週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

【吉浦監督インタビューあり】映画館にコメントが流れる『イヴの時間 劇場版』のニコニコ上映会開催!監督の最新作も初公開

2012年03月01日 09時00分更新

■なんとも特別な“ニコニコ映画上映会”が映画館で

 決められた日時にみんなでリアルタイムに映画をいっしょに観て、さらにコメントを入れて楽しむニコニコ動画のコンテンツ“ニコニコ映画上映会”。ふだんのニコニコ映画上映会では、ブラウザー上からおなじみのプレーヤー画面で映画を観つつ、コメントを入力していきます……。

 しかし、2月25日にユナイテッド・シネマ豊洲で行なわれた“ニコニコ映画【特別】上映会”は、ちょっと特別。なんと実際の映画館の巨大スクリーンで映画を観つつ、そのスクリーン上にコメントを流し、さらに書き込みもできるという“史上初”のソーシャル映画視聴イベントだったのです! スクリーンで映画を観ながらコメントを書くとは一体どゆこと?

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
今回のイベントで上映された映画は吉浦康裕監督の『イヴの時間 劇場版』。

『イヴの時間』は、頭上のリング以外に人間と外見がほとんど変わらないアンドロイドが“家電”として扱われてる近未来の社会を舞台にした、人間とアンドロイドの関係を描いた作品です。主人公のリクオは、家事用ハウスロイドの“サミィ”を道具として使っていた。そのサミィの行動記録をたどると、“人間とロボットを区別しない”という奇妙なルールを掲げる喫茶店“イヴの時間”にたどり着く……。

 '08年に“ファーストシーズン”第1話(全6話)がウェブ配信されたのち、'10年にファーストシーズンを1本に再構成した“劇場版”が公開されました。

 今回のイベントでは、上映に先駆けて、『イヴの時間』監督の吉浦康弘さん、小説版『イヴの時間』著者の水市恵さん、特別ゲストのナギ役声優の佐藤利奈さん、MCの氷川竜介さんによるトークショーが行なわれました。佐藤さんの生ボイスドラマ朗読や、『イヴの時間』関連コンテンツの裏話が飛び出したほか、ニコニコ動画らしく視聴者のコメントに対して反応してみせたりも。

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会


■監督のコメントや視聴者のコメントがスクリーンに

 そしていよいよ上映イベントです。これは、実際に映画館のスクリーンで『イヴの時間』が流され、それを映画館で観ている観客と、ネットの視聴者が同時に同じ映像とコメントを楽しむというもの。とはいえ、映画館で行なわれる“特別編”なので、通常のニコニコ映画上映会とは少し勝手が異なります。

 まずコメントの入力方法。ブラウザーからのネット視聴者はふだんどおりに書きこめばオーケーですが、映画館の視聴者が書き込むときは、WiFi機器から専用URLにアクセスして“映画館ユーザー用コメント欄”に入力します。つまり、映画館の視聴者は“スマホやノートPCを起動しながら映画を観る”というスタイルなのです。普通の映画館ならスマホ片手に観るなんて論外な視聴スタイルですが、そこはニコニコユーザー。画面にコメントが載っても楽しめるユーザーばかりなので、映画館で液晶のバックライトが光っていてもあまり気にしてない様子でした。

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
映画館の視聴者には専用アクセスポイントのID・パスと、コメント入力欄URLが配布された。
『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
映画上映中もスマホやノートPCを起動させて観る。フツーの映画館じゃ絶対ありえない光景だけど、これがニコニコ流の楽しみ方。

 コメント表示は、スクリーン上部に吉浦監督と水市さんの生コメント欄、中央はブラウザー視聴者の欄、下部は映画館の視聴者の欄とはっきり分けて表示されます。スクリーン上部の監督・著者コメント欄は“★監督”、“★水市”と付いているので、どちらの入力コメントなのか一目瞭然です。

 私も映画館の視聴者の専用URLから書き込んでみましたが、入力してから5秒ほどのラグでスクリーン下部にコメントが流れるので、書き込みのストレスはありません。ですが、長文を入れるとスクリーンを観る時間が減るので、書き込みと視聴のバランスが少々難しいかな? という印象でした。

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
吉浦監督(右側)と水市さん(左側)もプレミアムシートに設置したノートPCからコメント入力。暗い中でも監督のタイピング速度は速かった!

 そんな中、吉浦監督と水市さんは「カチューシャは僕の趣味(監督)」、「カトランの由来はキャトラン(監督)」、「階段を降りるシーンが執筆最難関でした(著者)」と、場面ごとのエピソードを積極的に書きこんでくれました。そのコメントを見て視聴者が反応を返すことで、常にコメントが途切れない状態に! これが本イベントの目指すところなのか!! 

