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ファーウェイ「HUAWEI Mate 20はユーザー体験向上を考えた」開発経緯を聞く

2018年12月01日 12時00分更新

EMUIの開発は音声操作がこれからのカギ

 続いて端末事業本部ソフトウェア部門のプレジデントWang Chenglu氏にはソフトウェア周りの話を伺いました。同氏はファーウェイのスマートフォンに搭載されるEMUIなどの開発を担当されています。

ソフトウェア部門プレジデントのWang Chenglu氏

──御社の端末は独自のEMUIを搭載しています。他社と同じAndroidをベースにしながら、どのように差別化を行っているのでしょうか?

Wang氏 弊社の強みはソフトウェアだけではなくハードウェアとの連携ができることです。HiSilicon(ファーウェイ傘下)のチップセットを採用することで、OS、ドライバー、カーネル、ミドルウェアのフレームワークまですべてを最適化できます。特にミドルウェアにはスマートフォンに必須の通信エンジンも含まれています。

──最新のEMUIのバージョンは、Androidと同じバージョン9となっています。ほかのモデルもOSがAndroid 9にアップグレードしたとき、EMUIも同様なアップグレードをするのでしょうか?

Wang氏 すべての機種のアップグレードは難しいのですが、最低でも30機種以上の対応を目標としています。やはりEMUIの新しいユーザー体験を過去モデルのユーザーにも提供したいと考えております。ちなみに過去バージョンのEMUI 5.0のユーザーは1億以上、EMUI 8.0は1.6億以上です。EMUI 9.0は2億以上のユーザーに使っていただけると考えています。

──Android 9とEMUI 9.0でどのような部分をすり合わせているのでしょうか?

Wang氏 まずピュアAndroidのUIにはデザインのリファレンスがあります。この中から弊社で取得選択したうえで、EMUIを開発しています。たとえば、3つの仮想ボタンが画面内にある標準デザインでは画面内の場所を占有してしまいます。そこでEMUIでは1つの物理ボタンに3つの仮想ボタンを割り当てるようにしました。

 これらのすり合わせは消費者のニーズを考えて行なっています。そして消費者のスマートフォンの使い方への理解を深めたうえでEMUIの開発を進めることで、Googleのエコシステムへの弊社の貢献度も高まると考えています。実際にEMUIの使いやすい点が次のAndroid OSのUIに取り入れられている例も多くあります。

 EMUIではたとえばすべての部品の電力消費を把握したうえで、アプリがどうハードウェアのリソースを求めるかといった点も考えた動作設計を目指しています。なぜなら部品ごとに消費電力は線形ではなく、まちまちな形をとるからです。Wi-Fiスキャンを例にとると、最初の5分間は頻繁に検索しますが、そのあとは感覚をうまくあけるアルゴリズムを搭載しています。この点は今後AIを活用して電力効果を高め、最終的にはアルゴリズムの正確度を100%にしたいと考えています。

Androidと歩調を合わせながら独自の改良を進めるEMUI

3眼カメラがUIに与える影響

──HUAWEI Mate 20やHUAWEI P20 Proではカメラを3つ搭載しています。カメラが増えたことでUIなどにどんな変更を加えたのでしょうか?

Wang氏 カメラはハードウェアとソフトウェア両方のスタックを利用します。また画像処理データの合成にもより多くの演算能力が求められるようになっています。そのためチップセットとカメラとの間でより細かいチューニングが必要になりました。

──最近流行りの縦長サイズのディスプレーが増えたことで、UI上の工夫はありますか?

Wang氏 最適なUIというものはユーザーの使い方で変わるため「これだ」というものはありません。しかしディスプレーの大型化にせよ、折り曲げスタイルのディスプレーが登場したとしても、最終的な目的はシンプルなUIです。フルディスプレー、その全体をユーザーに簡単に使ってもらいたいと考えています。そのためにジェスチャーナビゲーションを取り入れたり、人間工学を参考にツールバーを下に移動させるといった工夫をしています。「戻る」の操作を左右どちらの手でもできるように、EMUI 9.0では画面の左右のスワイプにその操作を割り当てました。

──御社としてはさまざまなUIの工夫をしていますが、現時点でベストなものはどれでしょう?

