技術者が作業しやすいように考えられた修理環境
修理は受け入れチェックを行う場所のすぐ隣にある、専用スペースで行われる。
工場などの製造現場では立って作業するのが基本で、工具や部品などは手の届く範囲に置かれていることが多い。これは、無駄な移動を減らし、効率よく生産するための工夫となっている。また、流れ作業を行う上で、パーツの移動をしやすくするという意味もある。
これに対してSurfaceの修理環境は、机とイス、そしてPCが用意されているというもので、工具類は一切なし。よくある現場風景とはかけ離れたものだった。
これは、同じ作業を繰り返す製造現場とは違い、修理作業はその内容が1台ずつ全く異なることが大きく影響している。全ての工具や環境を最初から整えておくとスペースに無駄が増えてしまうため、その都度、必要なものを集めてくる方が効率がいいのだろう。
また、細かな作業が長時間に及ぶことが多いこともあってか、集中できるよう座って作業できるようになっていた。
修理に使用するパーツは、機種ごとに折り畳みコンテナで管理。コンテナにはラベルが貼られており、一目でどの機種用の何のパーツがはいっているかが分かるよう工夫されていた。
ノートPCのパーツは似ているものが多いものの、機種が違えば互換性がないものが多い。こういったパーツの取り違えを未然に防ぐためにも、こういった整理と管理は重要だ。
作業スペースにいるのは、通常2~3人。それにしてはスペースがかなり広く確保されていてるのは、気になるところだ。
このことについて質問してみると、今はまだ依頼数が少ないため、このレイアウトになっているとの事だった。今後依頼数が増えれば、空いているスペースに作業台を増やすことや、将来的には作業者の増員も視野に入っているという。
また、もうひとつ気になったのは、スペースの端にとても修理用の道具とは思えないものが2つほど置いてあったことだ。
「この重石も、立派な修理道具です。液晶の貼り付けにはPSA(感圧接着剤)、つまり、圧力をかけることでしっかりと貼りつく粘着剤が使われているため、均等に圧力をかけるために使うわけですね。最初“30kg”などと聞いたときは驚いて、何度も確認してしまいましたが、間違いないとの事だったので用意しました。なお、実際どのぐらいの重さをかけるかは機種によって変わるので、いくつかを組み合わせて使っています」(佐藤氏)
液晶は手で端を押さえて貼り付ける、といった印象があったため、これだけ重たいものを載せていることに驚いてしまった。
マイクロソフトがサービスガイドを公開しているとの事だったので、Surface Pro 9を例に確認してみると、確かに32~35kgの重石で2分間押さえるよう指示されていた。
「砂の入ったバケツは、バッテリー発火時の消火用です。膨らんだリチウムイオンバッテリーは傷がつくと発火する危険がありますので、その対策用に用意しています」(佐藤氏)
ちなみに、使用したことがあるか聞いてみたところ、今のところ一度も使ったことはないとの事だった。こちらは直接修理に使用する道具ではないものの、万が一のことを考えると、必須の設備といえるだろう。
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