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ライオンズが31年ぶりの開幕4連勝!

2011年10月05日 15時00分更新

  Are you ready for some football !?

 今週から週アスPLUSで NFL フットボールの連載記事を担当することになりました、週刊アスキーの“ITにあまり関係のないところ担当”こと、芸能デスクのカゲです。週アス本誌ではグラビアや『アイドル部』なんかを担当しています。

 以前からの週アス読者のかたならご存知かと思いますが、今年の2月まで週アス本誌には『週アス運動部』という連載がありました。リニューアルに伴い同連載は休止しましたが、NFLの2011年シーズンが開幕し、いてもたってもいられなくなり、ウェブ上で新たに連載を始めさせていただいた次第です。

 連載タイトルにもありますように、本連載では来年2月5日に開催される第46回スーパーボウルまで、NFLの動きを毎週ウォッチしていきます。これまでの現地観戦や現地取材で培ってきた経験をもとに、プロフットボール『NFL』の楽しさを少しでもお伝えできればうれしいです!

●NFL第4週トピックス●
ライオンズが31年ぶりの開幕4連勝!

 この連載では毎週、その週ならではのトピックを深く掘り下げて、お届けしていくつもりです。試合結果は NFL JAPAN の公式サイトをご覧いただくとして、米国文化も絡めたフットボールのサイドストーリーを楽しんでいただければと思っています。

 9月に開幕した NFL は、この週末で早くも4週目を終え、シーズンの4分の1が過ぎました。全32チーム中、4戦全勝を守っているのはわずか4チーム。昨季王者のグリーンベイ・パッカーズと、同じNFC北地区のデトロイト・ライオンズです。

 なによりの驚きは、“NFC 北のドアマット”と呼ばれたライオンズの快進撃。わずか3年前の2008年シーズンには、16試合制になって初のシーズン全敗を喫してしまったライオンズですが、なんとチーム31年ぶりという開幕4連勝をマークしました。

 それも第3週のヴァイキングス戦では20点差を、今週のカウボーイズ戦では24点差を逆転してのカムバック勝利ですから、ファンの興奮もひとしおです。

 しかもライオンズは昨シーズンを終盤4連勝で締めくくっており、現在レギュラーシーズン8連勝中。さらに言えば今季のプレシーズンも4戦全勝で、なんと12試合連続の白星を挙げているのです。

●ライオンズは攻守にスター選手がぞろり

 この快進撃を支えている要素は、攻守両面にあります。まずオフェンスでは、エース WR のカルヴィン・ジョンソンが、開幕4試合すべてでマルチ TD レシーブを決めるという決定力を発揮している点が挙げられます。

 2007年のドラフト1巡指名(全体2位)の WR ジョンソンは、196センチの身長とジャンプ力を生かし、ダブルカバーはおろかトリプルカバーされていてもパスをもぎ取る強さを持っています。第4週のカウボーイズ戦では、明らかにジョンソンにパスするのが見え見えの場面であっても DB との競り合いに勝ち、TD を奪っていました。

 そのジョンソンにズバズバとパスを投げ込むのは、2009年のドラフト全体1位指名である QB マシュー・スタフォード。ルーキーイヤーから先発出場を果たしたものの、2年めと3年目はケガのため3試合・4試合しか出場できなかった逸材が、今季はヘルシーな状態で開幕から4試合続けて先発を務めています。

 いっぽうのディフェンスは、失点でリーグ8位という好成績。1試合平均19失点ということは、3TD奪えば勝利できる計算です。その守備陣をけん引するのが、昨季の最優秀守備新人賞に輝いた DT エンダマカン・スー。2010年のドラフト1巡指名(全体2位)という逸材は昨季、DT ではトップクラスの10サックを挙げています。

 さらにスーを中心にしたディフェンスラインの破壊力も満点。DE カイル・ヴァンデンボッシュと DT コーリー・ウィリアムスは実績を買われて FA 移籍したベテラン。そこに4年目の生え抜きで昨季 8.5 サックとブレークした DE クリフ・エイブリルを加えたラインは、ランストップでもパスラッシュでも相手オフェンスラインを圧倒する破壊力を有しています。

 その破壊力をまざまざと見せつけたのが、第4週のカウボーイズ戦。3-24と大量リードを奪われたものの、ディフェンスラインの圧力でカウボーイズの QB トニー・ロモにプレッシャーをかけ続け、3インターセプトを奪って逆転に結びつけたのです。

●ドラフトに失敗し続けたライオンズ

 このように攻守が噛み合ったライオンズですが、つい近年まで低迷していたチームが復活した理由のひとつに、フロント陣の変化があります。

 NFL では、ヘッドコーチ(監督)の職務は現有戦力で最善を尽くすことであり、選手の獲得に関しては発言権はあるものの、最終決定権は持っていないのが一般的です。では選手の人事権は誰がもっているのか? それはGM(ジェネラルマネージャー)の職務となります。

 かつてデトロイトでは、ライオンズの GM はファンの怨嗟の対象でした。スタジアムに飾られたチームの集合写真をバックに記念写真を撮るファンは、GMに向かって指を突き立てていたものです。

 その悪名高き GM はマット・ミレン氏。かつてリーグを代表する名ラインバッカーとして、所属したレイダーズ、49ers、レッドスキンズの3チームすべてでスーパーボウルに優勝した経験をもつ大物です。引退後は10年にわたり、CBSやFOXで解説者を務めてきました。

