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イーサリアムにも携わった数学者ホスキンソン氏に聞く

仮想通貨、バブルが崩壊しないと本物になれない

2018年03月12日 09時00分更新

2000年前後のドットコムバブル、それと同じだ

──仮想通貨の今後についての意見も聞きたい。

ホスキンソン 将来の暗号通貨を考えるために、歴史を振り返って未来予想をしてみたい。3つのフェーズを考える必要がある。インターネットを例に考えよう。

 第1フェーズでは投資家は存在しなかった。大学や軍事施設など技術に精通している人によって、純粋に技術的な議論だけが重ねられていた。情報を瞬間的にどこにでも送れる技術を社会にどう応用するか、有益な議論が行われていた。古代の文明は大学の周りに都市ができた。知識の集まる場所で物事が発展する、非常に有益な構図だ。

 第2フェーズではインターネットの一般開放が進んだ。AOLやダイヤルアップの時代が来た。ここには人々の期待や不安が入り交じり、資金も大量に流入するようになった。ここで往々にして起こるのは、人々の夢=期待値が技術水準を大きく上回ってしまうことだ。結果、ドットコムバブルが起き、そのバランスが崩れて、バブルは崩壊した。

 現実を突きつけられたあと、第3フェーズでは、より合理的な人々が現れた。フェイスブックやアマゾン、eBay、アリババとなどの企業が協調して社会を変えていく役割を果たした。その結果として初めて、ものの買い方や情報の管理、お金の管理の仕方が変わった。

 暗号通貨はこの3フェーズのうち、フェーズ1からフェーズ2に移ったばかりだ。期待と興奮が入まじり、資金も流入しているが、期待値と現実的な技術が乖離している。これがもう少し続けば、バブルが崩壊する。しかしバブルが崩壊して初めて技術が本当のものになる。この理想と現実の誤差の修正によって、現実的な方法やそのための企業が生まれてくる。結果として、フェイスブックがSNSを作ったように、新しい社会基盤が生まれる。

 インターネットが知識や情報共有を教育機関から解放したように、ブロックチェーンはデータ管理を政府から解放し、世界全体に分散して広げる。いままで知識と情報だけに許されていた自由がマーケットや資本にも広がるようになるのだ。

 ドイツで始まったMIQ(ミューク)というプロジェクト、そのチームの主要メンバーはいまコスタリカにいる。ドイツの寒い場所で、渋滞に悩まされる環境を抜けて、温かい場所で実際にお金を集めて働けるようになった。それが教訓。ジンバブエやガーナに住んでいたとしても、ロンドンや東京などに住む人と同じ条件で、世界中のどこでも、テクノロジーのメリットを享受できるようになっている。

ブロックチェーンや仮想通貨に未来はあるか?

── 話を聞いて未来を感じた。

ホスキンソン そんな未来づくりにみんなが関わっている。これはiPhoneと同じだ。みんなが関わったから、大きな動きができた。最初はこれが、どこでもインターネットにつながる端末で、GPSやカメラ、ビデオを使うための道具だとは思っていなかった。しかし人々が自然と集まってきた、インフラとして有用だったからだ。

 かつてはソフト業界をマイクロソフトが支配していた。作り方や運用方法を彼らが決めて、ライセンス料を徴収した。しかしスマホは人々を開眼させた。新しいことを考えるための機会を作ったのだ。

 同じようにブロックチェーンでも発生当初のビジョンになかった動きが出てきている。先進国で当たり前のことを発展途上国に持っていくインフラとしても非常に有用だと認識されるようになってきた。

 いま使っている、お金や身分を証明する方法が本当に最善のやり方なのだろうか? いま使っているのは前からあったやり方と言うだけで、実はもっと賢いやり方ができるかもしれない。新しい目線で物事を見られる点が、ブロックチェーンがもたらす一番の可能性だと思う。

 技術が転換すれば、小さい会社が大企業に対抗できる。iPhone以前のアップルは、マイクロソフトと比べて、とても小さな会社だった。しかしそれが逆転した。それ以前の市場をどのぐらい掌握しているかははあまり関係がない。スタートアップ企業も同様で、既存のインフラ企業と立場は違うが、成長の可能性を秘めていると思う。

 実は同じことをマイクロソフトもしてきたのだ。1970年にソフトやハードと言えばメインフレーム。マイクロソフトは小さくて若い会社だったが、それを覆した。効率的でいいアイデアを持っているだけで巨大企業を作れたのだ。だから、スモールな大阪の会社でも、世界を変えられる(笑)。がんばれジェレミー。たこ焼きサイコー!

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