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私→WRC

第35回

RQの荏崎ろあがメカニック視点で振り返るラリージャパンの過酷さと達成感

2023年02月11日 15時00分更新

ギャラリーステージを見にいったDAY3

 そして土曜日DAY3です。今日も3:30起きですが、だんだんと早起きに慣れてきました。本日も朝からサービスです。

輪止めの置き方についてレクチャー中

 前日ホイールが割れてしまい、新しいホイールにタイヤを付けて貰わなければいけません。それを朝のサービスまでに交換して準備しておく必要があります。朝イチのサービスが6時台で、まだDUNLOPさんもタイヤサービスを展開していない時間です。

 ですが、松井監督が前日のうちにDUNLOPさんに頼んでくれていたので、5:30という時間に無事にタイヤを付け替えてもらえました。DUNLOPタイヤサービスのスタッフさんは、全日本ラリーモントレーで挨拶した私のことを覚えてくださっていて、色々気にかけてとても親切に接してくれます。私のクルマのタイヤも次はDUNLOPにしようかなと思ってます(笑)。

 そんなことを思いながら、サービスパークに帰還。私たちのサービスDは6:52にインとのことです。

メンテナンスがしやすい場所に誘導するのも仕事です

 今回も私の仕事は車両の誘導からスタート。もう数日誘導をやっていますが、最初は和田メカニックに誘導のやり方でだいぶ指導を受けました。ラリーカーはそこそこのスピードで入ってくるので、うまくポジションを合わせて的確にスロープに上るようにしなければいけません。誘導といっても実は結構難しかったりするのです。

 今回もウマをかけて、右側のタイヤを外して、さっそく組み立てほやほやの新しいタイヤに交換しました。昨日はSSを2本しか走れなかったので今日こそは無事走れますように、と祈りながらスペアタイヤチェックや窓拭きをしました。

 本日もタイヤマーキングは私の仕事です。サービスを少し早めに切り上げてタイヤチェックポイントに向かいます。朝早いのでお客さんはあまりおらず、緊張しないでタイヤマーキングができました。私は人が居ないとできるタイプなんだと思います(笑)。

 DAY3はSS8/11に額田郡、SS9/12 は三河湖でラリージャパンの象徴的なカットである熊野神社前を駆け抜けます。SS10新城は全日本の新城ラリーでも舞台にもなっている鬼久保です。幅広い高速ワインディングロードで、箱根ターンパイクのような道と言われてなんとなくイメージしやすかったです。そして、最後のSS13/14は岡崎市の河川敷、わずか1.4kmの短い距離を走ります。

メカニックは走りを見に行けないので、想像力で走りを補完します(笑)

 ありがたいことに、最後の岡崎SSは夜のサービスまでに戻ってくることを条件に、観戦に行かせてもらえることになりました。

 SS10まで無事に走りきると、お昼前にサービスEが始まります。どれだけ汚れてマシンが帰ってくるかと思っていたら、意外と汚れていなくてびっくりしました。聞くと、豊田スタジアムの入り口に洗車ポイントが設置されていて、担当スタッフさんが高圧洗浄機で噴いてくれるそうです。このように「さすがWRC」と思うことがちょくちょくあります。

 このサービスは特に問題がなかったので、基本的なタイヤ付け外しとチェックと窓の曇り防止スプレーをかけて終了です。毎回のことながらトルクチェックは私がやっているのですが、SNSでも「スピードがあって、トルクかけてるろあちゃんカッコイイ」というコメントをたくさん見かけてうれしかったです。ありがとうございます!

応援のコメントを見るとやる気がでますね!

 そして、土曜日のお昼ということもあり、今までで1番人が集まっていました。こんな大勢の人に見守られながらのサービス作業は初めてで不思議な気分でした。ピットでバイトをしていた時も、ガラス越しに整備を注視するお客さんがいましたが、それより緊張したかも……。タイヤマーキングにもたくさんのお客さんが来てくださって、「頑張って!」と声をかけてもらえることも多く、とてもやる気がでました。

 作業終了頃にはピエール北川さんも声をかけてくださって、とてもうれしかったです。

 サービス後のランチでは、桐島しずくちゃんが作ってくれた美味しい塩焼きそばで元気をチャージし、いよいよ岡崎SSに向かいます。何日もホテルと豊田スタジアムの往復のみだったので、やっとギャラリーとしてラリーを満喫できるのが楽しみでした。

村田選手と梅本選手は食べられなかったみたいですが、私はしっかりいただきました(笑)

