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UPDATE EARTH 2024 ミライMATSURI@前橋 会場レポート

自分の健康管理をもっと便利に簡単に! 前橋で見た進化する医療系スタートアップの最新テクノロジー

■がん治療特有の日々の食事や生活上の注意点など
■自宅生活をサポートしてくれるスマホアプリ

 日本の死亡原因1位のがんに関する新しいテクノロジーを展示するブースも目立った。

 株式会社DeaLiveが紹介していたのは、がん治療における副作用予測と症状管理、栄養摂取をサポートするスマホアプリ「All my Life」(https://allmylife-jp.com/)。がんの種類や使用する抗がん剤、個⼈の特性、病歴などから個々のヘルスケアモデルを構築し、一人ひとりのデータに基づいたサポートと専門家への相談を可能とする。

All my Life

がん治療の「日々の計画」と「先回りした対策」を立てることを可能とするスマホアプリ「All my Life」

 自宅から外来で治療を続けるがん患者数は増加の傾向にあり、食事や日々の生活のコントロールは患者自身や家族に任されていることから、がん治療特有の対策と食事の工夫を知ることは治療を続ける上でも有効だ。

 このアプリでは、日々の食事や体重変化などの症状を簡単に記録してカロリーの過不足や体の状態を可視化するほか、日々のデータと専門家への相談結果に基づいて個々の副作用リスクの予測と対策を提案。医師に相談しにくい生活に関することについても専門家がサポートしてくれるので、患者はもちろん、その家族がするべき準備や対処もスムーズになる。

■涙を利用した最新のがん検出方法とは?
■神戸大学発ベンチャーの技術

 「涙で乳がん検出」と大きく掲示された株式会社TearEXO(https://tearexo.jp/)のブースにも、多くの人が足を止めていた。「涙は悲しみの象徴ではなく健康を管理するためのもの」という、従来の常識を覆す健康革命によって、新しい方法でのQOL向上に寄与するベンチャー企業だ。

TearEXO

涙で乳がんを検出するキット(左)。涙を染み込ませたろ紙片をエクソソーム回収溶液(右)に浸して涙に含まれるエクソソームを回収し、自動分析装置で分析する

 日本人女性の約9人に1人が生涯で患うといわれる乳がんは、早期発見により適切な治療が行なわれれば、良好な経過が期待できるが、検診の受診率は高くない。そこで、病院に行かなくても自分でがんリスクを管理できる新たながん検出法があれば、検診精度と検査方法を改善できるのではないかと考え、開発に着手した。

 検査方法は、「シルマー試験紙」(小さくて薄い短冊状のろ紙片)を目尻に置き、数分目を閉じて涙を染み込ませるだけ。このろ紙片をラボの自動分析装置にセットすると、あらゆる細胞から放出され、がん細胞の増殖・転移にも関与する約100nmの「エクソソーム(細胞外小胞)」が検出される。

 この方法は「TearExo法」と呼ばれ、ラボでの分析は約30分程度で完了。自分で涙を採取し、最終的に検査機関に送ってもらうようなシステムが確立されれば、病院に行く必要もなくなる。「面倒」「時間がない」「マンモグラフィ検査は痛い」など、これまでさまざまな理由で検診から遠ざかっていた女性も、これなら痛みもなく、時間もかからず、ストレスなく検査を受けられそうだ。

 「TearExo法」は今後、薬物療法の効果、術後の管理、再発リスクのチェックなどにも活用できる可能性が高いという。「早期に乳がんを発見して、シームレスに専門医・治療に連携する」というミッションを掲げると同時に、乳がんの罹患は40代から多くなることから「働き盛りの女性が活躍する機会を守りたい」との思いに触れたことも印象的だった。

 
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