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MetaMoJiに聞く! 新世代の手書き文字入力『7notes』&『mazec (J) for Android [β版]』誕生秘話(前編)

 手書き文字入力の簡単さ、快適さを追求したiPad/iPhoneノートアプリ『7notes』シリーズと、Android用IME『mazec (J) for Android [β版]』を制作したきっかけや作成時の苦労、手書き文字入力への思いを聞いてきました。

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浮川和宣さん(代表取締役社長/写真前左)、浮川初子さん(代表取締役専務/写真前右)、植松直也さん(先進アプリケーション開発部/写真後方左)、宮田正順さん(ディレクター/後方中央)、岩田浩史さん(事業企画部ディレクター/後方右)

 「キーボードの制約を乗り越えたい、と思った。
 多くの人たちがいま当たり前だと思っているものを提案する側だったからこそ、余計に」

――手書き文字入力アプリ開発のきっかけは何だったんでしょうか?

浮川社長「iPadを手にして、これは非常に新しい時代が来たな、と思ったんですね。言葉やわらかにいいますけど(笑)、もっといいものをつくりたくなった。(『一太郎』や『ATOK』という)キーボード入力のかな漢字変換を世の中に提示し、提案をして、改善してきた側に20年近くいた人間として、キーボードの制約を乗り越えたいと思ったんです。多くの人たちがいま当たり前だと思っているものを提案する側だったからこそ、余計にです。

 もっと自由自在に手で書いたほうが、普通の生活にも密着するんじゃないかなと。そういった考えから、じゃあ“新しい手書きをやろう”、と思ったわけです。iPadならば今の時代に合わせた手書き入力がつくれる。そこから我々は開発を始めました。

  10年、20年、30年とですね、これからの人たちにずーっと使っていただける新しい手書き入力を考えなければ、今私たちがこれから一生懸命やっていく意味はないだろうと思ったわけですね。

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 ただ、これまでの手書き入力みたいに、枠の中にひと文字ずつ書きましょうというのは、すごく窮屈ですし、そしてやっぱり漢字書けないねってことになって(笑)。漢字を書くときに辞書とか出してきて、調べて書かないといけないのは嫌じゃないですか。だから、枠なしでどんどん書けて、書けない漢字は、ひらがなで書いて変換できるようにした。“会議”の“議”はひらがなで書いていいんですよ(笑)。それを聞いた瞬間みんなホッとするんですね。」

「いかに滑らかにスムーズに書けるか、がとても大きい」

――最も苦労された点はどんなところですか?

社長「いやぁ……もう、たくさんありすぎて(笑)」

植松「大きく分ければたぶん2つですよね。ひとつは『mazec (J) for Android [β版]』(以下、mazec)の“交ぜ書き変換”。今までのかな漢字の辞書ではできない形態だから、普通に考えると膨大な辞書になってしまう。それをどう圧縮するかみたいなところがあったし。もうひとつはやはり“インキング”。いかに滑らかにスムーズに書けるかというようなところ、そしてそれをデータ量をできるだけ少なく圧縮して保存しなきゃいけない、みたいな。そのポイントは結構大きかったですね。」

専務「リアルタイムで書いていますしね。」

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社長「まず、字形にならないといけないんですよ。できあがったデータも、全部点でデータを残してるとたいへん大きなものになりますから。特徴のある点を曲線で結ぶから数学の塊なんですけども。そしてそれを文字認識させる。ひらがなとか漢字とか、どういう文字かというのを認識する。文字認識エンジンの、どういうものが我々に最適なのか、選んでいく必要がありました。

 手書き文字入力といっても、いろんなエンジンがあります。ほかの会社さんなどがつくったエンジンを私達の7notesやmazecの中で使い込んでいくわけです。そこはそれなりにエンジニアとか技術の人たちがいろいろ苦労をしています。もちろん、ゼロから自分たちでつくるという方法もあるんですけど、時間とコストとが……。私達が他社さんのエンジンを採用して、果たして製品化できるかどうかということもありましたが、決まるまで時間かかりました、ホントに。製品の最後ぐらいまでかかった。」

