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日本のテレビ番組は世界に通じるのか? カンヌで見た「日本ドラマの実力」(前編)

2019年05月14日 09時00分更新

 テレビ番組アナリストでMIPTVの取材が長い長谷川朋子氏は、こうリポートしている。「カンヌシリーズを取材するパリ在住の数人のジャーナリストの感想からは"演出"と"登場人物のキャラクター性"に対する評価の高さを感じました。また上映直後に聞いた一般客の感想のなかで印象に残ったのは『主役の潤一は実はいい行いをしていると思ったわ』という感情移入したことがわかる声。フランス人受けする作品でもあったようです」。

「潤一」第一話で妊婦の憂いを好演した女優の藤井美菜さん。

 第1話で妊婦の憂いを好演した女優の藤井美菜さんに話を聞いた。「表面的な二次元の感情ではなく、グレーでも、そこにピンクが混ざっていたり、いろいろな色が持つ深みを持つように努めました。太極拳の先生として好きな運動をしていたのに、妊娠してそれができなくなった変化が受け容れがたくなり、夫への不満も積み重なっていたところに、潤一が現れるのです。複雑な女の“性”の妙をいかに表現するかに意を払いました」。

 4KHDR制作の画質も素晴らしかった。一口に4Kといってもさまざまな画調があるが、『潤一』はひじょうにクリヤーで精細。映画らしい質感も豊富だ。HDRならではの光のうつろいが美しい。「光」は監督の北原栄治氏にとって重要な構成要素だったという。

 「なるべく自然光を活かして撮影しています。その場に光がある時はその光を使い、できるだけナチュラルな空間を構成することに心がけました。暗いところは(人工的に明るくするのではなく)そのまま暗く撮りたいと思っていました。でも映子の感情の揺れ動きと、明確にリンクするというような単純な照明の当て方はしていません。むしろ感情と光が一致しないように、ミステリアスに光を作っています」。面白い。

「自然光」にこだわったは監督の北原栄治氏(左)と、映画のスタイルでつくることにこだわったプロデューサーの河村光庸氏(右)。

 感想にあった、ドラマの枠を超えた映画のようなつくりという点も、狙いだった。河村光庸プロデューサーは「テレビの連続ドラマですが、あくまでも映画のスタイルでつくることにこだわりました。MIPTVをみていてもわかりますが、映画とテレビの作り方の境目が消え、テレビドラマは世界的に、映画的な作り方がメインになってきています。潤一もそんな流れに乗っています。徹底的に映画的な手法を追求しました」。

 作品に対する高い評価は、番組セールスにも好影響を与えているようだ。カンテレ関係者は、「カンヌシリーズのノミネート作品という“看板”はセールスの上でも大きなアドバンテージとなっています。具体的な商談はまだ始まったばかりですが、プラス材料であることは間違ないです」とのことだ。長谷川氏は「NetflixやAmazon作品と並んでカンヌシリーズにノミネートされた作品としてのバリューはセールスの売り文句にもなり、今後の売り込みにも活かされていくはず」と、予想する。

(続く)

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