2012年04月05日17時53分

“やっぱりパソコンが好き”と思ういくつかの理由

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 週アスを開くと、最近はスマートフォン、タブレット、クラウドといった単語があふれ、パソコン本体の話題は減少気味と感じる。アプリ紹介もiOSとAndroid向けがメインだし、世の中を見回してもiPadやスマートフォンの話題はよく耳にするが、Windowsパソコンの最新モデルや“Windows 8が実現する新しい使い方~”なんて話題に遭遇することはない。

 これは以前、僕自身の著書で書いたことだけど“もっとも個人との結びつきが強いコンピュータ”を“パーソナルコンピュータ”とするならば、現代のパーソナルコンピュータは“パソコン”ではなく“スマートフォン”、あるいは“iPad”となった。この文章を見た担当編集者が本の表紙に“パソコンは消える”とあしらったのを、そのまま著者校正でも通したので、目にした人に「本田さん、もうPC業界は捨てたんだね」と悲しいことを言われた。でも、僕はパソコンの存在意義が薄れていくとはまったく考えていない。

 “パソコンが消える”というのは、伝統的なパーソナルコンピュータはなくなるという意味で、スマートフォンやiPadなどのムーブメントに飲まれていくなかで、むしろさらに良い製品へ脱皮していくと思っている。

 そんな話を週アスの副編ACCNと話してたら「じゃあ”もっとパソコン!”って論調でお願いしますよ」と言われ書いているのが本稿だ。ただ、無理矢理パソコンのほうがいいなんてことを言うつもりはない。どんな端末がいいかは、使うシーンによって違ってくるからだ。

パソコンが嫌いになるいくつかの理由

 パソコンはスマートフォンやタブレットの何倍もの能力があるし、より複雑なソフトウェアが動く。拡張性も高ければ記憶容量だって圧倒的に多いわけで、処理能力など諸々のスペックでパソコンが負けることはなにもない。

 でも、それでもiPadのほうがいいという意見が目立ったり、パソコンは個人で買うつもりはなかったけど、iPadは欲しいという人がいたり、スマートフォンだけで十分かな? と思ったりする人が少なくないのは、パソコンが嫌いになるいくつかの理由があるからだ。

 僕は昨年末ぐらいから、ずっと「2012年はパーソナルツールとしてのパソコンの復活がある!」と言い続けているけれど、それは今年後半から来年にかけて、パソコンがイヤだなぁと思う理由がかなり減ってくると見ているからだ。

 パソコンは使い始めようとしても、すぐにパッと使い始めることができないし、いざ使おうと思うとバッテリーが自然に減っていて役に立たないことも多い。たんにメールを受信するだけのために電源を入れ、ネットに繋がっていることを確認して受信処理を行なう必要がある。受信しているつもりで受信できていないこともあるし、そもそもバッテリーでの稼働時間が短すぎる。大半の作業は最初からやりたいことが決まっているのに、使い方をきちんと憶えておかないと、どうしていいのか解らなくなることもあるし、データファイルの管理も自分で整理整頓が必要だ。

 “インターネットとの接点を求めてコンピュータを使う”という視点で見たら、今のパソコンはとても不便だし、とても好きになれない。というのは、毎日パソコンで仕事をしている、そしてパソコンがとっても好きな人たちにとっても同じではないだろうか。なぜなら、”パソコンができないこと”の多くを、スマートフォンやiPadでは普通にこなせるからだ。

 前回のコラムで書いた”紙のような表示”についても同じ。技術的な制約があるのは十分承知のうえで言えば、より高い能力をもっているハズのパソコンが、スマートフォンやiPadに負けるなんて、ちょっと恥ずかしい。今まで何年も、ニーズがあるとわかりながら進歩させてこなったのが原因だ。

 と、クソミソに扱き下ろしているように思えるかもしれないが、そんな不満がたくさんあるのに、僕はいまだにパソコンを使い続けている。スマートフォンとタブレットとパソコン。このうちひとつを選べと言われたら、僕は確実にパソコンを選ぶ。

あなたがパソコンが使う理由は何?

 確かにパソコンが嫌いになる理由はいくつかある。でも、それ以上にパソコンを使いたいと思う理由がたくさんある。スマートフォンやタブレットは、目的がハッキリしている場合は使いやすいが、シナリオから逸れた使い方には向かない。たとえば、長文の入力が大変なことは誰も否定しないだろう。

 未来はもっと違う新しい技術になるのかもしれない。でも、現状を見れば、シナリオ指向のスマートフォン、タブレットの良さを活かすには、パソコンのもつ創造性を犠牲にしなければならない。

 パソコンは使いこなしが必要ではあるが、そのぶん、使いこなしさえすれば、自由に自分だけの発想で創造力を発揮できる。道具としての自由度と適応範囲の広さ。これはパソコンにしかないものだし、これからも失わない輝きだと思う。

 一方で、何にでも使える汎用のコンピュータを使いこなすよりも、世の中にあるあまたのネットワークサービスを、アプリケーションを通じて楽しめれば十分という人には、パソコンは魅力ある製品ではないかもしれない。しかし、“パソコンが嫌いになるいくつかの理由”が解決されたなら、積極的に使いたい道具にも変化が現われてくるのではないだろうか。

 こんなことを言うのは、「なぜ自分は常にパソコンを使っているのだろう?」と自問したとき、iPadやスマートフォンを使っていて「パソコンがあれば手早く済ませることができるのにな」と、さまざまな場面で道具としてのパソコンを欲している自分があるからだ。

