声優や歌手の音声も勝手に「生成」されている
一方、元々、音声情報がたくさん存在しているのは声優さんです。たとえば「アニメのキャラクターの声を学習させて主題歌を歌わせてみる」といった動画が出てきている状態。学習素材となるデータを、アニメ作品やラジオ番組などから集めることで、学習音声の品質を上げやすい傾向があるようです。そうした機会の多い、人気の高い声優さんの音声が学習対象とされるのは当然の流れとも言えます。
特に中国では、そうした動画について活発に議論され、共有されているようです。当然、特定個人をデータ学習の対象にしていることもあり、問題ではないかという声が上がるようになってきています。
元はといえば昨年11月、アニメキャラ2890人の声を学習した「MoeGoe」という音声生成AIが登場してから、急激に注目を集めるようになりました。この学習データは、商用利用は禁止しているとはいえ、現在でもこのデータは利用することができ、ウェブ上のデモでは一部のアニメキャラの音声を生成することが可能です。
まだまだ声の抑揚など不自然な点は残っていますが、対象とされている声優さんにとっては切実な問題ですよね。
アメリカでも似た技術で別の問題が起きています。例えば、有名人の音声を使った動画が出てきています。たとえばオバマ元大統領が「ワンピース」のテーマソングを歌ったり、トランプ元大統領が「恋愛サーキュレーション」を歌ったり。マイケル・ジャクソンの音声を使ったカバー曲も登場しました。
4月には、カナダのアーティストのドレイクとザ・ウィークエンドの音声を使って学習して作られたAIを使って制作された曲「ハート・オン・マイ・スリーヴ(Heart On My Sleeve)」が、ストリーミングの音楽再生サービスで配信されるということが起こり、様々なサービスで数百万回再生されました。レコード会社のUMGは著作権侵害を理由に削除申請をしています。
しかし、YouTubeに多数の転載動画が残っているだけでなく、Spotifyを見ると、6月にSong Ghostという作者により再登録され、約100万再生に到達しています。これがオリジナルの作者であるのかはわかりません。誰の声を使ったなどとは一才明記されていないこともあり、権利的な問題の決着が付いたわけではないようです。
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