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MMDで動画を作成や書き出しは、デスクトップ向けCPUの方が速い

デスク/モバイル向けCPU搭載17.3型ノートPCを実作業で比較、動画など重い作業ほど差が出る

2018年10月06日 10時00分更新

モバイル向けCPUを搭載する「NG7510」シリーズと、デスクトップ向けCPUを搭載する「NG7620」シリーズをチェック

 マウスコンピューターのクリエイター向けパソコンブランド「DAIV」シリーズには、17.3型ノートPCが2モデルある。デスクトップ向けの第8世代CPUのCore i7-8700とGeForce GTX1080を搭載する「NG7620シリーズ」と、モバイル向け第8世代CPUのCore i7-8750HとGeForce GTX1070搭載の「NG7510シリーズ」だ。

 Core i7-8700を搭載するNG7620シリーズは、発熱量の多いCPUのとGPUをしっかりと冷やす分、厚みがかなりある筐体であまり携帯性は考えられていない。

 Core i7-8750Hを搭載するNG7510シリーズは、モバイル用のCPUのため筐体も薄く仕上がっており、一応持ち運にを考慮されている感じがある。

 筐体の材質にも差があり、NG7620シリーズのパームレスト部分、キーボード面はプラスティック製になっているがNG7510シリーズのキーボード面は金属製になっている。金属製のほうが放熱性に優れている気がするが、実際に使ってみるとNG7510シリーズはキーボード面、とくに左上部分が熱くなるが、NG7620シリーズはファンが回ってもそれほど熱は感じない。CPUの発熱量はデスクトップ向けのCPUを採用しているNG7620シリーズのほうが高くなるはずだが、本体の放熱効果はかなり高いと思われる。

 試用機は、Core i7-8700、GeForce GTX 1080(8GB GDDR5X)、16GBメモリー、512GB SSD(M.2接続、起動ドライブ)、1T HDDを搭載する「DAIV-NG7620S1-SH5」と、Core i7-8750H(2.2GHz)、GeForce GTX 1070(8GB GDDR5)、8GBメモリー、240GBSSDを搭載する「DAIV-NG7510E1-S2」。前回はベンチマークソフトなどを使用して比較したが、今回は実践でのテストを実施し、それぞれでかかる時間を計測してみた。

あまり差はなし? Adobe Photoshop Lightroomで現像処理を試す

 まずはAdobe Photoshop Lightroomで現像処理を実施。500枚のRAWデータを用意し、ightroomに読み込んでほぼそのままPSD16bit形式での書き出し時間を計測した。

DAIV-NG7620S1-SH5で書き出し

DAIV-NG7510E1-S2で書き出し

 ともに稼働状況がわかるように、タスクマネージャーを表示させて処理を開始。Cドライブ(SSD)から読み込んだRAWファイルを、Cドライブ(SSD)とDドライブ(HDD)に書き出す時間を計測。複数回計測したが多少のブレはあるものの、ほぼ平均値を出してみた。

書き出しの時間
機種名 DAIV-NG7620S1-SH5 DAIV-NG7510E1-S2 DAIV-NG7510E1-S2(GPUをディスクリート動作に切り替え)
Cドライブへの書き出し時間 約11分 約14分 約12分
Dソライブへの書き出し時間 約55分 約60分 約60分

 以上のような結果になった。500枚でこの時間の違いは思ったよりも差は少ない印象だ。ブレ幅の最短時間と最長時間だとほぼ差はないといってもよいくらいだ。当然ながら数秒でも早いほうが次の作業に入れるので短いに越したことはないが、処理能力の大きな違いは見られない結果になった。

 またDドライブへの書き出しはどちらも極端に遅くなる。上の写真はDAIV-NG7510E1-S2でのDドライブへの書き出し中のスクリーンショットだが、DAIV-NG7620S1-SH5でも同じ現象が起きている。現像処理開始からCPUもDドライブも100%にすぐ上がり、しばらくするとCPUの動作が上がったり下がったりし始める。Dドライブは100%のままなので、これは書き込みが遅くて処理待ちになっていると思われる。なお、上のスクショで確認できるがCドライブへの書き出しでも同様にディスクアクセスが100%まで上がりきっている状態で、たまにCPUの動作が低下するときもあったので、よりアクセス速度の早いSSDを用いればどちらの機種も処理時間の短縮は期待できると思われる。

 ちなみに採用しているSSDとHDDは、デバイスマネージャーを見る限りでは2機種とも同一のSSDとHDDが採用されているようだ。参考までにディスクアクセスの速度を測定した。

DAIV-NG7620S1-SH5のCドライブ

DAIV-NG7620S1-SH5のDドライブ

DAIV-NG7510E1-S2のCドライブ

DAIV-NG7510E1-S2のDドライブ

 決して早いわけではないが、そんなに遅いディスクというわけではない。しかし写真の処理をする場合、CPUやGPUを重視するよりも、より多くのメモリーを搭載するのと、早いディスクを使うほうが効果的と思われる。デスクトップ用のCPUや高性能なGPUを採用していても、Lightroomではその恩恵はあまり大きくなさそうだ。

 なお、2台とも書き出しをしている最中は、たとえDドライブへの書き出し中にCPUの使用率が100%になっていない状態でも、マシンの動作状態はかなり重くなる。作業用として流していたBGMが途切れたり、カーソルの動作も飛び飛びになるので、同時にほかの作業をするのは厳しいかもしれない。

MMDで動画を作ってみた

 Lightroomでの動作で差を感じられなかったので、Photoshopでも同じような結果になるのは目に見えている。そこで次は少し目線を変えてMMDの動画を作ってみた。MMDをいじるのは趣味レベルなので、おかしな部分や稚拙な面もあるがご容赦願いたい。

