スポーツの価値を一度疑う。相対的に価値をあげれば市場は広がる
――スポーツの機能的な価値が語られる機会は多くありませんが、なぜでしょう?
土井 みんなスポーツには価値があると盲目的に信じているからです。スポーツが好きで、あまりに信じすぎている。だからこそこれまでのスポーツの価値といえば「勇気や感動」だったわけです。そして、スポーツ市場の中にいる人材は、スポーツに集中して取り組んでいる人が多い。そのため相対的にスポーツを評価する機会が少ないのでしょう。
私がスポーツを始めたのは社会人になった26歳から。スポーツの「自ら課題を発見、設定、改善していく」その終わりのないプロセスに魅力を感じました。学生の頃は部活は入らず、数学に没頭するようなタイプ。だからこそ、客観的にスポーツを捉えることができたのかもしれません。
――スポーツの教育的価値の向上や顕在化は、スポーツ市場にどのような影響を与えるでしょうか?
土井 スポーツを題材にした能力開発スクールが出てくるなど、新しいスポーツビジネスが誕生するかもしれません。さらに、そもそものスポーツ産業自体の価値は大きく上がるでしょう。世の中のトップクラスの方がスポーツ産業へ集まり、他の産業以上の価値になる可能性もあります。
価値とは相対的なものです。だから、他のものと同等、もしくはそれ以上の価値があると認識されれば、スポーツマーケットは拡大していくはずです。
だから今のスポーツにある様々な価値の中で「何の価値をあげようとしているのか」が重要。あらゆるビジネスがスポーツの価値を拡大すれば、市場の拡大にも繋がります。
――私たちはスポーツの友情や感動といった情緒的価値を信じている。しかし、スポーツをビジネスの手段として扱うには、その価値を再構築することが必要そうだ。既存のマーケットの中だけでなく、土井氏のように外からスポーツに触れることで新しく可能性のある価値を見出すことができる。昨今IT企業がスポーツチームへの投資が進むように多種多様な産業からの参入が、これまで見たことのないスポーツのあり方を提示してくれるかもしれない。
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