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ヘッドフォン祭から探る、2018年のヘッドフォントレンド

2018年05月09日 17時00分更新

平面駆動型なのに2ドライバーを採用!?

 今回、最も驚いたのがメゼ・オーディオの「EMPYREAN」(エンペリアン)である。

 まずデザインがユニーク、素材、加工、仕上げが素晴らしく、装着感も抜群。さらに音がいい。また平面駆動型でありながら、コイルが分割された構成になっているのだ。発売前からハイエンドに必要なカリスマ性を取り揃えている。社長のアントニオ・メゼ氏はデザイナーだけあって、ヘッドフォンの形と素材にはうるさい。今回は、平面駆動振動板に25年間のノウハウを持つウクライナのリナロ社に協力を仰ぎ、両者のコラボによって、この製品が生まれたという。

 コイルを分割した理由は、その形状を最適化することで、低域用と高域用で理想の周波数特性が得られることだ。さらに高域用のコイルの高さを外耳道に合わせることで、耳にロスなく音が届けられるという。高域の特性は110kHzまで伸びており、能率も高い、そしてドライバーの重さはわずか67gと軽量化を実現。また低域も20Hzまでフラットに伸びている。

 一般的にダイナミック型の平面駆動ヘッドフォンは、低域を出そうとすると振動板が大口径化して、磁気回路が重くなり、大きくて重くて、ヘッドフォンアンプを選ぶモデルになりがちである。ところがEMPYREANは平面磁界駆動型・磁力ハイブリッド配列の採用で、軽くて、能率が高く、低音が出る方式を生み出したのだ。

 実際に電圧駆動のヘッドフォンアンプRE・LEAF「E3 hybrid」のモノラル駆動2台を使って聴いてみると、平面駆動型らしい透明感があってハイスピードな音、高域から低域まで違和感なく音のつながりはなめらかだ。もちろん、低域に関しても解像度が高くスピード感があり、量感があるというよりはタイトがイメージ。AUDEZE「LCD-4」が出す量感のある低音とは異なる。価格は40万円以上になりそうだ。

 メゼ・オーディオの発表会では社長兼デザイナーのアントニオ・メゼ氏が登壇して熱の入った解説をおこなった。

 ドライバーを担当したリナロ社のパブロ氏からも技術的な解説が加えられた。

 低域用と中高域用に最適化した形状の2種類のコイルで1枚の振動板を駆動する。

 一般的な平面駆動型では音が外耳道の上にフォーカスするが、EMPYREANならこれを最適な位置に持ってこられるという。

 青が低域用のコイル、黄色が中高域用のコイルの特性。両方を使うことで低域から高域までワイドでフラットな特性が得られる。

 RE・LEAF「E3 hybrid」を2台使って駆動されたEMPYREAN。これは豪華なシステムである。

 フレームはアルミブロックからCNCで削り出されている。

 Mrspeakers「VOCE」が遂に完成。静電型なので専用アンプが必要となる。

 試聴用に接続されていたのは真空管ヘッドフォンアンプのHeadAmp「Blue Hawaii SE」。静電型になっても音の傾向は変わらず、ウォームでなめらか。低域にも量感があり平面駆動型の中でも、かなり音楽性を重視した製品に仕上がっていた。

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