 いや、そんなことはない。iPadは……っと、ここまでにしておこう。こうした議論には、そもそも結論などない。スマートフォンやiPadが登場したからといって、パソコンがもっている価値が変わっているわけではない。たんに”別の評価軸が現われた”ということに過ぎない。

評価軸が違えば、どんなものの価値も変わる

 たとえば僕は高画質、高音質な機器が何より大好きだ。世間の人がなんと言おうと、自宅で音楽を聴くとき、映像を楽しむときは、少しでも良い品位で楽しみたいと思う。人気のアップル製品も、この分野では一流というわけではないから、メインのシステムで音楽を聴く時にはLINNプロダクツの製品で音楽を再生させるし、映像を楽しむ時ならばパナソニックを好んで選ぶ。アップルの製品が便利なことは否定しないが、Apple TVやAirMac Expressを使おうとはまったく思わない。

 これは僕が、音質や画質に関して自分なりの評価軸をもって、その軸をぶらさないからだ。もしパソコンで管理するデータとの連動性、ネットワーク設定の容易さ、システム全体の構築しやすさ、そもそも面倒なことなんか考えたくないよ、と音質や画質以外のことを優先し、手元のスマートフォンやタブレットからすべてをコントロールしたいと思うなら、アップルの製品で自宅を固めるだろう。

 こういった評価の軸は、人それぞれの好みや、その時々の状況に応じて異なる。評価の軸が変化すれば、どんなものの価値も変わるものだ。これは、「最適な端末って何よ?」という疑問に対しても同じだ。

 よほど嫌う理由がなければ、自分の状況に合わせて良いものが決まる。パソコンが良い場面もあれば、タブレットを使いたい場面もあるだろう。もちろん、スマートフォンがいいときもあるし、場合によってはガラケーに戻りたいと思うかもしれない。

 というわけで、何が一番いいか? ではなく、こんな場面にはこの製品がいいよね? という“使い分け”の方向に考えを変えていくほうがいい。

Windows 8を「なかなかイイじゃん?」と思えた理由

 「そんなことは言われなくても……」という声が聞こえてきそうだが、それでも耳をすませば「パソコンはもう終わり」という声が、たくさん聞こえてくる。しかし、“パソコンが嫌いになるいくつかの理由”は、おそらく年末から来年にかけてなくなるだろう。Windows 8が登場するからだ。

 Windows 8は、スマートフォンやタブレットのように、携帯電話網やWi-Fiに接続しながらスリープし、スリープ中にもメールやSMSを受信する仕組みがある。起動は日々高速化され、待機時消費電力もインテルが改善に取り組んでいる。

 また、賛否両論ある従来型デスクトップと、タブレット、スマートフォン向けユーザーインターフェース“Metro”の併存は、異なるタイプのアプリケーションを両方使えると思うと、割とキレイに分けて考えることができる(とテスト版を使って感じた)。

新搭載Metro UI
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↑従来通りのデスクトップUIに加え、タブレットUI(Metoro)を用意。これはそのままキーボードとタッチUIとなるが、意外なほどよく馴染んでいる(デスクトップとMetroは二者択一ではない)。
IEのUIは2バージョン
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↑Internet Explorer(IE)は、別途タッチパネル向けのUIを用意し、用途によって使い分けることができる。
基本ツールはタッチUIを用意
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↑メールなどの基本ツールは全画面で手軽に利用できる。従来通りのデスクトップ表示で好みのメーラーを使うことも可能だ。
Facebookもタッチでスラスラ
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↑Metroを使ったアプリの例。受け身で使うアプリとアクティブに使うアプリ。それぞれをデスクトップとMetroで使い分けるイメージだ。
アプリStoreを用意
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↑アプリケーションはStoreで配布、アップデートなどもここから配信されるなど、スマホやマック同様にわかりやすく。

 Metro対応のアプリケーションは、完全にシナリオ型。使い方や目的がハッキリしたアプリケーションを、シンプルかつ流麗なグラフィックスと操作性で操れる。デスクトップ型アプリケーションとは段違いだ。

 しかし、Metro対応アプリケーションはシナリオ型の全画面操作だから、自由でクリエイティブな作業は向いていない。もしクリエイティブな作業をしたければ、デスクトップ型アプリケーションを使ったほうがいい。

 この2つの間が素早く切り替えられるうえ、スタートメニューの代わりにMetroのランチャーが出てくるという大胆なやり方は、従来のWindowsを好んでいる人にとって(見た目にも)受け入れがたいかもしれない。しかし、実際に使ってみると、これがなかなか悪くない。そもそも、アプリケーションを捜して起動する、なんてことは、Metroのほうが向いているのだから。

 もちろん、重量の問題などもあるため一概にどんなやり方で使ってもらうのがベストかは言えない。しかし、キーボードもタッチ操作も(ペン操作も)可能な『ThinkPad X220 Tablet』にWindows 8の入れてみて、あれ? この方向は可能性あるんじゃない? と感じたのだ。

筆者の愛機
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↑ThinkPad X220 TabletにWindows 8(パブリックβ版)をインストール。非常に気に入り、MacBook Airに代わり常に持ち歩いている。

 アップルのような、思わずワクワクする娯楽性はないかもしれない。でも、”あれ? これ、なかなかイイじゃん?”とは思わせるものに、パソコンもなっていく。マイクロソフトはネットワークサービスのLiveも同時に更新し、新しいWindows Phone 8も年内には登場してくる見込みだ。

 ”予断”をもたずにパソコンの未来を考えてみると、意外にもそう悪くない方向に進んでいるんじゃないかと思う。

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