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プロの運転士も参戦!?男達の激アツな鉄道バトル【ニコニコ超会議】

2012年05月08日 22時00分更新

 ニコニコ超会議の鉄道ブース『超鉄道』の2日目(4月29日)では、トレインシミュレーターにエアトレイン大会と、鉄道に関する芸で一般参加者が激アツなバトルを繰り広げた。その様子をレポートする。

■トレインシミュレーター 最強運転士大会

ニコニコ超会議2012

『超鉄道』のプロデューサーを務める向谷氏といえば、1995年に日本で初めて実車撮影による本格的なコンシューマー用のトレインシミュレーターソフト『Train Simulator 中央線』を開発したことで知られる存在だ。

『Train Simulator』シリーズはPC用として21作品がリリースされており、その後PS3で『Railfan』シリーズを展開するに至っている。向谷氏のトレインシミュレーターは鉄道会社からも高く評価されており、プロの運転士の訓練に使われる東急電鉄用のシミュレーターも手がけている。その向谷氏が作成した東武伊勢崎線のシミュレーターで運転テクニックを競うのが『トレインシミュレーター 最強運転士大会』だ。

 会場には、実際に使われていた東武8000系の運転台でつくられたコントローラーが用意され、一般参加者から募ったプレーヤーが腕を競った。参加したプレーヤーは10代から40代の男性が15人。休日ということもあり、比較的若い参加者が多かった。

【競技ルール】
・参加者はランダムに順番を決定
・東武伊勢崎線の春日部駅~浅草駅間で、1駅ずつ交代しながら運転する
・判定は、運転テクニックから向谷氏とスタッフが運転操作を見ながら得点方式で行なう
・判定の要素は、駅の停止位置の誤差やブレーキの使い方、制限速度の遵守などがある
・通常のプレーでは表示される残りの距離は非表示。実際の運転士と同じように所定の停止目標で停める

ニコニコ超会議2012

 ふだん乗っているとわからないかもしれないが、電車の運転というのは意外に難しく、ダイヤどおりに運行し、かつ駅の停止位置に正確に停めるにはそれなりの訓練を必要とする。

 未経験者が初めてプレーすると、何キロまで加速してどこでブレーキを掛ければいいのかわからずに、駅の手前で停まったり、大幅にオーバーランしてしまう。また、東武線伊勢崎線のような、編成が8輌、6輌、4輌と列車よってつながっている輌数が異なる路線では、停止目標が駅と輌数によって違う。そのため、どこの停止目標に停めなければならないか、映像をよく見て見極める必要があるのもこの大会の難易度を上げている。

 さすがに自ら大会に参加するだけあり、どの参加者もトレインシミュレーター自体の経験はあるようで、基本的なテクニックは身につけていた。なかには、うっかり非常ブレーキを使ってしまう場面も見られたが、2メーター前後でピタリと停める参加者が多かった。また、停止目標を間違えてしまうケースもあった。

 その中で異彩を放ったのが、本職の運転士の登場だ。関西方面の運転士をしているという、その参加者は、プレー前は「初めて運転する路線なので……」と語っていたが、実際にプレーすると、ケタ違いのテクニックを披露。停止位置は-0.43メートルと、参加者中でトップの誤差となった。

ニコニコ超会議2012

 うまい運転士は乗客が停止時に不快感を感じないように、停車直前でブレーキを緩めるて速度を軽減させるのだが、さすがに本職だけあってこの操作も完璧。これにはさすがの向谷氏も驚きを隠せなかったようだ。ということで、優勝はこのプロ運転士となった。優勝者にはニコニコ超会議号のレアものNゲージの鉄道模型が贈られた。

 優勝コメントとして、この参加者は「電車は2輌手前で30キロ、1輌手前で10キロで絶対停まります。皆さん頑張ってください」とプロならではの助言をしてくれた。

 本職が出場して優勝してしまうという意外な展開に向谷氏は「現職の方が優勝するというこの異例な事態に問題があるかどうかは来年以降の課題とさせていただきます」と苦笑しながら締めくくった。

