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ネタバレ注意!! ドルビーアトモス版試写会レポート完全版

『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話の見どころをすべて紹介

2023年11月03日 09時00分更新

雪上を滑り降りる戦車の迫力、音楽とアクションの同期にも苦心

 情報量も密度感も高いアクション映像の完成度、そしてそれを補完する音響。『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話のアクションシーンは、迫力においても、展開の緻密さにおいても日本映画最高峰の完成度と言える仕上がりかもしれない。雪上を戦車で滑り降りながら対戦するという発想もすごいが、スピード感もこれまでになく感じる。こうした映像はどのように生まれたのだろうか?

柳野 「『戦車でスキーをやったらどうか?』と提案したのは僕です。そこに水島監督がやりたかった音楽とリズムを合わせた動きを入れていくのが大変でしたね。本来別個にあるアクションのテンポ感と音楽のテンポ感のせめぎあいというか……その調整が難しかったですね」

岩浪 「カンテレとアコーディオンの合奏ですね。作戦内容を暗号のように楽器で伝えるアイデアも面白いですが、これらの楽器で奏でる音楽と一緒に対戦が進むシーンでは、音楽に合わせて映像の動きをバッチリと合わせないといけない。見どころのひとつですね」

 柳野さんは3DGCI監督に加えて、コンテ修正や特技演出としてもクレジットされている。このうち特技演出は師匠である板野一郎氏にも許可を得て使っているものだという。高速で動く物体をどう見せるかは、板野氏に叩き込まれたものだという。

柳野 「ハイスピードなシーンではモノをいっぱい出せばいいのではなく、映像としてどう見せるか。そのためにどう動かすのかを考える仕事だと教わりました」

 アニメーションで映像の真実味を出すためには時には誇張も必要だ。雪山を直滑降していくシーンはスピードも速く、尺としても長い。「あの山の標高はどのぐらいあるのか?」と素朴な疑問を投げかける岩浪さんに、柳野さんは以下のように答えた。

柳野 「戦車のスピードなどから計算したら標高1万メートルくらいありました」

 エベレストよりも高い山で繰り広げられた戦車道の対戦に岩浪さんも驚いていた。さらにこのシーンの最後では、大雪崩が発生し、対戦の決着につながっていく。

岩浪 「(この対戦において)雪崩の音は作品前半のクライマックスです。そこで、物語の冒頭は今までの感覚からするとむしろ静かに感じるくらいに抑えています。地下のダム穴を進んでいくシーンなど、そのあとに続く場面では物語の展開に合わせて音圧を上げていき、最後の雪崩で、LFE(低音専用チャンネル)の音圧を最大にできるよう計算しています。ドンと身体が震えるような迫力をここで体感してほしいです」

 雪上の対戦は、3DCGのアクションが光るシーンとなっている。継続高校は“ある作戦”を隠して大洗女子学園を追撃しており、各戦車の動きに意味がある。

 また、雪上で豪快にドリフト走行をみせるポルシェティーガーの“履帯の動き”にも注目。左右の履帯を逆に回転させる超進地旋回のような動きで車体の向きをコントロールしている。継続高校にも超一流のドライビング(?)テクニックを持つ操縦手が多いようで、戦車の力を極限まで引き出す動きを駆使しているのが伝わる。一見すると、はちゃめちゃに戦車が滑っているようにも見えるが、実はしっかりと戦車が自分の動きを制御している様子がわかるのだ。初見では気付きにくい場面だが、再度鑑賞するなら、こうした細かい動きにも注目してほしい。

柳野 「アクションの密度も高いので、可能ならドルビーアトモスで観て、全体の流れを把握してもらうといいと思います。次に細かいところ、戦車などのキャラクターが生きていること、すべての動きに意味があることを見てほしいですね」

CGなら戦車を動かすのも楽だと思われがちですが……

 『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話は雪山と砂漠が舞台になっている。市街地に比べて背景が単純なぶん難易度が減ると感じる読者もいそうだが、実際には簡単な話ではない。柳野さんの口からは、その苦労を垣間見られるようなコメントも出た。

岩浪 「戦車道の対戦は水島監督の要求も厳しいですか」

柳野 「水島監督は背景も動画もほぼすべてCGで、画面全体を動かすシーンが好きですね。主観視点はCGのおかげで、より面白い映像が作れるようになったと言っています。逆に地下のダム穴を掘って脱出するシーンはコンテから大きく変えた場面です」

岩浪 「ここは主観視点も入るし、狭い坑道内で壁などにぶつかりながら進む場面に音を付けるのも面白かったです。反響をたっぷりつけつつ、わかりやすくしました」

柳野 「きっとファンの方も見たいシーンだと思いましたので」

 なお、作中で重要な役割を果たすウサギさんチームの作戦は、スティーブ・マックイーン主演の「大脱走」が元ネタ。ただ、地下に穴を掘って脱出するだけではないのでお見逃しなく! 最後に「作るのが難しかったシーンはどこか」と聞かれた柳野さんの回答を紹介しよう。

柳野 「うーん。全部ですね。CGなら戦車を動かすのが楽だと思われがちですが、全然楽じゃありません(苦笑)。毎回大変なのですが、今回も、もの凄く大変でした。前半は雪山の吹雪、後半は砂漠の砂嵐の中での対戦です。視界が見えづらい中、戦車の中にいる人たちが混乱する描写はいいのですが、その結果、観客に状況がわかりにくくなるのはよくありません。その調整が大変でした」

岩浪 「雪山が舞台の前半と砂漠が舞台の後半では、砲撃など、音の響きも違ってきます。雪は吸音するので、音の響きが短くなりますが、砂漠の岩山では反響音が増えます。場所それぞれに合った音の表現──リアリズムはしっかりと意識しています。全体の流れを考えて音量も細かく計算しています」

 砂漠を舞台にした聖グロリアーナ女学院と黒森峰女学園の対戦は、両校の緻密な作戦の応酬の結果、僅差で勝利をつかむという接戦になっている。筆者は各校の次世代のリーダーが頭角を現しつつある点を見せるのがテーマのひとつだったと感じているが、聖グロリアーナ女学院の次のリーダーが誰かは分かりにくい表現になっている。オレンジペコのようでいて、そうでもないようでもある。

 戦車道を通して、次のドラマを予感させるストーリー展開が見どころの、聖グロリアーナ女学院と黒森峰女学園の準決勝。『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話では、緊迫した戦車戦はもちろんだが、こうしたストーリーにも注目したい。

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