 豊田市と岡崎市は本来そこまで離れていないのですが、ラリーでの通行止めがあったりお客さんが多くて道路もかなり渋滞していました。沿道には旗を持った人がたくさん応援していて、まるで箱根駅伝みたいな。普通の生活道路に派手なカラーリングのラリーカーが、一般車に混じって走っていて、その光景が新鮮で本当にラリーは面白いと思いました。当たり前ですがラリーカーも信号や法定速度を遵守していますよ(笑)。

 岡崎の河川敷に着くと、あたりはもうお祭りのような雰囲気。屋台がたくさん出ていて、とにかくお客さんが多くて、これまでサービスパークにしかいなかった私は、改めてラリージャパンの開催規模にびっくりしました。岡崎応援隊の天野ひろゆきさんや哀川 翔さんのトークも聞こえてきて、芸能人の方もたくさん見かけました。

ウェルパインのテントに来ていた女子みんなで、岡崎ステージを観戦しに行きました

 すでにいろいろなメディアで報道されているとおり、SS13は潜水士さんの不備でFIAからスタート停止が言い渡され、大きくスケジュール遅れました。川や湖、海などの近くを走る場合は、FIAの規則で潜水士さんが現場に配備されていなければならないそうです。今回はその潜水士さんが現場にいなかった、ということでFIAよりスタートが許可されなかったみたいです。

 急ぎ潜水士さんを手配して、現場に到着したことでようやくスタート。しかし、お客さんも多くて前方が見えにくく、路面がグラベルで砂煙も上がるので、対岸となるギャラリーエリアからはワケがわからず、私は会場設置のオーロラビジョンで観戦しました。別に私の背が小さいから見えなかったわけではないですよ(笑)。

 岡崎SSは直線とヘアピンを合わせたコースレイアウトで、ラリーカーの急加減速やコーナーリングの速さに興奮しました。ここは狭いコースを走行する事が多く、クネクネした道をハイスピードで駆け抜けて行く迫力が魅力です。爆音の排気音や狭いコース幅をドリフトして上手く走っていく様子はD1を彷彿させます。本当にトップドライバーたちはスゴイと思いました。

川の対岸とはいえ、ワークスカーの迫力は十分伝わりました

 夜のサービスの時間が迫っていましたが、どうしても村田選手と梅本選手の走りが見たくてずっと会場で粘っていました。辺りはもう真っ暗ですが、生で2人の走りを見ることができました。ピエール北川さんの実況で、村田選手がEXEDYの社員であることや、梅本選手が元SKEのアイドルであることに加え、ウェルパインのことについて話してくださっていて、私もうれしくなりました。

 本来なら、このコースをSS13とSS14と計2回走る予定でしたが、タイムスケジュールの遅れにより走行は1回で終わりになりました。つまりSS13のみでSS14はキャンセルです。見終わったら急いで監督と合流し、豊田スタジアムに戻ります。サービスFを控えているので、メカニックの私はのんびり観客気分ではいられないのが悲しいです(笑)。

 レッキ車であるエボXでの移動でしたが、やはり疲れがあったのか、ちょっとスパルタンな車内にも関わらずいつ間にか寝てしまいました。起きるとすでにサービス会場に戻っていて、寝ぼけている余裕もなく、すぐサービスインです。

 さっきまで砂煙の中で頑張ってくれていた208R2にDAY3最後の整備です。通常の足周りチェックに加えて、エンジンオイル交換をしました。ちなみにグループR車両はオイルも細かく指定されていて、208R2はトタル製オイルが必須。よくモタスポ写真でも見かけますが、プジョーにはやっぱりトタルなんですね。

タイヤ交換も慣れてきました

 オイル交換には車両のエンジン下周りを保護するアンダーガードを外さないといけないのですが、非常に重くて付け外しが1人ではかなり苦戦しました。早水チーフメカに助けてもらいながら、なんとか作業を完了。

 車両の下周りに潜る際、海外のメカニックさんを見るとみんな地面に敷いてあるグランドシートに後頭部を付けないように作業しており、それを見習って私も頑張ってみましたが首の筋肉がまだまだ足りませんでした。女の子にしては体力筋肉がある方なのですが、メカニックとしては私もまだまだのようです……。

 最終日DAY4は朝のサービスのみなので、夜のサービスは今回が最後でした。長い期間でしたが、もうラリージャパンで整備できるのは明日の1回だけなんだ……と思うと寂しくも感じました。

お客さんたちはクルマが来ると自然と離れてくれます。こういう信頼関係で成り立っているのもラリーっぽいですね

夜のサービスはこれで終了。なんか寂しいです

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