セキュリティについて、難しく考える必要はない
── 外出自粛や緊急事態宣言は働く環境の大きな変化を生みました。
大谷 「テレワークのノウハウを記者の立場で長年取材してきましたが、ここまで長いものは初めてでした。在宅ワークをし始めて気付いたことは多いですね。ふだん取材する相手は、IT系でかつCIO的な役割を持つ人やエンジニアが多いのですが、もともと在宅で働いていた彼らも口を揃えて、『ここまで長いのは初めてだ』と言います。テレワークのベテランにとってもいろいろと学びがあったと思います。
IT系の偉い人に言わせると、在宅勤務はセキュリティと利便性のバランスが難しい。紙ベースで進めていた業務をオフィスの外に持ち出すことに抵抗感がありますし、高速で安全なネットワーク接続環境の整備も必要です。在宅勤務するためのIT基盤が整っていないことがあらわになりました。うわべの話ではなく、インフラというか、セキュリティ、ネットワーク、ハードウェアの重要性が強く認識された出来事でした」
佐々木 「私はいま京都の実家から取材に参加していますが、集合住宅のため、通信環境があまりよくありません。今後、働く場所が自由になっていくと、地方でもマンションなどの集合住宅でも、安定して高速な通信性能を持っていることがウリになっていくでしょう。会社にいかずに済めば、地方の遊休施設などが、個人用のプライベートオフィスになることも考えられますし、5Gもこの状況で必要性が高まる……と考える人もいるかもしれません。働くためのインフラという観点でも、思った以上にインパクトが大きな話でした」
大谷 「NTTコミュニケーションズの発表では、在宅ワークが進む中、日中のインターネットトラフィックが2~3割増しになったというデータが出ました。コラムにも書きましたが、娘が教育用に『Classi』というオンライン学習サービスを使っており、そのつながりにくさも感じました。まずはこうした環境の改善が必要で、そのあとにセキュリティがくるのだろうなという実感もあります」
青木 「テレワークやセキュリティというと、難しい話になると感じる方もいると思います。しかし、従来から言われてきたことを素直に取り入れてもらえればという側面もあると思います。個人については『端末にはセキュリティ対策をする』『危険なサイトにはいかない』といった、日頃われわれが発信しているメッセージは変わりません。
企業については、いきなりセキュリティを考慮した移行はコストがかかります。ここもまずは意識を共有し、できることをやっていけばいいでしょう。ユーザー自身に気にかけてもらうことが大事です。
こういった話は難しい問題ととらえられがちですが、リアルの世界で危ない人が街中を歩いていたら、気を付けるのとあまり変わりません。また、自分だけでなく、この機会に家族に対してもネットワーク環境を見直して、家でどんな端末が同時接続しているかとか、子供にどう使わせるかも考えてほしいと思っています」
週刊アスキーの最新情報を購読しよう