印南敦史の「ベストセラーを読む」
第9回
『イェール大学集中講義 思考の穴──わかっていても間違える全人類のための思考法』(アン・ウーキョン 著、花塚 恵 訳、ダイヤモンド社)を読む
人間は「脂肪25%の牛肉」より「赤身75%の牛肉」が健康的だと感じてしまう
「☆5」が5件あっても「☆1」が1件あると気になってしまう
たとえばChapter05「『損したくない!』で間違える」においては、「人は『ネガティブな情報』に過剰に影響される」ものだという指摘がある。日々多くの情報に振り回されている私たちの現状は、まさにそれにあたるだろう。
いい例が、オンラインストアでなにかを購入しようとするとき参考にするレビューだ。仮に5つ星がついた4件のポジティブなレビューが並んでいたとしても、残り1件のネガティブなレビューがどうしても気になってしまったりするものだ。
心理学の分野には、人はポジティブな情報よりネガティブな情報を重視すると実証した実験がたくさんある。しかもその傾向は、製品だけでなく人を見定めるときにも当てはまる。(205ページより)
人がネガティブな情報や出来事を重視してしまう傾向は、「ネガティビティ・バイアス」と呼ばれ、その影響力は非常に大きいのだという。あまりにも大きすぎるため、人をとんでもなく不合理な判断に導くこともあるのだとか。しかもそこには、「切り取り方」が大きく関わってくることになる。
まったく同じことだったとしても、ネガティブな切り取り方をされていると避けたくなるのはそのせいであるようだ。だから逆に、ポジティブな切り取り方をされていると喜んで受け入れたりするものだというのである。
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