップのブロック図を紹介しました。ここではプロセッサーのチップとメインメモリーとなるDRAMとを重ねて実装する“パッケージオンパッケージ”(PoP)という構造も採用しています。これにより基板上の実装面積を減らし、スマホなどの小型携帯端末への実装を容易にしています。

OMAP 4のブロック図
OMAP

 では、ブロック図の詳細を見ていきましょう。
 青と緑の部分はCPUコアです。OMAP 4は、CPUコアとしてメインの処理を行う『ARM Coretex-A9』を2つ搭載しています。また、低負荷の処理を低消費電力で行う『ARM Coretex-M3』も2つ搭載。これら2種類のCPUコアを状況によって使い分けることで、高い処理能力と省電力性を両立しています。
 Coretex-A9の動作クロック周波数は、初代のOMAP 4 4430が最大1GHz(1.2GHzで動作する選別モデルも一部提供)、現行スマホで採用されている第2世代のOMAP 4 4460(以下、4460)が最大1.5GHz、この秋以降に登場予定のスマホで搭載される第3世代のOMAP 4 4470が最大1.8GHzとなります。

OMAP 3、4シリーズのスペック
OMAP
OMAP 4460の特徴
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↑GALAXY NEXUS、AQUOS PHONE 104SH、ELUGA V P-06D、LifeTouch Lなどが採用。
Android 4.0最初のスマホ
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↑OMAP 4 4460を採用したGALAXY NEXUSは、Android 4.0を搭載したリードデバイス(リファレンスモデル)だった。
OMAP 4の最新モデルは4470
OMAP
↑デュアルコア1.8GHzで駆動するモデル。COMPUTEX TAIPEI 2012では、Windows RT搭載タブレットの試作機をデモで披露した。
OMAP

 ピンクは、動画のハードウェア支援機能を実現する部分です。1920×1080ドット、30fpsのフルHD動画のエンコードとデコードをサポートしています。また、動画形式が変わったとしても最新コーデックに対応できるように、DSPも用意しています。柔軟な対応ができるように考慮されている点もOMAP 4の特徴と言えます。

 紫は、カメラ機能の処理を行なう部分です。TIはデジタルカメラ向けプロセッサーも開発していて、その技術を応用したものだそう。写真撮影時の露出などの処理や顔認識、歪み補正といった様々な処理ができるので、あとは撮像素子とレンズのみを搭載すればカメラ機能が実現可能となります。別途カメラの処理機能を用意する必要がなく、コストダウンにもつながります。

 Coretex-A9の下にあるのが2Dや3Dの描画処理を行なうGPUで、『Power VR SGX540』を搭載します。世代によって動作クロックが異なり、4430が304MHz、4460が384MHz。描画能力は、4430が40Mトライアングル/秒、4460が50Mトライアングル/秒となります。第3世代の4470は『Power VR SGX544』を搭載し、描画能力が70Mトライアングル/秒に高まります。

 その右にはオーディオ用のプロセッサーがあります。これは、MP3再生などを行なうためのもので、OMAP 4でMP3再生だけする場合はこのオーディオ用プロセッサーのみが動作するため、非常に長時間のバッテリー駆動が可能になるとしています。

 さらにその横にセキュリティー機能の『M-Shield』があります。このM-Shieldは、たとえば音楽や映像などのデジタルコンテンツの著作権保護機能の実現に利用されます。著作権保護されたダウンロードコンテンツや、DTCP-IPで保護された映像コンテンツも、M-Shieldによって安全な状態で取り扱えることになります。

 ほかにも、液晶ディスプレーの表示を制御する機能や、メモリーコントローラー、HDMI出力などの機能が統合されています。

次世代『OMAP 5』はどうなる?

 2013年に登場予定のOMAP 5は、製造プロセスがOMAP 4の45nmから28nmに微細化されることになっています。これにより、同面積でもより多くの機能を搭載可能となります。
 CPUコアはCoretex-A9の次世代にあたる『Coretex-A15』が2個。動作クロックは最大2GHzに到達。GPUも『Power VR SGX544』が2個と、デュアルコアの構成になります。これは、製造プロセスが微細化されたからこそ実現できたものと言っていいでしょう。
 ちなみにCPUがクアッドコアでない点については、「2013年まではデュアルコアのほうが価格対性能比で有利になると判断して、OMAP 5でもデュアルコアにしている」と説明しました。
 このほかにも、ハードウェア動画支援機能が60fpsのフルHD動画をサポートするといった機能強化が実現されます。こういった特徴を見る限り、OMAP 5を搭載するスマホはOMAP 4搭載モデルよりも大幅な高性能化が期待できるでしょう。搭載製品の発売はまだ少し先になりますが、今から待ち遠しいですね。

OMAP 5のおもなスペック
OMAP

■関連サイト
日本テキサス・インスツルメンツ(TI)の『OMAP』製品サイト

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