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
画面上部のコメント(モデルは実家の~)が監督・著者コメント欄。画面下部の1ラインが映画館欄。それ以外の多数コメントがネット視聴欄。
『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
ノートPCでコメントを書き込んでいるユーザーも多かった。イベント開始直後は専用WiFiが不安定だったが、後に改善された。


■吉浦監督の最新作『サカサマのパテマ』でサプライズ

『イヴの時間』の上映会が終了したのち、再び壇上に吉浦監督が登場。そこで、今年公開予定の最新作『サカサマのパテマ』の第1話がスクリーンで先行初公開されるというサプライズが! 映画上映会と同様、映画館とブラウザーから書き込みができる状態ですが、視聴者全員とも事前情報のない状態で観た作品なので、「パテマかわいい!」、「これは○○かな?」、「○○っぽいw」など、『イヴの時間』のときより手探りなコメントが多かったのが印象的でした。

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会

 ちなみに吉浦監督のトークショー情報によると、主人公のお姫様・パテマは14歳の設定ですぞ! 

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会

『サカサマのパテマ』
公開情報  :2012年全国劇場公開
原作・脚本・監督 : 吉浦康裕
アニメーション制作:パープルカウスタジオジャパン
配給:アスミック・エース
(C)Yasuhiro YOSHIURA/Sakasama Film Committee
公式サイト: http://www.patema.jp(関連サイト)

 '12年公開予定の完全オリジナルアニメーションです。なお、劇場で公開された配信版『サカサマのパテマ Begining of the Day』の第1話は、『サカサマのパテマ ニコニコ公式チャンネル』(関連サイト)で観られますよ。

 イベントが終わってみると、スクリーンにニコニコ動画のコメントが出たり、暗い上映中にスマホが点灯していたりと、独自の要素だらけでしたが、そうした部分に対する不満はまったくなし。監督と小説著者のコメントのテンポの良さもあって、非常におもしろいイベントでした!

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会
『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会


■イベント上映直前の吉浦監督にインタビュー!

――イベントが始まる前の心境みたいなものをお聞かせください。

 以前にも映像に合わせてコメントを入れるイベントに参加したことがありまして、当時は緊張したのですが、そのときの楽しさがもうわかっているので、今は“楽しみ”な心境しかありません。どんなおもしろコメントが見られたり、どんな反応が返ってくるんだろうかとか。今回の映画館でのこうしたイベントは多分、史上初の試みということですが、僕自身も新しいもの好きなので、そういう初のイベントに選ばれてうれしいのと、楽しみ、それだけですね。

『イヴの時間 劇場版』ニコニコ上映会

――ニコニコ映画上映会でイヴの時間が選ばれた経緯について教えてください。

 ニコニコ動画では短編のときから公開しておりまして、ニコニコと共に進んできました。『イヴの時間』はウェブ公開や配信から始まったアニメと言われてますが、実際そのとおりなので、今回、ニコニコ動画の映画上映会でコラボするのはお似合いというか、自然な流れでした。

――ウェブ配信やDVDなど、媒体による視聴者の違いを感じますか?

 ウェブ配信はコメントの有無もありますが、観ている人からの反応が違います。配信のほうが身近に観てくれてるためか、視聴者からの反応がすごくダイレクトでいい。速いし、多い。DVDを買って観てもらう以上のリアクションが多いです。ただ、配信先による違いというのはなく、反応の良さは『ニコニコ動画』でも『GyaO!』でも変わらないですね。

――いままでウェブ配信で書きこまれたコメントはご覧になりましたか?

 最初は見てました(笑)。やっぱり生で触れるのは緊張するんですよ。だからある時期から「そろそろ見ないでおこうかな?」と思ったこともあったのですが、結局全部見ちゃいましたね。作品に対するコメントもそうですし、職人と言われる人たちが遊んでいるのを含めて、楽しく見させてもらいました。

 作品をつくっていると、観ている人の反応ってやっぱり気になるんですよ。なかなか直接訊くことってないじゃないですか。『ニコニコ動画』は生の反応が返ってくるし、『GyaO!』でも動画にコメントが付く。そこがおもしろいなと。コメント全部を見てるとは言いがたいし、すべてを積極的に見るのは難しいんですけどね。

――印象に残ったコメントとかありますか?

 作品を観て「これに対して、これはこうなんだよね」とコメントで言われて、自分もああそうなんだ! と逆に納得させられてしまうコメントも結構あります。でもそういうときも「ああ、それは最初から考えてたんだよ」と言ってます(笑)。あとは、キャラクターが持った角砂糖に、コメントで顔やハートマークをつけて遊んでもらったりする職人技が心に残っています。

――今日はご自身もコメントを入力されますが、その意気込みなどを。

 あれこれ頭で考えてもしかたないのでスパっと、構えてないです。今は何を打とうなど全然考えていませんが、始まったら頼まれてもいないほどたくさんのコメントを入れようと思っています!

 リアルタイムにコメントを入れるイベントは2回目なのですが、そのときは観客がいたわけじゃないので、今回のように視聴者がいる中でコメントを打つのは初めてです。ほかには生でコメンタリーを入れるのは体験済みなので、その応用系ですかね? 今回のイベントは過去のイベント全部を組み合わせて体験できるのでお得かなと。

――どうもありがとうございました!

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう