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スリムになった新型ASIMOは人工知能で自律制御が可能に!

2011年11月09日 09時30分更新

 本田技研工業が11月8日、ヒューマノイドロボット『ASIMO』の新型モデルを発表。見た目は従来のASIMOと似ているが、ボディーがやや丸みを帯びた形状となり、重量は6キロ減の48キロとなったほか、歩行速度は毎時6キロから9キロまでアップ。

新型ASIMO
左が新型ASIMOで、右が2005年に登場した従来のASIMO。

 従来はプログラムされた内容に沿って動くだけだった動作が、視覚や聴覚、触覚など各種のセンサーを活用し、「歩いているときに人とぶつかりそうになった場合に、記録されている経験から予測して自分から避ける」といった自律行動が可能となった。

新型ASIMO

 また、手の部分に大幅な改良が加えられており、手のひらに触覚センサーを、5本の指に力センサーを内蔵。それぞれの指は人間のように独立して動かせる。発表会では、ボトルのフタを開けて、紙コップに飲み物を注ぐデモが行なわれた。なお、注ぐ際には、柔らかい紙コップをつぶさないように調整したり、コップの重量などから、適切な注ぐ量を判断できるという。また、5本指と腕を滑らかに動かして手話表現のデモも行なわれたが、人間の手話を理解したり、人間の口の動きで何を言いたいのか判断したりする機能は“今後の課題”とのこと。

新型ASIMO
新型ASIMO

 身体能力全般もパワーアップしており、片足ジャンプや凹凸のある路面での歩行も可能。

新型ASIMO

 コミュニケーション機能の向上も図られており、音声認識では複数の人の声を同時に聞き分けることが可能となった。

 デモでは、3人の女性が同時にASIMOに飲み物を注文したが、誰がどの飲み物を注文したか明確に識別できていた。人間の耳と同じように、2つのマイクから聞こえてくる音の方向を感知し、視覚センサーと連動して顔と音声を同時に認識することによって聞き分けている。ちなみに、筆者は女性の声が重なって聞こえてしまい、誰がどの飲み物を注文したのか聞き分けられなかった。既にASIMOは人間を越えた能力を発揮しているのかもしれない。

新型ASIMO

■ASIMOの研究がもたらす人のためのロボット

 ASIMOは一般販売されるロボットではなく、あくまでもロボティクス技術を開発するための存在。発表会ではASIMOの技術より生まれた製品についても紹介されていた。

●レース用バイクの姿勢制御

新型ASIMO

 2011年のMotoGPに出走したホンダチームのバイクにも、実はASIMOから生まれた技術が使われていた。ASIMOのバランス制御技術を応用した姿勢角センサーをバイクに搭載。バイクの姿勢が乱れないようにエンジン出力を調整するのに使われた。

●未来の乗り物『U3-X』

新型ASIMO

 こちらもバランス制御技術を応用したもの。イス付きの一輪車に座ると、自動的にバランスを取って自立。さらに姿勢を傾けると、傾けた方向に移動する。デモでは実際にスイスイと走り回り、SF映画に出てくるような乗り物を目の当たりにした気分だった。

●歩行補助ロボット

新型ASIMO

 ASIMOの歩行技術を応用し、足の悪い人の体重を支えて歩行を助けるロボット。

●アームロボット

新型ASIMO

 高所や災害現場など、人が作業できないような場所で活動できるロボット。台車に乗せて移動させ、遠隔操作ができる。足場の不安定な場所でも自動的に姿勢を制御して作業できるほか、57個のモーターを動かして、配管などが複雑に入り組んだ場所でも障害物を回避しながら対象物にアプローチできる。写真のデモ機は配管のバルブを開閉する機能をもたせたもの。

●カーナビが完全音声認識に

新型ASIMO

 クルマの内装のルーフ部分に取り付ける、人の声を識別できるマイク。複数の人が乗っていてもそれぞれの声を聞き分けられるほか、ラジオや音楽の再生中や、外の雨音で声が聞き取りにくい場合でも的確に聞き分けられる。

 また、埼玉県和光市の本田技術研究所では、来客者の会議室への案内や、飲み物の提供といったASIMOによる接客が行なわれている。今回発表された新ASIMOも近いうちに接客に参加するとのこと。

新型ASIMO

 少しずつ進化していくASIMO。転倒した際の起き上がりなど、まだまだ課題はあるものの、どこまで人間に近いロボットになるのか気になるところだ。

■新型ASIMOの主なスペック
サイズ
身長:130cm
幅:45cm
奥行:34cm
重量:48kg
最大速度:時速9キロ
稼働時間:40分(歩行時)
※自動充電機能により連続稼働が可能

●関連サイト
本田技研工業

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