Wang氏 ユーザー調査では86%の人がジェスチャーナビゲーションを使っており、好評率も90%と高いデータを示しています。また丸いボタンを画面におけるフローティングボタンも使いやすいものだと思います。仮想ボタンを3つディスプレー下に配置しているのも操作上の工夫です。ユーザーの指先がディスプレー上のどの位置をよくタッチしているかというデータは、アルゴリズムで学習していくようになっています。カーネギーメロン大学、トロント大学と協業してこのチューニングの研究もしています。

──HUAWEI Mate 20ではケーブルレスでモニター接続が可能になり、PCライクな使い方ができるようになっています。EMUIのPCへの移植は考えているのでしょうか?

Wang氏 まず誤解を避けたいのですが、スマートフォンをディスプレー出力してデスクトップ環境で使える「PCモード」と、「PCのOS」はまったく別のものです。PCのOSをEMUIにする、という考えは今のところありません。スマートフォンをディスプレーに出力したときのユーザー体験向上を考えてPCモードを設計しています。なお、PCモードは他社のAndroid端末の一部にも採用されます。今後はスマートホーム関連製品にも採用される予定です。

PCモードはHUAWEI Mate 20シリーズでワイヤレス接続可能に。あくまでもスマートフォン向けのソリューションだ

──5Gや音声AIなど、今後の技術発展はスマートフォンUIにどのような影響を与えてくれるとお考えですか?

Wang氏 5Gになればクラウドを使うメリットが今以上に高まります。5Gの特性の一つの低遅延性は、端末からリアルタイム、かつプライバシー保護を行ったうえでデータを利用できるからです。もちろん端末側だけですべての処理ができる、クローズドループも考えています。

 しかし、5Gはいままでの通信方式のアップグレードとは異なり、端末とネットワークの境界を無くす技術と言えます。5Gでは端末とネットワークの違いは、演算能力の差となるわけです。しかもネットワークに分散解析能力が備われば、どの場所でも、どの端末を使ってもよりよい体験が得られるようになります。弊社はクラウドビジネスも立ち上げました。端末、ネットワーク、クラウドを同じアーキテクチャで構成することが可能になるのです。例えば自動車で音楽再生を支持すると自動的に車のスピーカーから再生される、といったことも可能になります。

 音声AIもネットワーク環境が発達すればクラウドを使うことが可能になります。EMUI 9.0でも音声操作を搭載していますが、Mate 20ユーザーのうち10%が日々使っています。ユーザーにとって使いやすい操作方法ですが、まだ利用率は少なめです。しかし新しい機能としてはまずまずといえるのではないでしょうか。先月には音声AIスピーカーも発売しています。

 端末をタッチして操作するのではなく、人と人との間のコミュニケーションのように、音声とイメージを使って操作できる製品が登場する。これが私自身の夢です。ハードウェアの進化によりソフトウェアでしかできなかったことがこれから次々とできるようになっていきます。AI技術が進めばその実現は可能でしょう。人とスマートフォン・機械との新しい交流方法の未来を考えるとわくわくします。

ファーウェイ「HUAWEI Mate 20 Pro」の主なスペック
ディスプレー 6.39型有機EL(19.5:9)
画面解像度 1440×3120
サイズ 約72×158×8.6mm
重量 約189g
CPU HUAWEI Kirin 980
2×2.6GHz+2×1.92GHz+4×1.8GHz(オクタコア)
メモリー 6GB
ストレージ 128GB
外部ストレージ HUAWEI NMカード(128GB)
OS Android 9(+EMUI 9.0)
対応バンド LTE:1/2/3/4/5/6/7/8/9/12/17/18/19
/20/26/28/32/34/38/39/40/41
W-CDMA:1/2/4/5/6/8/19
4バンドGSM
DSDS ○(DSDV)
無線LAN IEEE802.11 a/b/g/n/ac(2.4/5GHz)
カメラ画素数 メインカメラ:約4000万画素(F値1.8、広角)
+約2000万画素(F値2.2、超広角)
+約800万画素(F値2.4、望遠)
/インカメラ:約2400万画素(F値2.0)
バッテリー容量 4200mAh(急速充電 10V/4A対応)
防水/防塵 ○/○(IP68)
ワイヤレス充電 ○(15W、Qi互換)
生体認証 ○(指紋、顔)
SIM nanoSIM×2
USB端子 Type-C
カラバリ ミッドナイトブルー、トワイライト、ブラック


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