大躍進となった冨林勇佑の2022シーズン! その中で大事にしていた“原点”はeスポーツ
バーチャルから学び
リアルの2022シーズンで活かされた“ある経験”
実際にドライブする冨林にとっても、2022シーズンはバーチャルでの経験が存分に活きた1年だった。特にチャンピオンをかけた大一番で大いに役立ったという。
「実は普段からグランツーリスモの仲良いメンバーとかで、シリーズ戦みたいなことをやっています。自分たちでレギュレーションを作って遊んでいたります。その中で、ゲームではシリーズチャンピオンというのを獲り逃したことが1度もないんですけど、今の実車のレースにも活きている部分は少なからずあります」と冨林。しっかりとポイント計算など状況把握を細かく行ない“チャンピオンを獲るためのレース運び”を、バーチャルの世界で実践していたのだ。
「グランツーリスモなどで、様々な経験をしてきた中で“獲れる時に獲り逃さない!”という信念みたいなものが、僕の中にあります。たとえば、S耐の最終戦ではもっとペースを上げることができましたけど、チャンピオン獲得のためにリスクを背負うべきではないという判断とか、86のワンメイクレースでも、優勝したい気持ちはあるけど、大前提はシリーズチャンピオンを獲るということで、展開を冷静に見極めて、ペースの速い人を前に行かせたりとか……。なんだかんだと、eスポーツで毎回チャンピオンを獲らせてもらう中で、メンタル的に鍛えられたところは多いですね」
「チャンピオン争いは、実車でもバーチャルでも、メンタル的に舞い上がったりするものだと思いますし、獲った経験があるかないかで、レース中の感情って違うと思います。eスポーツに関しても、本当に仲の良い友達同士、身内の集まりで楽しくやっている中での経験ですけど、それがすごく活きているなと2022シーズンは感じました」と、冨林自身も普段のグランツーリスモでのバトルが、リアルレースで役立っていることを再確認していた。
ドライバーとして活躍する一方、根っからのモータースポーツ好きでもある冨林。その好奇心もプラスアルファの働きをしたという。
「僕自身もリアルのレースが大好きで、普段からF1とかSUPER GTのGT500、あとはスーパーフォーミュラのチャンピオン争いをすごく細かくチェックしています。その中でポイントの駆け引きとかが好きだったりするので、そこから学ばせてもらっているところもありますね」
「そういう意味で、eスポーツだけとか、実車だけではなくて、色んなものから学ばせてもらっています。でも、その根底には“僕はレースが大好き”というのがあると思います。それがリアルのレースでもチャンピオン獲得につながっているのかなと思います」
「リアルでの活躍とeスポーツは、あまり繋がりがないだろう、と思われることもあるかもしれませんが、そんなことはないです」という冨林。もちろん、実車でしか学べないこともたくさんあるのだが、バーチャルからも得られるものはたくさんある。両方の世界で蓄積した経験を自身の引き出しにして、必要な時に必要なものを取り出し、活用する……。バーチャルの頂点に立った経験がある冨林だからこそ成せる業なのかもしれない。
2023年もさらなる活躍が期待される冨林。ドライバーとしての成長のみならず、次の世代の子たちに夢を与えていきたいと、今後のことについても力強く語ってくれた。
「僕も小さい頃に、脇阪寿一さん、本山 哲さん、服部尚貴さん、谷口信輝さんらが活躍している姿を観て、夢をもらいました。それを今度は“僕が子どもたちに夢を与えていく”番なのかなと思っています」
「そういう意味で、お子さん目線でいくとGR86/BRZレースとかS耐って、結構コアなのかなと思っています。そうなると、みんなが観ているSUPER GTでもっと活躍することによって、より多くの方に希望を少しでも与えられたらなと思います」
「もちろん、レースファンのお子さんもそうですし、eスポーツやゲーム好きの子にも夢を与えられるようなポジションにいさせていただいています。本当に色んな方々に夢だったり希望だったり憧れを持ってもらえるような人間になれるように、もっとこれからも頑張っていかないといけないですね」(冨林)
2023年もSUPER GTでは、引き続きTEAM MACHからの継続参戦となった冨林。チームメイトには2016年のGT300チャンピオンである松井孝允選手が加わるということで、より期待のできる1年になることは確実だ。
その中で忘れてはいけないのが、冒頭でも触れた通り“冨林勇佑はeスポーツ出身である”ということ。以前は「プロドライバーを目指すなら、まずはレーシングカートから」というのが定説だったが、彼をはじめeスポーツ出身ドライバーが増えてきたこともあり、今後はグランツーリスモやレーシングシミュレーターの注目度が増していくことだろう。
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