圧倒的な音質で心が震えた
試聴機を借りられたため、音質傾向についても触れる。手元のAstell&Kern「SP1000M Gold」や「ウォークマン A100」(NW-A100TPS)などと組み合わせてみた。音量は取りやすいほうなので、スマートフォンを含め、比較的低出力の製品でも問題なく利用ができるが、クオリティの差はやはり出るので、できるだけいいプレーヤーやヘッドホンアンプとの組み合わせを検討したい。
開放的、高解像度、明瞭な低域、広大なサウンドステージ……といったメーカーの謳い文句には十分に納得できた。特に印象的なのはパワフルで分離にも優れた良質な低域の再現だ。全体にパッキリとしてきめ細かいサウンドだが、その理由のひとつは高域がよく伸び、倍音成分を豊かに含むためだろう。
比較用にDITA「Dream」(発売時の価格は20万円程度)を用意してみた。DITAはかなりハイクオリティな製品だが比較するとDarkSkyのほうが、ダイナミクスが広く取られ、比較すると音の立ち上がり・立ち下がりが速く切り込み感の高さがある。音場も広くより華やかに聞かせる印象だ。ダイナミック型ドライバーらしい迫力感のある音を求める人には非常に刺さる音ではないだろうか。
例えばポップス系のライブ音源などを聴くと歓声の音が印象的だ。DITAの再現はニュートラルでよいが、DarkSkyは音の強弱や空間の広がりなどがより印象的で鮮やかさがある。
付属ケーブルは標準が2.5mmのバランス駆動用端子となっているが、バランス駆動のほうが明らかにいい。3.5mm端子はアダプターを介することもあり、できれば2.5mm端子のまま楽しみたい。3.5mm端子を利用した場合は、スピーカー再生のように直接音を聴くだけでなく、空間を伝って残響成分などを合成して音が伝わってくるような落ち着いてまとまった表現になる。特性的にはややドンシャリ感が強く出るようだ。
イヤーチップによる音の変化が楽しめる点も特徴だ。白いイヤーチップはより音の輪郭がキリっと立ち、直接音が明瞭に聴こえる感じ。軸は細く長く、つぶすと硬い反発がある。黒いイヤーチップは低域が豊かでゆったりとした音場の広がりが感じられる。キックなどがかなり明瞭でタイトに出てくる。こちらは軸が太く厚い。傘の部分は両社とも近いフィーリングだ。
ケーブルは太いけど、柔らかく、取り回しはしやすそうだ。高域などの鳴りはコーティングの違いが音に現れていた結果とも思う。いずれにしても広さ、きめ細やかさ、シャープさ、速さなどオーディオ的なクオリティの高さが光る製品にDarkSkyは仕上がっている。
ダイナミック型イヤホンで、よく挙げられる利点は、複数のドライバーを組み合わせることによって生じやすい位相特性の変化や干渉などを低減できる点だ。ドライバーなどの品質は求められるが、構造がシンプルで、ほかのドライバーとのマッチングを考慮せず、ドライバーの特性を引き出す設計ができる。また、振動板面積が大きいダイナミック型ドライバーは、低域の再現性に優れるので、安定感があり力強い再生ができる機種も多い傾向だ。
もちろんこれらは一般論で、シングルでもマルチでも最終的にどういう品質の製品に仕上げるかという完成度の話にはなる。とはいえ、スペック的にアピールしにくいシングルドライバーの機種を、敢えてハイエンドの価格で提供するのであるから、メーカー側の意気込みも相当に高いとみるべきだろう。ドライバー性能はもちろんだが、振動が伝わる経路であるアコースティックにも細心の注意が払われ、高音質化・高性能化を目指すことになる。ブランドの音に対する考え方が見えやすいカテゴリーと言えるかもしれない。
DarkSkyは単にパワフルな低域やつながりの良さだけでなく、華のある製品であり、有線ハイエンドイヤホンの現在地を確認しておきたい人はぜひ一度聴いてもらいたい仕上がりになっている。対応できるジャンルも広そうなので、アコースティックからロックまでお気に入りの楽曲と合わせてチェックしてほしい。
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