仕事で「遊ぶ」放課後Make活動からの働き方改革
デンソーの岡本氏は、社内に立ち上げた放課後活動「D's Maker College」を例に、企業内Make活動の立ち上げから運営、業務向上につなげる方法を紹介。
立ち上げのきっかけは、普段のオフィス業務はデスクワーク中心で楽しくなくなってきたこと。モノづくりへの情熱を取り戻すため、有志を集めて社長に交渉し、2016年から放課後Make活動をスタート。仲間を増やすために、社内メイカーフェアの開催、Maker Faire Tokyoへのバスツアー、夏休み創作体験会、ドローンレースなどイベント活動にも取り組んでいる。放課後Make活動を始めたことで、会社に行くのが楽しく、創作時間をつくるために業務効率もアップ。働き方や生き方を変えるきっかけになったという。
さらに活動を拡げていくため、1)業務時間の一部を副業的にMake活動に割り当ててもらい作品をレベルアップして事業化へつなげる、2)仕事と遊びを切り離さず、業務自体を楽しめるマインドセットに変えることが次の目標だ。その結果として、「業績向上が企業内Makeの価値である、と言えるようになっていきたい」と語った。
利益を生まない事業の運営資金を調達するテクニック
続いて、デイリーポータルZのサイトマスター林雄司氏から、役に立たない事業の運営資金を調達するためのアイデアが紹介された。デイリーポータルZ は言わずと知れた大人気サイトだが、これまで一度も黒字化していないという。現在は東急グループのイッツ・コミュニケーションズのメディアとして運営費を得ているのが現状だ。安定したサイト運営・Make活動を継続するには、最大のスポンサーである自社の意思決定者をいかに説得するが重要になる。
林氏が挙げるポイントは3つ。
1)意思決定者を当事者にする。ウェブサイトやイベントに登場してもらい、巻き込む。
2)数字で説明しない。「エンゲージメント」、「ファンを増やす」といった長期的な価値表現を使う。
3)ネットの反響や大手メディアでの掲載など他人の評価を引用する。10万PVよりも200人の集客のほうが評価されやすい。
「大事なのは、楽しさを認めてもらうこと。楽しい作品をつくり、日々発表していくのがいちばんの効果」とアドバイスした。
手芸感覚で家電を改造できる世界をつくりたい
乙女電芸部は、大学の研究室の仲間で始めた個人によるMake活動だ。矢島氏からは、Make活動を始めた経緯と、仕事や生活とMakeの活動をどうやって両立させているのかを紹介した。
乙女電芸部は、矢島氏が慶應義塾大学SFCに在学中に仲間たちと結成したDIYグループだ。
大学の研究室では、新規性や有用性を求められて、作りたいものが作れない。その欲望発想のモノづくりをするために部活として設立したのが始まりだ。2010年のMake Tokyo Meetingから9年連続で出展し、2013年からはハンズオンワークショップを開始。Maker Faire Tokyo 2014では、パナソニックから声をかけられてコラボするなど、Maker活動が仕事につながることもあるそうだ。
乙女電芸部の目標は、主婦が欲望発想で身の回りの家電を改造できるようになること。
「手芸キットで服を小物や作り、ワッペンを付けてアレンジする感覚で、家電も自分でアレンジできる世界にしたい」と夢を語った。そのために、家電メーカーにも一般ユーザーがカスタマイズ可能な機能を開放してもらうなど、橋渡しとなる活動も始めているという。
Maker Faire Tokyoの現状とこれから
では、Maker Faire Tokyoを継続していくはどうすればいいのか。オライリー・ジャパン Make編集部の田村英男編集長より、Maker Faire Tokyoの運営の課題と、今後の計画について発表された。
Maker Faire Tokyoは開催規模が拡大したことで運営コストがかさみ、現状の収支はかなり厳しいようだ。負担が大きいのは、ビッグサイトの会場費。面積が広くなるほど、備品、電気工事、施工代も上がり、運営・警備スタッフの費用もかさむ。
現在は、収入の約5割をスポンサーフィーに頼っており、今後は収入減を多様化することが課題だ。ひとつは入場料による収益だが、来場者を増やすために広告を強化したいが、申し込み時点では出展内容がわからないため、事前のパブリシティが難しい面もある。また物販は、ファミリー層が増えたため、専門書籍やグッズがあまり売れなくなっている。イベントのオリジナルグッズを販売する手もあるが、在庫を抱えるリスクがある。
一般出展者の出展料の有料化も検討
現在、Maker Faire Tokyoの一般出展者の参加費は原則無料だが、今後は出展費用の徴収も検討しているという。2019年の出展者向けに実施したアンケートでは、8割が支払ってもいいと答えているが、そのうち54%は5000円以下の金額を希望している。
ちなみに、コミックマーケットの参加費は約1万円、デザインフェスタは1万2600円(1日)、ワンダーフェスティバルは1テーブル2万7000円だ。
学生や教育機関は無料にするなど、バリエーションや徴収方法も慎重に考えていかなくてはいけないだろう。
メイカーのすそ野を広げるためには、より多くの人が参加できることが望ましいが、イベント規模の拡大は、運営側にとって負担が大きすぎる。出展者にとっても2日間の出展にかかる、交通費や宿泊費、作品の運搬は、時間・お金・体力的にかなりの負担だ。
多くの人がより気軽に参加できるように、各地で小さなメイカーイベントを開催するのもひとつの方法だ。現在は、Maker Fair Tokyoのほか、京都のMaker Fair Kyoto、岐阜県大垣市のOgaki Mini Maker Fairが開催されており、2020年2月には、つくばで初のTsukuba Mini Maker Faireが開催される。さらに、Mini Maker Faireよりもさらに小規模なメイカーイベントとして、仙台で「Sendai Micro Maker Faire 2020」を1月25日に開催する(参考記事:「東北初! Sendai Micro Maker Faire 2020」)。
Micro Maker Faireは、休日の1日のみ。出展者数も10~30組のコンパクトなものだ。主催・事務局はオライリー・ジャパン、運営協力に各地のメイカーやコミュニティを想定している。
小さなスペースであれば会場も借りやすく、地域のメイカー仲間を集めて、手軽に実現できそうだ。ぜひ地元でメイカーイベントを開きたい、という方は、問い合わせてみてはいかがだろうか。
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