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グーグル「Pixel」の発表会を見て感じた、アップルやマイクロソフトとの共通点

2018年10月11日 12時00分更新

スマホとしては平凡にも思えるPixel 3だが
実際にプレゼンを見ていると考えが変わってくる

発表会の冒頭で示された「AI+Hardware+Software」という文字。でも同じような内容を語っているのはグーグルだけではない

 グーグルは11月1日に、日本で「Pixel 3」を発売する。

 グーグルは、初代PixelとPixel 2では日本投入を見送っていたが、今回、日本市場向けだけにFeliCaに対応させた。また、SIMフリーだけでは普及に限界があるとみて、NTTドコモとソフトバンクでの取り扱いが決まっている。それだけ、日本市場でPixelブランドを育てようという本気の姿勢が伝わってくる。

 ただ、5.5型の「Pixel 3」、6.3型の「Pixel 3 XL」の第一印象は「ノッチも普通だし、しかも背面カメラはひとつだけ。どこにでもありそうなイマドキのスマホ」に過ぎない。正直言って、ワクワク感のかけらもないのだ。

ノッチ付きのディスプレーはよくあるスタイルで、カメラもシングル。ここまででは正直パッとしない

 ただ、プレゼンやデモを見ていると、「やっぱりグーグルってスゴイかも」と考えを改めたくなってくるから不思議だ。

カメラに映った画像やマイクに入ってきた音
それらをAIによって処理し、提案までしてくれる

 Pixelの凄さといえば、やはりAI部分だ。

 今回からGoogleレンズが統合され、カメラのUIから、レンズに写るURLやメールアドレス、電話番号などを検出して、検索できるようになっている。また、植物や動物の種類を調べたり、サングラスや服の画像から検索できるようになった。

 また、撮影時に目をつむってしまってしまっても、笑顔のときのカットも合わせて記憶しておいてくれるので、ベストショットを抽出するということも可能だ。暗い部分でも高画質の撮影ができたり、カメラが1つでも高画質なズームが撮影できたりするのだ。

撮影した瞬間の前後の画像から、犬も含めたみんなの笑顔が揃っている写真をリコメンドしてくれる

 さらにはBGMなど音楽が鳴っている場所にPixelを置いておくと、その曲がなんという曲名で誰が歌っているかを検索して、画面上に表示してくれるという機能まで備えている。

 あらゆる場所で、AIの力が作用しまくっているのだ。

 Google Pixel担当シニアディレクターであるナンダ・ラマチャンドラン氏のプレゼンの中で、印象的だったのが「AI+Hardware+Software」という資料だ。

 検索やGoogleフォトによる膨大なビッグデータを武器にAIの分野をリードしているグーグルが、AndroidのOSを作り、さらにHTCのスマホ事業を手中に収めて、Pixelスマホを開発、製造し始めている。

 まさに「AI+Hardware+Software」の集大成がPixel 3というわけだ。

OSとハードウェアの分業はもはや限界
OSを持つ会社がハードも作る時代は必然か!?

 ただし、この「AI+Hardware+Software」という組み合わせ、つい最近もどこかの取材で聞いたことがあるなと思い出してみたら、1ヵ月前のアップルスペシャルイベントだった。

 彼らもiOSを自分たちで作り、iPhoneというハードウェアを設計し、さらにGPUやISP、ニューラルエンジンなども自分たちでデザインしている。まさに「AI+Hardware+Software」によって新しいiPhoneは作られているのだ。

 あれっ? まだどこかで聞いたことがあるなと記憶をたどってみたら、数日前に品川の日本マイクロソフトで、マイクロソフトのCPOであるパノス・パネイ氏もインタビュー取材で同じようなことを言っていたのだ。

 Surfaceはペン入力が売りの一つとなっているが、まるで紙にペンで書いているような感覚で文字が書けるのはなぜか? という質問に対して「マイクロソフトのソフトウェア部門とハードウェア部門が一緒になってSurfaceを開発しているからだ」という答えが返ってきた。

 また、Surfaceでは電源管理などにAIが用いられており、さらにOfficeにおいてもAIがプレゼン資料作成のサポートをしてくれるように進化している。

 つまり、マイクロソフトのものづくりも「AI+Hardware+Software」というわけだ。

 グーグルやマイクロソフトが、いつの間にか自分たちでハードウェアの製造に着手し、自社ブランドのスマホやパソコンを売り出してから、結構な年数が経過している。参入当初は「ほかのスマホやパソコンメーカーとの関係は大丈夫なのか。製品としてはちゃんとしたものなのか」と心配していたが、他のメーカーともなんとなく住み分けがされつつあるだけでなく、製品としてもかなりいいものが相次いで登場している。

 ただ、さらにこれからAIで勝負となると、一般的なスマホやパソコンメーカーでは太刀打ちできない領域での戦いとなってきそうだ。

 もはや、OSとハードウェアメーカーが分業で製品を作るのに、限界が来ているのかもしれない。アップルのiPhoneやiPadのようにOSとハードウェアが一体となり、そこにAIが介在するような製品を作るにはどうしてもOSを作ってきた企業がハードウェアの製造に乗り出す必要があるのだろう。それぐらいしないとアップルとは戦えないというわけだ。

 今後数年、スマホやパソコンは「AI+Hardware+Software」での勝負になることは間違いないわけで、そうなるとアップル、グーグル、マイクロソフトの三つ巴の戦いが繰り広げられることになりそうだ。


筆者紹介――石川 温(いしかわ つつむ)

 スマホ/ケータイジャーナリスト。「日経TRENDY」の編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界の動向を報じる記事を雑誌、ウェブなどに発表。『仕事の能率を上げる最強最速のスマホ&パソコン活用術』(朝日新聞)など、著書多数。

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