2012年02月25日13時00分

震災被害から大切な写真を修復するプロジェクト『あなたの思い出まもり隊』とは

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 工学院大学TKK助け合い連携センターは2月12日、震災で被災した写真を復活させるプロジェクト『あなたの思い出まもり隊』の写真修復マニュアルを完成したと発表。写真修復現場が報道陣向けに公開された。

 『あなたの思い出まもり隊』は、東日本大震災の際、海水や泥で汚れてしまった個人所有の写真を修復するボランティアプロジェクトだ。発案した神戸学院大学と連携して2011年7月より活動を開始。メンバーは学生ボランティアや教職員、任意で参加している社会人など、2011年12月末までに562名。延べ活動時間は1849時間、修復した写真は1043枚にものぼる。

 しかしながら、作業はまだまだ道半ば。写真修復を希望した約350名のうち工学院大学では14名ぶんを受け入れており、その推定枚数はなんと約3万枚。しかし半年間の作業で写真の修復を完了できたのは約4名ぶんで、ボランティアの輪を広げていく必要がある。なぜなら、写真修復作業は、写真の洗浄から破損部分のレタッチまで高度な技術が必要とされるため、まったく経験のない人には難しい作業となるからだ。

■写真アルバムを復元する『あなたの思い出まもり隊』

あなたの思い出まもり隊

 そこで、同大学では、今後新たに参加するボランティアや同じ活動を希望する人たちにスムーズに修復作業に参加してもらえるよう、自分たちの修復作業経験を元にマニュアルを作成することにした。このマニュアルは、同じ様な写真修復活動を行なうボランティア団体などに無償で提供される。また、場合によっては人的な技術指導など、修復技術を広めるために幅の広い活動を行なっていくとのこと。

あなたの思い出まもり隊

↑作成されたマニュアル。60ページ前後にもおよび、細かい作業フローから修復に利用するソフト『Photoshop CS5』の使い方、作業の注意点まで細かに記載されている。

あなたの思い出まもり隊

↑送られてきた被災したアルバム。多くは津波を被って水濡れしていたり、ガレキの山に埋もれて砂ボコリまみれになっている。アルバム保護シートのおかげで破損をまぬがれているものから、写真の周囲が浸水しているもの、写真全体が完全に水に浸食されて内容が判別できないものまで、写真の状態はさまざまだ。


■1枚修復する時間は約3時間(写真の破損度合いによる)

あなたの思い出まもり隊

 修復作業はアルバムの状態記録と、修復可能か判別する作業から始まる。

 まずは、写真の状態をバックアップする意味も兼ねて、デジカメで1枚ずつ撮影。写真がどの場所に貼ってあったか、アルバムの写真位置も含めて記録していくのだ。原型をとどめていないものや人の顔が完全に消えてしまっているものは修復が困難のため、修復可能かどうかを判断し、状態別に3色の付箋紙を貼り付けていく。今まで同大学が着手した写真全9883枚のうち、修復できたのは5001枚。約半数近い写真は残念ながら修復が叶わないものだった。

あなたの思い出まもり隊

 次にボランティアの学生達がアルバムの1ページずつをていねいに砂ボコリや汚れを落としていく作業。砂ボコリがただよい、海水を煮詰めたような臭いのする環境で作業するため、周囲には空気清浄機が置かれている。

 また、写真によっては、水洗いが可能なものと、不可能なものがある。たとえば、銀塩写真やインクジェットプリンターで印刷した写真は水洗いできるが、ポラロイド写真は写真背面が水濡れするため洗浄できない。また、インクジェットプリンターは染料系と顔料系のインクがあり、染料系で印刷されたものは長時間水につけるとインクが流れてしまうため、手早く清掃する必要がある。こういった作業の経験から得られた内容もマニュアルに記載されている。

あなたの思い出まもり隊

 洗浄が完了したものはスキャナーでスキャンし、デジタルデータ化する。スキャナーのほかにも書画カメラを使用。一見、単純作業にも見えるが、スキャンや書画カメラでできるだけ高画質に撮影しようと思うと高度なテクニックが必要なのだ。同様のプロジェクトに参加していた長野のプロカメラマンに話をうかがったところ、撮影は枚数だけでなく精度を要求されるため、プロをもってしても骨の折れる作業だという。

あなたの思い出まもり隊

↑デジタルデータは『Photoshop CS5』(以下『CS5』)を利用して、1枚ずつレタッチで修復。

 プロの写真現場でも使われる『CS5』には、画像のゴミを取りのぞく“ダストアンドスクラッチ”や、傷のある部分を周囲と同じ画像パターンにして修正する“コピースタンプツール”といった機能があるため、このような写真修復には最適だ。ボランティアたちはペンタブレットを駆使して、傷をひとつひとつ修復していく。手慣れたボランティアスタッフも多く、プロのレタッチャー並みにスムーズに作業していたのが印象的だった。ここで、修復前と修復後の写真を見てみよう。

▼修復前▼
あなたの思い出まもり隊

↑色あせし、水による浸食が一部に見られる。いちばん左の人の白いバックに注目してほしい。

▼修復後▼
あなたの思い出まもり隊

↑色あせが修正されており、いちばん左の人の白いバックの浸食部分もきちんと修正されている。

▼修復前▼
あなたの思い出まもり隊

↑生後すぐの子供だろうか。親だったら絶対に残しておきたい大切な写真のひとつだが、まわりに水が浸食してしまっている。

▼修復後▼
あなたの思い出まもり隊

↑子供の頭や耳の部分が綺麗に修正された。若干トリミングされているが、被害に遭う前の写真と同じといっても差し支えないレベルだろう。家族の思い出が、こうして震災前と変わらずよみがえるということは何よりもうれしいはずだ。

 修復された写真はプリントされ、簡易アルバムにして修復依頼者に送られる。依頼者の希望により、デジタルデータをそのままCD-Rなどメディアに焼いて送るといったことにも対応しているそう。今回の震災では家族を失った被災者も多く、写真はその家族の生前の思い出をつづった、大切な、何にも代え難いものとなっている。

 写真は作業スペースの壁に貼ってあった依頼者からのお礼状。本活動が依頼者の思い出をしっかりと守れたということの証だ。

あなたの思い出まもり隊

 ちなみにこの活動は、週アス読者に馴染みの深いメーカーが多数協力・支援を行なっている(アドビシステムズ、ソニー、セイコーエプソン、ナカバヤシ、日本HP、ニコン、リコー、アマナグループ、JPAAなど)。

 今回招待してくれたアドビシステムズは、修復のキモともいえる『Photoshop CS5』を無償提供したほか、Photoshopのエバンジェリスト、ラッセル・ブラウン氏が直接来日して修復のテクニックを伝授するなど、積極的な支援を実施。日本のアドビシステムズ代表取締役社長クレイグ・ティーゲル氏は、「我々も東日本大震災の被害の大きさにショックを受けた。しかし、我々のPhotoshopが復興の役に立てると知って、とてもうれしかった。このマニュアルの完成によって、さらにボランティアの輪が広がるのを祈っている」と語った。

あなたの思い出まもり隊

 ボランティアは学生のほか社会人でも参加でき、実際に、会社帰りに2時間ほど作業をして帰宅する人もいるとのこと。震災から1年、その記憶は風化しつつあるが、まだまだボランティアを必要としている。

■関連サイト
【東日本大震災支援委員会 お知らせ】「あなたの思い出まもり隊」プロジェクトを開始しました

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