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AIファーストが生み出したコロナ禍注目の首かけ型配信ウェアラブルデバイス・LINKLET

データファースト、現場ファーストだからこそできた形

 これまで、ネックバンド型のスピーカーや、メガネ型のウェアラブルデバイスはあったが、首掛け型のスマートフォンはなかった。LINKLETは、まさにありそうでなかったデバイスと言える。取締役CSOの竹崎氏は、「AIの会社がハードをゼロからつくらないと、この形にはなりません」と断言する。

 「ひとつは、データファーストであること。そもそもデータを収集・活用する目的で仕様から設計しなければならず、ハードメーカーが作ろうとしない構成になっています。もうひとつは実現場の作業者のニーズを把握できていることです。ARやVRのスマートグラスなどはどうしてもハードウェアファーストになりがちで、例えば、長時間の利用には耐えられない大きさ・形状・重量のデバイス構成など、産業現場の実用から離れてしまいがちです」(竹崎氏)

フェアリーデバイセズ株式会社 取締役CSO 竹崎 雄一郎氏

 LINKLETは、省電力プロセッサーのクアルコム製Snapdragon 4シリーズを採用しており、長時間稼働し、小型軽量で装着する利用者の負担にならないように設計されている。

 アプリケーションとして入っているのは、同社がToBで培った技術のうちのほんの一部。例えば、マイクには最低限のノイズ除去機能は入っているが、THIKLETに搭載されている工事現場の激しい騒音を除去するレベルの技術は入れていない。

 あくまで最初はZoomとMicrosoft Teamsのビデオ会議用だが、今後、LINKLETのユーザー向けに音声のテキスト化や画像認識、感情認識といった同社のAIサービスが追加されていく可能性もある。フェアリーデバイセズの音声認識技術には10年近い実績があり、2020年設立の「総務省委託・多言語翻訳技術高度化推進コンソーシアム」のメンバーでもある。2025年の大阪万博に向けて多言語の自動同時通訳プラットフォーム技術の研究開発にも取り組んでいる。

 例えばLINKLETにこの同時通訳機能が付けば、多国間会議や海外拠点への遠隔支援に使えるようになる。今後は現場のニーズに応じて、5G対応、IoT機器や外部サービスとの連携機能が追加される可能性はあるが、同社の目的は、あくまでデータを収集・学習して作業支援AIを作り、育てていくサイクルを回していくこと。

 「将来的にはGoogleの広告モデルとは異なる、データドリブンでの経済圏エコシステムがつくれるのではないかと考えています。現時点で、例えば工事現場の作業員、八百屋の店主、薬剤師などが仕事の中で日々扱っている一人称視点のデータはデジタライズされていません。こうしたまだ見ぬデータを適切な形に加工して流通させることで新しい価値が創りだせると我々は考えています」(藤野氏)

 熟練者のノウハウや知見をデータとして解析することは、スキル教育やAIチャットボットに応用できる。また、それをAIの学習データにすれば、より多くの人が幅広く利用することもできる。「これまでAIの活用法としては、ウェブのスクレイピングなどただデータが個人から収集されるのみだったが、AIがより普及した社会では、有用な技術や知識の情報を提供した個人に対して、逆に利益を還元することが当たり前になるかもしれない」といった未来像も含めて、藤野氏は将来ビジョンを語ってくれた。

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フェアリーデバイセズ
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