破産や失踪など、官報に掲載される「要配慮個人情報」については、個人情報を確認した登録者のみが閲覧できるようにするといった対策はできないのだろうか。
こうした意見に対しては、「その対策では、必要な情報を周知する官報公告の意味がないではないか」といった反論が聞こえてきそうだ。
しかし、インターネット版官報が登場する以前は、紙の官報を買いに行ったり、図書館などで閲覧したりしなければ、こうした情報にはアクセスできなかった。
2020年7月には、日本弁護士連合会が「プログラム等による自動取得を防止する技術的措置を講ずることを条件とすべきである」との意見書を個人情報保護委員会に提出している。
政府が行政手続のデジタル化を一気に進める中で、今後、類似する問題が断続的に発生するような気がしてならない。
デジタル化の進展で利便性や公開性が増すのは歓迎すべきだが、配慮の必要な情報の取り扱いについては、少し立ち止まって考えることも必要だろう。
筆者──小島寛明
1975年生まれ、上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒。2000年に朝日新聞社に入社、社会部記者を経て、2012年より開発コンサルティング会社に勤務し、モザンビークやラテンアメリカ、東北の被災地などで国際協力分野の技術協力プロジェクトや調査に従事した。2017年6月よりフリーランスの記者として活動している。取材のテーマは「テクノロジーと社会」「アフリカと日本」「東北」など。著書に『仮想通貨の新ルール』(ビジネスインサイダージャパン取材班との共著)。
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