 今回はテストが目的なので、簡単に流し込みの動画を作成してみた。始めは外付けのストレージにデータを入れて片方で作っておき、同じデータをもう片方で動かして計測すればいいと思ってたがうまくいかず、2台で並行して作業を実施したため、難しい作業は組み込めなかった。

 まずは同社のゲーミングパソコンのキャラクター「Tuneちゃん」を3人ほど読み込んで、それぞれにフィギュアのような質感になるエフェクトを適用。配布されているモーションデータを割り当て、それぞれのTuneちゃんの手の動きに合わせて光がキラキラ流れるエフェクトを追加した。加えて、床は鏡のように反射するエフェクトを入れておき、背景は黒にした。

DAIV-NG7620S1-SH5で作業

DAIV-NG7510E1-S2で作業

 上のスクショは、動作のプレビューをしているところだ。こちらも右にタスクマネージャーを表示し、動作状態を確認しながらおこなった。

 DAIV-NG7620S1-SH5はCPUがほぼ35%前後、GPUが45%前後で動作。CPUはターボブースト状態になっている。対して、DAIV-NG7510E1-S2はCPUがほぼ60%前後、内蔵GPUが20%、ディスクリートGPUが40%くらいで動作していた。

 またMMDではfpsを無制限に設定しているが、スクショではDAIV-NG7510E1-S2が30fps、DAIV-NG7620S1-SH5は47fpsと確認できる。動き方の差でfpsは変わってくるが、概ね1~3割くらい差が出ているのが確認できた。

 なお、モデル3体くらいなら操作には影響が出ないものの、モデルを5体並べるとカーソルの動作が重く感じたり飛び飛びになることがあった。これはどちらの機種でも同様の症状が出たがDAIV-NG7620S1-SH5のほうが多少スムースだった。

 MMD上でプレビューの確認ができたら、次は書き出し。MMDではAVI形式でしか書き出せない。ちなみに無圧縮ではフルHDでの書き出し中に2台とも止ってしまったので、圧縮コーデックを利用して書き出している。

書き出しに圧縮コーデックを採用。デフォルトでは少ないがMMD利用者御用達の「Ut Video Codec Suite」をインストールし、「UtVideo RGB DMO」で書き出しを行った

 今回の動画は3分38秒ほどのダンス動画で、フレーム数は5700。フルHD・30fpsで書き出しを実施した。結果、所要時間はDAIV-NG7620S1-SH5が3分2秒、DAIV-NG7510E1-S2は4分26秒となった。

 この作業では1.5倍に近い差が出ているので、より長い動画やエフェクトを盛った場合にはかなりの差が出てくると思われる。ちなみにここで書き出したAVIファイルは約8.2GBほどの大きな動画なので、次はこれをMP4にエンコードしてみた。

DAIV-NG7620S1-SH5での「XMedia Recode」の終了時の画面

DAIV-NG7510E1-S2での「XMedia Recode」の終了時の画面

 エンコードにはフリーソフトの「XMedia Recode」を使用し、フルHDのままAVIからMP4への変換時間を計測した。設定条件は同一にしてある。DAIV-NG7620S1-SH5は3分41秒、DAIV-NG7510E1-S2は4分15秒、という結果になった。エンコード中のCPUやGPUの動作はDAIV-NG7620S1-SH5でCPUが70%前、GPUが30%前後、DAIV-NG7510E1-S2でCPUが80%前後、GPUが30%前後で動作していた感じだ。エンコード中でもファイル操作などは問題なく可能で、作業用として流していたBGMも途切れなかった。

 なお、エンコードやMMDからの書き出し時にはディスクアクセスは100%まで上がらず、比較もしてみたがLightroomのように書き込み先でスピードが大きく変わることもなかった。

 写真をあつかう場合にはあまり性能差を感じなかったが、動画作成時やエンコード処理ではそれなりにスペックどおりの差を感じられた。3Dや動画がメインならDAIV-NG7620S1-SH5DAIV-NG7620S1-SH5の差はあつかう動画や素材が大きくなればなるほど差も大きく広がっていくと思われる。

作業内容や使用場所でチョイスしよう

重い作業がメインとなるか、現場に持ち運んで使うなどどこで使うマシンなどで、クリエイターの理想の1台を手に入れよう

 今回改めて感じたのは、写真をメインにあつかうならCPUやGPUよりもストレージのほうに気をつけたほうがいいだろうという点。今回の2機種はCドライブに512GB SSDがM.2 SATA3で接続されているが、オプションではより高速なM.2 PCI Express x4 接続のSSDも選択できる。またDドライブには1TB HDDが備わっているが、こちらもSSDに変更可能だ。2機種ともに最大でドライブを4基搭載可能なので、写真をメインにあつかいたい人なら高速なSSD盛りだくさんな構成にすれば、かなり快適な作業環境を作れるだろう。

 DAIV-NG7620S1-SH5DAIV-NG7620S1-SH5は、持ち出すにはそれなりの覚悟が必要だが、カメラマンとしてロケ先や外のスタジオ使用時にしっかりとした構成のマシンをせっちできるのは喜ばしい。デスクトップパソコンでも車などであれば持ち運べるが、一旦設置したあとに多少の移動などでもかなりの作業がともなう。ノート型ならロケ現場での移動も楽にこなせる。

 写真をあつかう限りでは、今回の検証の範囲ではそこまで差は感じないので、携帯性を考えてDAIV-NG7620S1-SH5を選択するのはありだ。ただ、今後動画の編集等も含めた作業の可能性があるならできるだけ高スペックDAIV-NG7620S1-SH5のほうが安心できるだろう。

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