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【私のハマった3冊】悲しみに襲われたら思い出したい元気をもらった3冊

2011年06月27日 20時30分更新

wambook

SLAM DUNK 27巻
著 井上雄彦
集英社
410円

ささやかだけれど、役にたつこと(『短篇コレクション Ⅰ』収録)
著 レイモンド・カーヴァー
河出書房新社
2835円

イワン・デニーソヴィチの一日
著 A・ソルジェニーツィン
新潮文庫
460円

 好きな本を持ち寄って、まったりアツく語り合う“スゴ本オフ”というオフ会をやっている。本を介して人と会い、人を介して本を広げる場だ。今回は“わたしが元気をもらった本”というテーマで集まったなかから選りすぐりを持ってきたぞ。

 最初は『SLAM DUNK』、みなさん手に汗びっしょり読んだはず。名シーン名セリフ満載だが、今回はコミック版27巻に注目。圧倒的点差をつけられ、崖っぷちのギリギリで、ひとりの男に試合が託されるまでの数分間が圧縮されている。安西先生の「あきらめたら、そこで試合終了ですよ」は、何年経っても、何度読んでも奮い立たせてくれる。

 次は『ささやかだけれど、役にたつこと』。災厄に見舞われたとき、文字どおりささやかだけど、役に立つことが差し出される。それは寄り添ってくれるパートナーだったり、隣人の思いやりだったりするが、それが何であるか、ぜひご自身で確かめて欲しい。一読あなたの心の底を打つから。そして、いざ自分が悲しみに襲われたとき、これを読んだことを思い出して欲しい、きっと同じことをするから。

 最後は『イワン・デニーソヴィチの一日』、極寒の収容所の、平凡な煉獄を描いた傑作だ。密告、裏切り、処罰、重労働……苛酷な状況、人の心が折れる音に満ちるなか、イワンは“幸福な一日”を過ごす。彼が何に幸せを見ているかを知って、読み手は慄然とするだろう。そして、“どんな状況にいても、幸せかどうか決めるのは自分”という真理に改めて気づかされる。

 実をいうと、わたしが落ち込んだとき、元気をもらうのは、おいしい料理やたっぷりの睡眠で、本を手にすることはない。むしろ、かつて読んだ本を思い出して、前に進もう、疲れてたら休もう、という気にさせられる。本そのものよりも、本を読んだ経験がお守りのように効いてくるわけ。今回オススメした3冊は、お守りとして、保険として、元気なうちに読んでおきたい。

Dain
古今東西のすごい本を探すブログ『わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる』の中の人。

※本記事は週刊アスキー7月5日号(6/21発売)の記事を転載したものです。

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