植松「そして、ご存じのとおり、何度も何度もバージョンアップを重ねて今の製品になってるんで、言ってみれば出したあとも苦労し続けてるっていう(笑)。」

岩田「ユーザーインターフェースも、最初にリリースしたモノから大幅に変わりましたね。ユーザーさんの声とか要望を取り入れて、我々も頭を使って考えることによって、よりシンプルで使いやすい、完成度的には非常に高いものをつくってこれたかなっていうのはあります。」

専務「ソフトウェアっていうのは、やはりそういうものですよね。

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 動いて初めてこうなったほうがいいのかなとか、利用局面が増えていきますので、増えていった局面の中でまた改善してかなきゃいけないものが出てきます。」

植松「苦労話っていうんじゃないんだけど、技術者の立場からすると、ああ、そういうタイミングだったのかな……というのがありますね。最初想定していた手書きって、やはり枠の中に書くのに近いようなものだった。技術的にまだまだ手書き文字認識ってそのくらいだろうなと思ってたんですが、ちょうど開発を始めた去年、いろいろな手書き認識の技術を見たら、かなり進んでいる。かなり自由に書けるんですね。適当に書いて、文字をばーっとうまく認識してくれると。制約感の中で考えてた自分たちのイメージと、全然違うものがあって。

 社長なんかも「うぉー!」ってかなり驚かれて、そこから発想がすごく広がった。自分たちが思っている技術を探したら、ちょうどいい感じに成熟しているのがあって、最先端技術をうまく渡り歩けたような感じってのはあります。

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……もちろんそこから先、苦労が始まるんですが(笑)。枠内に書くならもっと楽にできたのに、とか(笑)。まあ、たいへんにはなったんですけど、非常におもしろいものができたんじゃないかなという感じはしています。」

「手書きは“誰もが知っている”もの。ルールが自分たちでつくれない一種のゲームのようなものです」

社長「こういうものの難しさは、かな漢字変換もキーボードを打つのも、誰もが知っていて、イメージをもっているってところですよね。いろんなアルゴリズムを考えてつくってみて、それが人間の経験に合致できるかどうか。ルールが自分たちでつくれない一種のゲームといったらおかしいですけど、それがすごく難しいんです。

 かな漢字変換が動くのは、今ではまったく当たり前ですけど、最初は、ねえ。たまたま日本語っていう言語と、最長一致というアルゴリズムがうまく合ったという。そういう、どういうふうに日本語をプログラムで組めば生活感に合うかというのは、やってみないとわからないところが多くて難しいんです。」

――みんな当たり前のように文字を手書きしているから、逆にすぐストレスを感じやすい……と。

社長「そうです。日ごろのイメージがあるから、それを追いかけていく難しさがあります。たとえば交ぜ書きで、“会ぎ”はホントにちゃんと“会議”に変換されるのか。mazecの交ぜ書きはアルゴリズムだけでできるかもしれないと最初のころは思いました。認識があって、かな漢字変換があったら、プログラムだけでできるかもしれないと。」

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植松「プログラムだけでやろうとして結局爆発するんですけどね(笑)。」

社長「結局ダメなんですよ(笑)。MetaMoJiにはかな漢字変換のシステムをゼロからつくった人間も多いんですけども、そういう世界ともまったく違う、新しいアルゴリズムとか新しい辞書をつくらないとできないものだと。そこもやってみて初めてわかった。

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 やってみて、試作品をつくって、で、あーだこーだやってみて、やっと、あ、これは世の中に出せるぞという。まさに大学とかで研究しているものを一気に世の中に出すというようなことを私達はやってしまった。」

――逆にすごいスピードですねそれは。

岩田「思い出してもびっくりするぐらいのスピード感で……。」

社長「普通でしたら何年もかかりますね。」

植松「6月にiPadを見て、年末にはもう動かしてましたからね。」

中編につづく)

 

※週刊アスキー10月25日増刊号(9月13日発売)の特集『最新手書き文字入力がスゴイ』では、『mazec (J) for Android [β版]』のほか、いろいろな手書き文字入力アプリをご紹介しています。付録のタッチペンを使ってぜひ、最新の手書き文字入力を体験してみてください。(※液晶保護シートの種類や、端末のタッチセンサーの精度によってはうまく認識しない可能性があります。)

『7notes for iPad』
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(バージョンと価格は記事作成時のものです)
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(バージョンと価格は記事作成時のものです)
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App Store価格:無料
(バージョンと価格は記事作成時のものです)
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App Store価格:800円
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