 そのミレン氏は満を持して2001年にライオンズの GM に就任。ドラフト戦略を取り仕切る立場になったのですが、ミレン氏の在籍8年間のあいだ、ドラフト指名はことごとく失敗。1巡指名で唯一チームに残っているのは前述の WR カルヴィン・ジョンソンのみです。

 そのドラフトでもとくに伝説になっているのが、2003~2005年に3年連続で、WR を1巡指名したこと。同じポジションの選手を3年にわたって1巡指名し続けること自体が異例であり、それが WR となればなおさらです。

 これら3選手のうち、2004年の WR ロイ・ウィリアムスは1回だけ 1000ヤード シーズンを記録しましたが、他に目立った活躍はなし。2003年の WR チャールズ・ロジャーズはわずか3年で引退しています。

●オーナーはあのフォード家

 それでもミレン GM はなかなかクビにならず、8年間をデトロイトで過ごしました。その理由は、オーナーのクレイ・フォード Jrに好かれていたからというウワサがもっぱらです。冷酷なはずのスポーツ界でも、人事には情が絡むものなのです。

 さて、クレイ・フォード Jrという名前に聞き覚えがある方もいることでしょう。それもそのはず、フォード氏はあの自動車メーカー大手フォード・モーターの会長でもあるのですから。ちなみにジュニア氏は実質的なオーナーで、本来のオーナーは父親のクレイ・フォード氏。つまり、ライオンズはフォード家の持ち物なんです。

 それもあって、ライオンズの本拠地はその名も“フォード・フィールド”。スタジアムの横には、あのフォードのロゴが誇らしげに掲げられています。デトロイトの誇りであるフォードは、フットボールの誇りでもあるのです。

 

スーパーボウル追っかけ隊1回目

  だからこそ、ライオンズの体たらくはフォードに対する反感も生み出しました。ミレン政権下にはフォード・フィールドで、スーパーの紙袋を被ったファンを見かけることができました。これはブラウンズのファンが始めた抗議方法で、「応援しているチームがこんなザマでは、顔を出して応援なんてできない」という意味が込められています。

 しかもライオンズファンの彼らはその紙袋に、こんな言葉を書いていました。

 「Future Toyota Buyer」

 その意味は「次はトヨタを買うぞ」。そう、ライオンズのオーナーであるフォード家に対する、最大限の抗議だったのです。

●シーズン全敗から生まれた危機感

 それほどの抗議が沸き起こってもミレン氏を擁護していたフォード・オーナーですが、さすがに 2008 年シーズンの16戦全敗はこたえたのでしょう。なにしろスーパーボウル開始後の近代 NFL で、シーズン全敗を喫したチームはライオンズとバッカニアーズしかありません。

 しかもバッカニアーズは1976年創立の新設チームで、全敗したのはその初年度のこと。伝統あるチームの全敗は、ライオンズが実質的に初めてだったわけです。

 ここに至ってようやくフォード氏はミレン GM を更迭。後任にはアシスタント GM だったマーティン・メイヒュー氏を昇格させました。

 メイヒュー氏はタイタンズの守備コーディネーターだったジム・シュワルツ氏をヘッドコーチに招聘するとともに、大幅な選手入れ替えを断行。最初の2年で19件ものトレードを成立させ、チームの若返りを図ります。就任2年を経て、ロースターに留まった選手はわずか14人。実に7割以上の選手を入れ替えた計算になります。

 その甲斐あって、2010年シーズンは6勝10敗と、それなりの数字を残すことができました。とは言え、終盤を4連勝で締めくくるまでは2勝10敗だったわけで、ライオンの目覚めはまだまだ先だと思われていたのです。

 それがフタを開けてみると、前述のとおり攻守がガッチリと噛み合って見事に4連勝を達成。チーム改革は3年目にして、花を開き始めたようです。

 そんなライオンズの今季最終戦は、1月1日の@グリーンベイ。実は2008年の全敗シーズンも、最終戦はパッカーズが相手でした。それが3年たった今年は、もしかしたら NFC の第1シード決定戦になっているかもしれません。そんなドラマチックな展開もまた、NFL のだいご味のひとつと言えるでしょう。

●今週の余談

 第38代の米大統領であるジェラルド・フォード氏は、フォード家の係累と思われがちですが、実はまったくの無関係。生まれたときは別の姓で、母親の再婚に伴ってフォード姓になりました。

 そのフォード氏はミシガン大学のフットボール部でセンターとして活躍し、1934年シーズンには全米王座にも輝きました。当時はまだドラフト制度はなく、フォード氏は2つのNFLチームからトライアウト(入団テスト)の誘いを受けます。それが、今季開幕4連勝中のライオンズとパッカーズだったのです。

■筆者 カゲ■
週アスの芸能デスクかつ NFL 担当。日テレ水曜深夜の NFL 中継でフットボールにハマり、1996年シーズンから現地観戦を開始。これまでレギュラーシーズンはファンとして 15 試合、取材では3試合を観戦。スーパーボウルは第40回大会から6回連続で取材している。好きなチームはグリーンベイ・パッカーズ。QBアーロン・ロジャーズが初めて公式戦に出場した瞬間をこの目で見たのがジマン。なお週刊アスキーは、専門誌を除く日本の雑誌メディアでは唯一、スーパーボウルを現地取材しています。

(了)

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