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RPAやAIも活用して、突発修理ゼロを目指し前へ前へ

紙&Excelのメンテナンス業務をフルkintone化したクレーンメンテ広島

2024年04月25日 10時00分更新

 kintoneユーザーによる事例・ノウハウ共有イベント「kintone hive hiroshima vol.1」が広島で初開催された。トップバッターであったさくら税理士法人に続き、2番目に登壇したクレーンメンテ広島の代表取締役社長である鳴谷浩一氏のプレゼン「kintoneで追及する、ミッション」をレポートする。

クレーンメンテ広島 代表取締役社長 鳴谷浩一氏

アナログ作業がデータ活用を阻害、コムデックを通してkintoneと出会う

 クレーンメンテ広島は東広島市に本社を構える、創業45年のクレーンメンテナンス企業。天井クレーンの保守点検や修理、設置などを手掛ける。天井クレーンのメンテナンスは法令で定められており、その作業を受託している。従業員は、現場のサービスメンバーが6人、バックオフィスが3人の計9人からなる企業だ。

 クレーンメンテ広島が掲げるミッションは、「作業に影響の出る突発修理ゼロを目指すこと」だ。モノづくりの現場でクレーンが動かなくなると、作業が止まってしまう。同時に、突発修理が発生すると、メンテナンス業者にも緊急連絡が来て、今手掛けている仕事を中断しなければならない。さらに、クレーンが止まっていると、修理やメンテナンスのために危険な作業が発生することもある。つまり突発修理は、顧客側にもメンテナンス側にもデメリットしかないというわけだ。

クレーンメンテ広島のミッションは突発修理ゼロ

 10年前に今のクレーンメンテ広島の親会社がM&Aをすることになり、鳴谷氏が社長に就任。鳴谷氏は畑違いの業務を行なっていて、経営に携わったことはなかった。そのため、現場で経験を積みつつ、勉強会やセミナーにも参加して経営を学んだ。

「そんな中で、気付いたことが3つあります。1つは、メンテナンスの仕事に関係ない作業がすごく多かったこと。点検表という手書きの文書があり、10枚あれば同じお客様の名前を10回書く、といったことが多々ありました。さらに、外に出る仕事ではよくあることですが、待機時間が多く、やることもないため従業員はスマホでYouTubeや漫画を見ていました」(鳴谷氏)

 加えて、紙ベースで情報を管理しているのも課題だった。これまでどういった作業をしてきたのかという“過去の情報”を活かせていなかった。

 2019年、鳴谷氏はこれらの課題を経営コンサルタントに相談したところ、DXやクラウドサービスの導入を支援する三重県伊勢市のIT企業「コムデック」の紹介を受ける。伊勢神宮にお参りがてら、相談しに行くと、kintoneを使えば解決できると教えてもらう。鳴谷氏はその場でkintoneの導入を即決し、コムデックに伴走支援をお願いすることになった。

抱えている課題をコムデックに相談。kintoneを紹介してもらう

業務はすべてkintone!導入のポイントはトップダウンで決断すること

 課題解決のためのシステム構築には、5つのことにこだわった。まずは、業務は基本すべてkintoneにすること。直感的に使えるようにすること。業務フローを変えないこと。自動集計できること。そして、将来的に分析できるようにすることだ。

 クレーンメンテ広島のワークフローは、まずは、顧客から相談を受け、提案を行なう。その後、受注、手配、実作業、報告、請求という流れで進む。この流れを「案件管理」アプリでまとめてkintone化することに。さらにそこに、「顧客管理」や「見積作成」、「発注管理」、「実績管理」アプリなどを連携させた。経理に関しては、外部サービスのマネーフォワードにつなげている。

「各データをリンクさせているので、右から左に転記するような無駄な仕事はなくなりました。今まで紙ベースで管理していたものをデータベース化し、お客さんやメーカーさんに提出する書類はPDFで出力するようにしています」(鳴谷氏)

