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14nmを再構築したIntel 12が2027年に登場すればおもしろいことになりそう インテル CPUロードマップ

2024年02月26日 12時00分更新

今のIntel 14nm++が抱える致命的な2つの問題点

 1つは価格。インテルのプロセスはTSMCの同等プロセスに比べて3~5割以上、下手をすると倍近く高い。もちろんその代わりTSMCにない特徴もある。TSMCのN16やその改良型のN12は3GHzくらいで駆動できるし、がんばれば4GHzの連続駆動も可能だが、14nm++みたいに5GHzの連続駆動などは絶対できない。

 ただ普通の顧客は14nmあたりでそんな無茶をしない。今なら5nmを使うだろう。TSMCの16/12nmに顧客が求めているのは、そこそこのロジック密度を低消費電力、かつ低価格で実現することで、インテルの14nm++はまるで性格がニーズに合っていない。

 もう1つの問題はライブラリー関係である。2016年にインテルがIFSの前身となるFoundry Serviceを行なおうとしていた時に、ArmがインテルのCell LibraryをArtisanのCell Libraryと比べて「まるで異なる」と評していた。

 曰くインテルのCell Libraryはロジック密度を最大にするように製造されており、一方でArtisanのCell Libraryは電力効率にフォーカス、SoCを開発する際にはクリティカル・パスを最小にできるように設計されており、シングルチャンネルとマルチチャンネルで同じフットプリントになるように工夫されているとのこと。

 結果、同じロジックを実装すると確かにインテルの方が実装面積は小さくなるものの、Artisanの方が省電力性に優れているし、またSoCの設計そのものも楽になる、という話であった。

 要するにインテルは、14nm++をもっと低コストで製造できるように作り方を改める必要があるし、顧客のニーズにあったCell Libraryを準備する必要がある。これはEDAツールにも言えることである。

 現在EDAツールベンダーはインテル向けのツールを提供しているが、これはある意味インテルスペシャルとも言うべきもので、だいぶ他のファウンダリー向けのものと違っているらしい(それでも以前よりだいぶ近づいたという話もあるのだが)。このあたりをもう少し標準的なものにしていく必要がある。

 一方UMCはUMCで問題を抱えている。同社はIBMから14nmプロセスのライセンスを受けて、2017年2月に14FF+というプロセスの提供を開始。2021年には14FFC(C:Compact)という改良版プロセスも発表している。

 ところがこの14FF+/14FFC、顧客に使ってもらえたのは2018年までで、それ以降同社の売上に占める14FF+/14FFCの比率はずーっと0%のままである。要するにUMCの発表を受けて何社かがその14FFを試験的に使ってみたものの、結果として見放されたという話である。

 短期的に言えばUMCは現在65~28nmの売上が非常に好調なので、14nmが立ち上がらなくても困らないのだが、2030年代を見据えるといずれ現在の65~28nmの売上が落ちていく中で、代わりに売上を牽引してくれる次世代製品が存在しないことになる。だからといって改めて14nmプロセスの開発を一から始めるのはコスト的にも時間的にも割が合わない。

両社の経験とノウハウを盛り込むことで
低価格な14nmプロセスが出来上がる

 こうした両社がパートナーシップを結ぶとなにが生まれるか? インテルは、Pure FoundryであるUMCの経験を手に入れられる。同社は「普通の」Cell Libraryに求められるものをよく理解しているし、それを利用する顧客との協業の経験も豊富だ。Intel 14nm++を作り直すにあたって必要となる「なにが求められ、そのためにはなにを提供すべきか」に関しての知見をインテルに提供できる。

 一方UMCは顧客に見捨てられた14FFに変わり、豊富な実績のある14nmプロセス技術を利用できることになる。もちろん今のIntel 14nm++はそのままでは顧客に提供してもそっぽを向かれるだけであるが、そこにUMCの経験とノウハウを盛り込むことで低価格なプロセスが出来上がれば、UMCの2030年代の売上を支えるサービスが出来上がることになる。少なくとも自前で14nmプロセスを作り直すより、ずっと確実性の高い方法と言える。

 この取り組みは、14nmプロセスの構築方法をもう一度見直す必要があるため、サービス開始には時間がかかる。予定では2027年度に提供を開始する予定なので後3年程だ。ただプロセスの見直しに加えてCell Libraryの構築し直し、EDA Toolへの対応などやるべきことは盛りだくさんだ。

 インテルはアリゾナ州オコティージョ・キャンパスのFab 12/22/32をこのIntel 12向けに転換する必要があるし、おそらくUMCも台南のFab 12Aの14nmラインの再構築が必要になる。3年というのはけっこうギリギリかもしれない。

 話をIFSに戻すと、これがうまく行けばインテルは2027年からIntel 12をサービスメニューに加えられる。そしてここでの経験は、いずれやってくるであろうIntel 7の転換にも生かされることになる。その意味でも今回の提携はIFSにとって重要な意味を持つものになるだろう。

 懸念点を挙げるとすれば、本当に「安価な」プロセスに作り直せるかどうか、というあたりだろう。現在TSMCの12nmはおおむねウェハ一枚当たり4000ドルを切るくらいの価格で提供されているが、毎年少しづつ価格が下がっており、2027年ごろで言えば3500ドルくらいまで価格が下がっていそうだ。

 Globalfoundriesの12nmもだいたい同程度であり、Samsung Foundryも14nm世代として14LPE/14LPP/14LPC/14LPUを提供しているが、この14LPC(Low Power Compact)は低消費電力と低価格に焦点を置いたプロセスで、しかもTSMCより安い価格で競争力をつける方策なので、おそらく3000ドル前半での提供となる。

 インテル/UMC連合によるIntel 12は、こうした競合プロセスと同等の価格競争力を実現しない限り成功は難しいのだが、本当にそれは可能か? というのはまだ未知数である。ということで続きは来週。

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