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映画『テルマエ・ロマエ』が4月28日公開! 原作者・ヤマザキマリさんに訊いてみた

2012年04月24日 09時00分更新

文● 中山智 撮影●高野裕靖

テルマエ・ロマエ

■公衆浴場文化も海外文化の吸収力も似ている?

――そもそも、原作を描くきっかけは?

ヤマザキマリ(以下、ヤマザキ) 古代ローマオタクの旦那の影響と、現代ヨーロッパにはなくなってしまった公衆浴場に対しての興味とか、私自身海外暮らしが長くて、やはり日本人としてのお風呂に対する憧れとかそういういろんな要素が混ざり合って生まれました。

――公衆浴場文化があったというのは不思議ですね。

ヤマザキ ヨーロッパにも温泉施設はあるんですが、どちらかというとリゾートとかそういったイメージなんですね。でも古代ローマのテルマエは本当に銭湯なんです。街の区画に必ずひとつはあって、午後1時になると皆が集まってリラックスする。

 古代ローマ人と日本人は多分似ているところが多いんじゃないかなと。これはウチの旦那が最初に言い出したんですが、はじめて旦那が日本にきて、丸の内のサラリーマンがわーっと歩いているのを見て、「きっと古代のローマはこんな感じだったんだ」なんて言い出して。新幹線を見てもコレは「古代ローマ人の気質と同じだ」って。鉄道自体は海外から輸入されたものなのに、ものの見事に日本のものとして進化させている。

 ルシウス(本作の主人公)も作品内で日本にタイムスリップして、そこで見た日本の風呂をそっくりまねていいのだろうか?と悩むんですが、実は古代ローマ人ってそういう人種なんです。海外に侵攻して、そこから文化を取り入れて自分たちの文化として吸収、進化させていくことにたけていたんですね。

■ローマのチネチッタでロケをすると聞いて大丈夫だなと

――そんな原作の映画版を自身でご覧になっていかがでしたか?

ヤマザキ すばらしいです! みんな観たほうがいいです!! テルマエ好きはもちろん、ローマ好き、阿部寛さん好き、上戸彩さん好き、老人好き、どんなタイプの人でも見終わったあとにグッとくる、いろんな意味で間口の広い作品に仕上がっていたと思います。マンガじゃできない“映画力”っていうのがあるんだなと実感しました。

――最初に“映像化”という話がきたときは?

ヤマザキ いやもう“ありえない”と。どうやって作るんだろう、絶対変なことになるなって。でも撮影をローマのチネチッタ(ローマ郊外にある撮影所)を使うと聞いたときに、これは全然大丈夫だなと。

テルマエ・ロマエ
(C)2012『テルマエ・ロマエ』製作委員会

 キャストに関しても、日本人がローマ人を演じるというのに不安はなかったですね。付け鼻とかされたら困るなぁとは思いましたけど(笑)。阿部さんたちで全然違和感なかったです。旦那もチネチッタを使うと聞いたときに「なにっ!」って驚いてましたし、阿部さんを見て「この人なら大丈夫」って言ってましたから、国内だけじゃなくて海外でも通用すると思います。

テルマエ・ロマエ
(C)2012『テルマエ・ロマエ』製作委員会
テルマエ・ロマエ
(C)2012『テルマエ・ロマエ』製作委員会


――上戸さんの役が先生をモデルにしているとか?

ヤマザキ どうなんですかね(笑)。監督さんが言うには、私のことをずっと観察してましたって。実際作品内で「あっ、私っぽい」って思うシーンはありましたよ。

テルマエ・ロマエ
(C)2012『テルマエ・ロマエ』製作委員会

 ローマで撮影しているときに上戸さんとはお会いして、「どういう感じなんですかね?」って相談は受けました。だから、「ほらあそこにステキな彫刻があるでしょ。美しい体を見るとウワァー(ハート)ってなって、無性にスケッチしたくなるのよ」っ伝えましたので。

 原作にはない役ですけど、この映画は上戸さんが出てくれて良かったです。彼女がいなかったら濃い顔の男と老人ばかりの映画になってましたから。やっぱり映画にはヒロインって必要なんだなって思いました。

テルマエ・ロマエ
(C)2012『テルマエ・ロマエ』製作委員会


私が日本に戻ったときに受ける驚きの感覚を伝えたい

――ところ現在、海外に在住とのことですが作品はどのように製作されているのですか?

ヤマザキ 担当さんとの打ち合わせはスカイプを使ってます。会話だけではわかりにくいときは、ビデオチャットにして、ネーム(下書き)を書いて見せながらしてます。

 原稿自体は手書きで書いてますので、ペン入れまではこちらでやって、スキャンをしてデータとして日本に送信。あとは日本でアシスタントさんに仕上げてもらうという形式です。

――海外にいて不便な点はないですか?

ヤマザキ まったくないですね。ひと昔前なら打ち合わせも国際電話しかないし、原稿も生原稿を送るしかない。でも今なら全部タダでできますから。

 ネタ集めにしても、どちらかというと私が日本に戻ったときに受ける、「なんだこりゃ!?」っていう感覚を伝えたかったので。たとえば、100円ショップとかに行くと、お風呂グッズがいっぱいあるわけですよ。こんなもんまで商品化するか? っていう。だからたまに日本に戻れるくらいのほうがちょうどいいのかも。

――最後に週アス読者に向けてひと言お願いします。

ヤマザキ ローマのロケや阿部さんたちの演技で、原作のイメージそのまま。さらに上戸さんのおかげで華もありますし。原作を読んだことがある、ないに関わらずいろいろな人が観ておもしろいと思ってもらえる作品になってますので、ぜひ観てみてください。

――ありがとうございました。
 

テルマエ・ロマエ

ヤマザキマリ
漫画家。『テルマエ・ロマエ』(エンターブレイン刊)で2010年に『マンガ大賞2010』と『第14回手塚治虫文化賞短編賞』を受賞。現在はシカゴでイタリア人の夫と息子と暮らしている。

映画『テルマエ・ロマエ』
4月28日(土)全国東宝系にて拡大ロードショー

古代ローマ帝国の設計技師が現代日本の銭湯にタイムスリップ! 抱腹絶倒風呂マンガを主演・阿部寛、ヒロイン・上戸彩で実写映画化!!

■関連サイト
『テルマエ・ロマエ』公式サイト
 

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