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“音声のGoPro”を目指すBONX アウトドアスポーツで世界に新しい通話体験を

2015年11月30日 12時00分更新

日本からハードウェアスタートアップをやる強みを生かしたい

 デュアルモードと音声認識の技術が見えたあとは、原理検証を求めた。今年春にスキー場で行ったテストでは、場所によって電波の入り方がまったく違った。通常のコースのぎりぎりまで確認してみたが、当初は遅延がひどく使えなかったという。

 「あくまでスマートフォンに依存するため、100%どこでも話せますとは言えない。ケータイとしてのトランシーバーのベストを尽くしている。市場にあるもののなかでは一番いいものだという自負がある」

 出荷直前となる現在は、製品の最終調整段階となっているが、深圳の製造元へは月イチで誰かしらが行っている。

 「モノの話なので、対面でないといけない。シリコン金型は、都合6回作り直した。今は色で苦労している。なかなか思ったとおりには上がってこない」

試作を重ねたイヤーパッド。

 いかに人の耳にフィットさせるかにもこだわっており、個人個人の違いに合わせてバリエ―ションをそろえている。コスト的には安いが、3Dプリンターではできないためシリコンの金型を出すのも一苦労だという。

 「このような部分の製造でも、日本では受けてくれるところがいなかったこともあった。深圳の技術が世界のトップなのもわかる」と宮坂代表。とはいっても、日本産にこだわっていないわけではない。

 「本当は日本からハードウェアスタートアップをやる強みを生かしたい。今回、ソフトウェアは国産で日本の優秀なエンジニアの技術を生かせた。次に挑戦する部分はソフトウェアだけでないテクノロジーで日本の技術を生かしたい」

 すでにチームメンバーには、新たに日本の工場のネットワークに詳しい人材を招いているという。次のバージョンはハードウェアでも国内の強みを生かすつもりだ。

あくまでエンジニアチームは必要に応じた組成

 昨今、発売前でのマーケティングの側面も含めたクラウドファンディング実施は一般的だが、BONXの場合、実はそのスピードも相当に素早い。10月にクラウドファンディングで公開を行った時点で、すでに1000個単位での量産が準備できていたという話で、12月にはユーザーのもとへ製品が届く予定となっている。

 ソフトウェア・ハードウェア・ネットワーク・データマネジメントを高度に統合し、BONXは開発から量産まで、創業から約1年でたどりついたが、その秘訣はどこにあるのか。

 「シビアな言い方だが、スタートアップの貴重なリソースは我々の時間。チームにとって正しい意思決定をいかに速くできるかが大事だが、そこはある程度時間をかけないと正しくはできない」と宮坂代表は語る。

 少人数の初期スタートアップが人を増やす場合、迷いやコミュニケーションにかかるコストは大きい。そのため、あくまでエンジニアチームは必要に応じた組成にしており、無駄なところは徹底的にはぶいているという。

 「(優秀なフリーランスを集めるのは)スピードを買っているという言い方もできるが、優秀な人をハイアするのも実際コストが高い。今後は段々変わっていくとは思うが、現段階ではこのようなチーム組成となった形。統計を正確に見たわけではないが、スタートアップがだめになる理由はマーケットが半分で、残りは人。シード期でのチーム分裂が大きいはず。ソフト・ハード・知財などのコントロールは共同代表である楢崎(共同創業者CTOの楢崎雄太氏)に任せ、組織・ファイナンス・マーケティングを自分が見るように分けている」

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