LanScope屋からの脱却を目指した次世代アンチウイルスという選択肢
大谷:と言いつつ、2012年にはエムオーテックスが京セラ コミュニケーションシステム(KCCS)グループに入りますよね。
宮崎:はい。KCCS傘下に入ったのち、 私は10年以上にわたって副社長兼営業本部長を務めてきました。そこからはLanScope屋からの脱却を目指しました。第2、第3の矢を作るという仕事ですね。
大谷:いろいろな製品や取り組みをスタートさせていきましたね。
宮崎:2011年頃からは「LanScope An」といういわゆるモバイルデバイス管理(MDM)ツールを作り始めました。2012年にリリースして、キャリア系の販売店が増えました。
2016年には次世代型アンチウイルスとして「Cylance(サイランス)」を投入しました。OEMだったので、ソフトウェア企業としてはいろいろ考えるところはあるのですが、事業領域は拡大できたなと思います。
大谷:社内的には大きな変化だったんじゃないですか?
宮崎:そうですね。もともと営業としては、お客さまの課題をもっと幅広く解決したかったんですよね。だから、LanScope Catしか売るモノがないという理由で辞める営業もいたんです。その点、Cylanceのアンチウイルスというまったく違う商材を持ってくることで、エンドポイントで守れるようになった。営業も面白くなってきたはずだし、私自身もエキサイトしました。
大谷:宮崎さんはもともと営業だったからわかるんでしょうね。
宮崎:IBMは製品やサービスが多かったので、お客さまの課題に対して、なんでも売れたんですよ。でも、エムオーテックスはよくも悪くもLanScope Catしかなかったので、営業の気持ちはわかりました。とはいえ、売るモノがいっぱいあるディストリビューターからメーカーで営業やりたいといってうちの会社に転職してくる人もいますので、一概に言えないのですが。
メーカーとしての強みは持っていきたい
大谷:今後のエムオーテックスの方向性について教えてください。
宮崎:資産管理ツールに情報漏えい対策の機能も加わったLanScope Catに、アンチウイルスのCylanceが加わって、いい形のセキュリティソリューションができました。アンチウイルスなんて、うちの会社からすればゼロベースだったのですが、売り方やサポートまで含めて一気に立ち上げてくれたわけで、うちの会社はすごいなと。既存ユーザー様の2万社にもっとCylanceを拡げていけたらいいなと思います。
大谷:最近はEDRという選択肢もありますが、エムオーテックスとしては、どういうポジションなんでしょうか?
宮崎:現状、CylanceとDeep Instinctという2つのエンジンを提供していますが、基本的にはAIアンチウイルスですべてを遮断しますという立場です。そのため、遮断できないことを前提としたEDR(Endpoint Detection and Response)とはどうしても競合してきますので、両者の違いはきちんと理解していただくよう、啓蒙をしていきたいです。
大谷:資産管理ツールとAIアンチウイルスのほかにもプロダクトやサービスは考えていますか?
宮崎:ビジネス領域について言うと、それまではLanScope(Cat/An)と次世代型AIアンチウイルスだったので、3本目の柱を作りたいと思っていました。結果的には、社長になった直後の2022年にKCCSのセキュリティ事業部(SecureOWL)がエムオーテックスに来ることになりました。今までソフトウェアを販売していた弊社になかったサービスが加わってきたので、おのずとポートフォリオは拡がりました。その点では思い描いた通りには進んでいます。また、セキュリティ事業の中にDarktraceのネットワーク監視サービスも引き継いでいます。
今後は“総合セキュリティ企業”を目指していきます。とはいえ、次世代型アンチウイルスは他社製品のOEMですし、プロフェッショナルサービスももとはKCCSのサービスです。メーカーとしての強みをどこかで持っていたいんですよね。
大谷:ソフトハウスとしての矜恃みたいなのは持っておきたいと。
宮崎:たとえば、弊社はLanScope屋だったときから、「LanScope Eco」のようなグループウェアを作っていましたし、セキュリティのみにフォーカスしていたわけでもないんですよね。数年前はチャットボットサービスの「Syncpit(現LANSCOPE セキュリティオーディター)」を立ち上げましたが、LanScopeほど大きく成長し たわけではない。セキュリティのフィールドを拡げつつ、自分たちのプロダクトを何個か埋め込みたいんです。プロダクトを中心に、周りにサービスを配置していくのが理想だと思います。
他社の製品を扱うようになり、ちょっと商社っぽくなってきたエムオーテックスですが、自社プロダクトを持っているのはDNAだと思っています。メーカーらしさを気に入って入社してくれたメンバーもいますので、もう少し自分たちのプロダクトでポートフォリオを組み立てたい。これがエムオーテックスへのロイヤリティにもつながると思っています。
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