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対談・Planetway CEO 平尾憲映×SELTECH元代表 江川将偉 第2回

グーグルAI対抗「拡張人間」開発へ

2018年12月11日 11時00分更新

文● 盛田 諒(Ryo Morita)編集●ASCII
提供: プラネットウェイ

 SELTECH代表取締役の江川将偉社長が年内に会社を畳み、プラネットウェイに入社する──報せはセキュリティ業界のあいだでちょっとした騒ぎになった。江川社長はAI・IoT領域におけるセキュリティの若き俊英だ。2017年にはG7イノベーター会議(I7)に日本代表として出席している。業界での信頼は篤く、「セキュリティ業界の守護神」と呼ばれたこともある。

 一方、プラネットウェイはエストニア生まれの情報インフラを扱うスタートアップ。保険会社と医療機関のような企業同士が機密情報や個人情報を安全にやりとりするためのセキュリティ対策を得意とする。なぜ江川社長は会社の看板をおろしてまでプラネットウェイへの入社決めたのか。理由はプラネットウェイ平尾憲映代表が「同じ山」に登っていることに気づいたからだという。(全3回)

Speaker:
プラネットウェイ 代表取締役CEO
平尾憲映

1983年生まれ。エンタメ、半導体、IoT分野で3度の起業と1度の会社清算を経験する。学生時代、米国にて宇宙工学、有機化学、マーケティングと多岐にわたる領域を学び、学生ベンチャーとしてハリウッド映画および家庭用ゲーム機向けコンテンツ制作会社の創業に従事。在学時に共同執筆したマーケィングペーパーを国際学会で発表。会社員時代には情報通信、ハードウェアなどの業界で数々の事業開発やデータ解析事業などに従事。

SELTECH 元代表取締役社長
江川将偉

1977年生まれ、カリフォルニア州立大学にて、航空宇宙工学専攻。半導体商社のエンジニア、セールス及びマーケティング職を経て、2009年株式会社SELTECH創業し代表取締役に就任。

AIに仕事が奪われるなら、人間がAIを超えていけばいい

江川 わたしは会社以外にやりたいことをいくつかもっているんですけど、そこも平尾さんと感覚値が似ているなと思うところですね。平尾さんは脳にチップを埋めるインプラントのビジネスを考えてる。わたしも近いものを考えていて。アミノ酸というか高分子にデータを打ち込んだものを注射して、脳に定着させれば人の記憶は拡張できるなあと。「これ打てば明日から英語ペラペラだぜ」みたいなものを作ってみたい。人間自体が光るバイオフォトン(生物発光現象)を20~30年前くらいからずっと調べていて、「これやりたいな」と思ってるんです。映画『エクス・マキナ』が出てきたとき「おー、これこれ!」なんて思ったりして。

 セキュリティとはまたちがう事業ですけど、いつかは統合していくものだろうと思うんです。今はAIやってるからセキュリティが必要だよねという道がある一方、人間自身が拡張するような道があっても悪くはないんじゃないかと。そういうことを平尾さんと話す中で、すごく考え方が似ているなあと。最近なら量子コンピューターが見え隠れしてきているんで、バイオフォトンと量子コンピューターをつないだ新たなビジネスもやりたいなあと話してたら、また会話が合ってきた。「それはそれでラボ(研究所)を作ってやっちゃってもいいかな!?」という話になりましたよね。

平尾 将来的には研究開発センターをつくって江川さんがトップになってもいいと思いますよ。ブレインチップを作って人間のケイパビリティを向上させるというのは以前から言ってきた話ですしね。

江川 人間がこの数千年でどれだけ進化したかといったら、せいぜい文化がデジタル化していったくらいじゃないですか。人間そのものがエクステンド(拡張)できる世界ができてくるだろうと。そっち側に進んでいっているんですね。そこにこそセキュリティが必要になる。人間がハックされたらすべてが終わるわけですから。

平尾 そういう世界が来るのは10~15年後くらいですかね。ウェアラブルはもうすべて古いわけですよ。

江川 シンギュラリティが2045年とよく言うじゃないですか。そういう人たちは「AIに仕事が奪われる」と言う。でも逆に、人間がAIを超えていけばいいという考えがあるんじゃないかと思うんですよ。

平尾 人間をアップグレードしてAIと戦う人間拡張の領域ですね。

江川 シンギュラリティはみんな言ってますからね。それなら人間の方をどうにかしてあげないといけない。

平尾 グーグルと逆の発想ですよね。AIに奪われるというのではなく、ぼくらが人間としてのケイパビリティを上げていこうと。

江川 結局シンギュラリティって中央集権型の人がやるビジネスですからね。AIなんて「人間からいっぱいデータを集めて中央集権化したらすごいものができた」という考えでしょう。プラネットウェイは逆に、人の能力をすごくしようと考えるわけですよね。だから「人」を強くする側にいようと。シンギュラリティを恐れている人たちの世界の情報は「向こう側」。だからこっちはブレインマシーンインターフェースなんかを活用しながら、脳とどう向き合うかというのが大事になっていくだろうと思うんです。

平尾 人間が拡張されるようになったとき、貧富によって差がついてしまう「拡張格差」が広がらないようなステップも踏んでるんですよ。

 データ主権を個人に返すことで貧困をなくす。ある一定数の情報を出した人は生活に必要最低限のものを与えられるというベーシックインカム的な考えです。ぼくらがめざしているのは「情報において平等な社会」なんです。どんな人間も情報はもっている。その情報をフル活用できる社会が実現できると、まず貧富の差がなくなります。スタート地点がイコールになると。その上で優劣をどうするかという競争は起きるでしょうけど、今のようにビル・ゲイツとホームレスみたいな差は起こりえないですよ。

 そうしてフラットになったところでいかに勝負するか。いや、勝負というより個性ですね。人間の個をどう磨くか。より自分の好きなものを強みとして生きていけるような世界にする。これはもう10年前からずっと言っている話です。

江川 まあ個になったとき、その人が「豊かだ」と思えるのはその人自身ですからね。貧富の差って、わかりやすくいえばホワイトカラーとブルーカラーでわかれますよね。それを統計的にやると、偏差値の差、そして親の世帯収入が750万円以上かどうか、なんて話になるんですけど、そもそもその人が自分を「豊かだ」と思えるかどうかが大事なわけですよ。浮浪者でも豊かだと思っている人は豊かだから。人間1人1人が「いい人生だな」と思える人生を送るためのプラットフォームはどう作ればいいのかと。その課題には、ずっと向き合っていたいと思いますね。

第3回につづく

(提供:プラネットウェイ)

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