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【私のハマった3冊】新しい時代をつくっていく 江戸・昭和・平成の編集者

2014年11月15日 17時00分更新

1004BOOK

メタクソ編集王
著 角南攻
竹書房
1404円

蔦屋
著 谷津矢車
学研マーケティング
1404円

あしたから出版社
著 島田潤一郎
晶文社
1620円
 

 編集者についての本はおもしろい。優れた編集者の仕事は時代の反映であり、同時に新しい時代をつくっていくものだ。

『メタクソ編集王』は『少年ジャンプ』の名付け親であり、『ヤングジャンプ』を創刊した編集者、角南攻の半生記。帯コピーには「漫画を50億冊以上売った編集バカ」とある。『ハレンチ学園』、『侍ジャイアンツ』、『包丁人味平』を生み出したのもこの人。『トイレット博士』のスナミちゃんのモデルといえばわかる人も多いだろう。

 圧巻なのは『ヤングジャンプ』編集長時代。創刊まもなく100万部を突破した売り上げの勢いそのままに、お笑いコンテストや自主映画コンテスト(審査員はスピルバーグ!)、ビル・ゲイツの講演会、F1やラリーへの参加、映画女優オーディション、全国の大学の学園祭支援など、読者が熱狂する数多くのイベントを敢行した。角南は漫画だけでなく若者のライフスタイルそのものを編集していたのだ。

 そんな角南が次のような言葉を記している。「ボクが日本初、世界初だと思った企画やプレゼントの大半は、江戸時代の出版プロデューサー・蔦屋重三郎がほとんどやっていた」。その蔦屋重三郎を主人公にした時代小説が、谷津矢車『蔦屋』である。重三郎は、吉原のガイドブックや狂歌本、政治を風刺する黄表紙(一種の絵本)などで次々とヒットを飛ばし、さらに浮世絵の喜多川歌麿や写楽を発掘してセンセーションを巻き起こした。いずれも閉塞した江戸の街に風穴を開ける仕掛けだったという。

 島田潤一郎『あしたから出版社』は現代の編集者のあり方を象徴する本だ。島田はニート同然の状態から、親しかった従兄弟の死をきっかけにたったひとりの出版社、夏葉社を立ち上げ、本を「こころを伝える『もの』」として丁寧に作りつづけている。本が好きで、生きにくさを感じている人たちに寄り添おうとする姿勢は、なんだかとても今っぽいし、正しいことだと思う。
 

大山くまお
ライター・編集。『映画クレヨンしんちゃん 逆襲のロボとーちゃん』DVDのライナーを構成しました。

※本記事は週刊アスキー11/25号(11月11日発売)の記事を転載したものです。

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