■第一回世界エアトレイン大会

“エアトレイン”とは、列車のモーター音や警笛、エアーコンプレッサーの空気音、レールのジョイント音を口でマネること。今までは、鉄道ファンが個人的に何となくやっていたのを、いかに本物の音に近いか、テーマ選択がおもしろいか、パフォーマンスが優れているを競技にしたのが本大会。提唱者の『SUPER BELL''Z』の車掌DJ野月氏は、鉄道関連のイベントで、ライブとこのエアトレイン大会をよく開催しており、鉄道ファンのあいだでも認知されてはじめているジャンルだ。

 大会の参加者は超鉄道ブースに来ていた一般参加者11名。審査委員は向谷氏をはじめ、野月氏、鉄道好きで知られるホリプロマネージャーの南田氏、『SUPER BELL''Z』のS-Flyer DJ桜井氏だ。

 向谷氏は“世界”エアトレイン大会と銘打っていたため、外国人のエントリーを期待していたようで、しきりに外国からの参加を促していたが、結局現われなかった。そのため、方針を転換して“外国の車輌のマネもオーケー”ということで世界エアトレイン大会となった。お手本として野月氏が、ヨーロッパを中心に走っているシーメンス社製インバーターを搭載している電気機関車のモーターの起動音(ドレミファソラシド~と聞こえる)を披露したほか、南田氏がイタリアの市電の走行音と方向転換をパフォーマンスつきで行なった。

 一般の参加者からは、中央線のE233系の空転音や、新幹線のすれ違い時の音、“常磐線E501系が微妙なブレーキの掛け方で停まるときのインバーター音”、“タキ143645のブレーキ音”など、かなりマニアックでユニークだが、特徴をよく捉えた演技をしていた。なかには、東京メトロの現職の運転士が自身の運転している車輌のエアトレインを披露していたほか、吉本興業でエアトレイン芸人を目指しているという20代の女性参加者もいた。

ニコニコ超会議2012

 優勝者は京浜急行の旧1000形のコンプレッサー音を表現したTc103さんという男性。旧1000系は既に廃車になってしまったが、「そういえば、こんな音してたな」という、筆者も納得の演技だった。優勝したTc103さんにはNゲージのニコニコ超会議号の模型が贈られた。

 エアトレイン大会は、鉄道の音を表現できれば誰でも演技できる。また、ネタの選定から音の表現まで個性が出て、パフォーマンスも見ていておもしろいので、音にコダワル“音鉄”のジャンルのひとつとしてさらに定着していきそうだ。

【第一回】世界エアトレイン大会優勝演技


■ヴァイオリンの音が踏み切り音に聞こえる!?

ニコニコ超会議2012

 ヴァイオリニスト岡田鉄平氏とピアニスト杉浦哲郎氏のデュオユニット『スギテツ』。鉄道の音とクラシック音楽を融合させた独自の音楽で、アルバム『電クラ3~線路は続くよどこまでも~』などをリリース。今や鉄道ファンにもよく知られた存在となっている。そのライブが超会議の鉄道ブースで行なわれた。さらに、向谷氏もキーボードで参加して、鉄道好きミュージシャンの夢の共演となった。ユニークだったのは、ヴァイオリンで踏み切りの音をマネられるという点。踏切の音は鉄道会社によって微妙に異なるが、その差も再現できたり、上りと下りが同時に来ると音がせわしなくなるが、これを本物と間違うばかりにヴァイオリンで表現していたのには脱帽した。

■対談! 向谷実×松本零士

ニコニコ超会議2012

 超鉄道ブースの最後は、向谷氏と松本零士氏の対談が行なわれた。松本零士氏といえば、代表作のひとつ『銀河鉄道999』で、鉄道好きでなくとも誰もが知っている漫画家。実はほかにも『漂流幹線000』という新幹線のような列車をネタにした作品もある。さらに、西武鉄道や伊賀鉄道などのラッピングトレインのデザインも手がけるなど、鉄道となじみが深い。

 小倉の松本氏の実家は鉄道のすぐ側にあり、氏によると「鉄道の音が子守歌だった」という。そんな松本氏は高校卒業後に東京に上京。上京する際には銀河鉄道999に登場する主人公 星野鉄郎のように、片道切符でSLのひく列車に乗り、まる1日かけて行ったという。その自身の経験が名作を生むきっかけとなったようだ。メカニックに造詣が深い松本氏。SFを描くときには、いずれ生まれてくるであろう技術を想定しながら創り上げていくという。銀河鉄道999のような宇宙列車もいずれは実現できるのではないかと語っていた。

■関連サイト
ニコニコ超会議

 

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