週刊アスキー

  • Facebookアイコン
  • Twitterアイコン
  • RSSフィード

しなやかできめ細かい聴き心地のよさ、DYNAUDIO「Emit M10」で聴く、堀江由衣・東京事変~表情豊かな声を味わう

2020年11月03日 13時00分更新

長く付き合うほど良さがわかる
飽きの来ないオーソドックスさが魅力

 DYNAUDIOのEmit M10の良さは、現代的な情報量の多さや忠実度の高い再現を備えながらも、古いスピーカーの持つ聴き心地の良さ、性能の高さではなく音楽性の豊かさを感じるような味わいを持ったところだと思う。音の個性が強すぎると曲との相性が出てしまうが、そこまでアクの強い個性ではなく、さまざまな音楽を聴いても柔軟にその楽曲の持ち味を引き出す懐の深さがあると思う。

 筆者は自分のリファレンスとしていることから分かるとおり、B&W 607のような解像度の高い音、無個性と言えるくらい色づけの少ない音を選ぶことが多いが、Emit M10のような情感の豊かな音も好きだ。この両方を兼ね備えた音が理想というわけで、そんな底知れない音楽性と表現力を持ったスピーカーも実在するが、怖ろしく高いハイエンドスピーカーなのでおいそれと手は出せない。

 この連載ではエントリークラスの価格帯のスピーカーに限定して紹介する製品を選んでいるし、ガチのオーディオマニアではない一般の人が購入を検討するのもこのくらいの価格帯の製品だと思う。だから、もしもこの2台のスピーカーから購入するものを選ぶなら、両者の音をじっくりと聴き比べておおいに悩んでほしい。失敗することもあるが、その選択の積み重ねが自分の好みの音を形成していくと思う。

 作曲家や演奏家と同じ位の真剣さで音楽に向き合うのではなく、疲れを癒すために、心地良い時間を過ごすための音楽を聴くという人には、Emit M10をおすすめしたい。楽曲の良さをじっくりと味わうことができ、しかもそのまま眠ってしまえば最高に幸せな気分になれると思うような優しい音、これもまた優れたオーディオの持つ魅力だと思う。そして、このまま何十年使い続けてもけっしてその魅力が色褪せることはない。そんな飽きの来ないオーソドックスさが一番の魅力かもしれない。

この記事をシェアしよう

週刊アスキーの最新情報を購読しよう

この連載の記事