システム構築の際にこだわったポイント

案件管理アプリで情報を一括管理。書類のPDF化も実現した

 システムを構築する際には、スケジュールを立てて、従業員に報告しつつ、早めのリリースを心掛けた。それにより、約3カ月のお試し期間を確保でき、じっくりと検証できた。

「基本的に導入はトップダウンで、強い意志を持ってやっていくことが必要だと思います。kintoneがちょっと使いづらいから、こっちも使ってもいいよとかいう逃げ道を作らないようにしました。それだけではなく、しっかりと社員をフォローすることも大切です」(鳴谷氏)

kintone導入はトップダウンで進めるべき

年間1万3000枚以上のペーパーレス化と年間1000万円の人件費削減を達成

 本気でkintone導入に取り組んだ結果、得られた効果も大きかった。右から左に移すような仕事はなくなり、充分な点検の時間を確保でき、突発修理をなくすための提案に注力できるようになった。サービスチームにはSurfaceを配布し、隙間時間にどこでも仕事ができるようにした。会社に帰ってFAXするといった作業からも解放された。

「経営者目線では、リアルタイムに業績がわかるのがすごく便利です。一元管理しているので、請求漏れが減りましたし、案件の進捗管理もできるようになりました」(鳴谷氏)

 従来、Excelで管理していたときはデータを作るだけで時間がかかっており、なかなか分析まで手が回っていなかったという。kintone化すると自動で集計されるので、分析に時間をかけられるようになった。

 ペーパーレス化も実現し、年間1万3000枚以上の紙を削減できた。人件費も年間で約1000万円削減。業務効率を大きく改善できたことで、受注も増えた。しかし、仕事を受けすぎて、従業員からはこれ以上受注しないでくれ、という声も上がっているそう。現在は、人を増やすことが課題になっている。嬉しい悲鳴だろう。

約1000万円の人件費を削減できた

 大きな効果が得られたkintone導入だが、あくまで本業により注力するためのツールであることは忘れてはならないと鳴谷氏。クレーンメンテ広島においては、作業に影響が出る突発修理ゼロを目指すためにkintoneを使うということが大切だった。

 もちろん、ITの導入はゴールではなく、今後もカイゼン文化をさらに加速していく。例えば、入力した作業内容からPDFファイルを出力し、ファイル名を変更し、記録表をメール送信するといった作業をRPAで自動化した。業務も切り分け、スケジュール管理は五日市で、会計と経理は静岡でテレワークしてもらっている。

 AIの活用も進める予定だ。メンテナンス業界は経験が必要で、一人前になるのに10年ぐらいはかかってしまう。そこをkintoneでデータを蓄積し、作業を標準化することで、トラブルの原因や不具合の修理タイミングなどを予測できるような取り組みを進めている。これまで一人前になるまでの時間を、3~4年になるように持っていきたいという。

「ChatGPTといったAIを使って、次のステップに行こうと考えています。業務を効率化させ、点検をする時間を作ったり、提案する時間を作る。今まで蓄積したデータを活かしたよりよいサービスを提供し、(突発修理ゼロという)ミッションを達成できるように常に前へ前へ進んでいきます」と鳴谷氏は締めた。

RPAやAIなどを用いてカイゼン文化をさらに加速していく

パートナーと連携する際の秘訣は?

プレゼン後にはサイボウズ 中国営業グループ広島オフィスの西尾陽平氏から質問が飛んだ。

西尾氏:作業者目線と経営者目線という話が出ましたが、どうしても違う立場になると思います。作業者目線に寄り添う時の距離感はどういうところを意識されていましたか?

鳴谷氏:新しいことをするのは僕も嫌です。今の業務をやりつつも、新しい業務を覚えていかなければいけないため、横に付いてレクチャーしたり、質問にはすぐにレスポンスを返すなどの手厚いフォローを意識しました。

プレゼン後のアフタートークの様子

西尾氏:コムデックさんに伴走支援いただいたという話がありましたが、うまくパートナーさんを活用するための秘訣みたいなものはありますか?

鳴谷氏:弊社が考えていることや要望を明確にして、コムデックさんと密に連携を取らせてもらっています。月一でミーティングをしていますし、緊急の場合は電話もします。それを現場に展開しています。

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