今回紹介する「Moss」は、小さなかわいいネズミのキャラクター「クイル」とプレイヤー自身が協力し、さまざまな仕掛けを解きながら物語を進めていくアクションアドベンチャーパズルゲーム。2018年2月27日にPlayStation VR（PSVR）向け配信が開始され、わずか2日間で米国のPSVRゲームダウンロードランキングの月間トップ10に入るなど、人気を博した作品だ。6月にはHTC VIVE／Oculus Rift対応版がリリースされ、こちらもSteamなどで高い評価を得ている。
舞台となるのは精巧なミニチュアのような3Dで描かれた世界。クイルが不思議なガラスの秘宝を見付けたことから冒険の旅が始まる。
ミニチュアのような世界
プレイヤーは普通のアクションゲームのようにクイルを操作するほかに、画面内に表示される半透明の珠を操作して、これに反応するオブジェクトにさまざまな干渉を行なうことができ、それによってクイルと共同で道を切り拓いたり、難所を乗り越えたりしていくというのが本作の最大のポイントだ。序盤においては足場を動かして道を作るといったシンプルな干渉だが、ゲームを進めると徐々に新たなギミックが出現し、パズル的な発想と試行錯誤で仕掛けを解いていくことになる。
プレイヤーは空中に浮かぶ珠として世界に干渉する
このプレイヤーによる世界への干渉は、作品の世界観においても大きな意味を持つ。本作は本に描かれた世界に入り込むような形で始まり、物語の節目にも絵本を朗読するかのようなシナリオパートが挟まる。そこでは「予言者」によってプレイヤーは「読む者」と呼ばれ、また「読む者」を認識できるキャラクターにとっては、プレイヤーは巨人として見えていることも示唆される。
絵本に書かれた世界に入り込むと同時にそれを読むというメタな世界観
すなわち、プレイヤーはミニチュア的な作品世界を見守る存在として「確かにそこにいる」のだ。本作はキャラクターになりきり、主観的に世界へ没入するタイプのVR作品ではないが、それとはまた違った形で作品世界に実在している感覚を得ることができる。パズル的なギミックを成立させることが可能な俯瞰視点でありつつ、作品世界への没入感を得られるユニークな構成だと感じさせられた。
さまざまな世界の仕掛けを操作してクイルを進める
クイル自身もプレイヤーの姿を認識しているようで、直接言葉を交わすことはないが、プレイヤーの手助けが必要な場面ではこちらを振り向いて催促してきたり、道を作ってあげたら身振り手振りで感謝されたり、クイルが行けない所へ移動させようとすると「ちがうよ！」とばかりに首を振ったりとコミュニケーションを取ってくる。一緒に旅をしているうちにどんどん愛着が沸いてくることだろう。
美しい背景美術も大きなポイント
ゲームを進めると敵も登場し、クイルが剣で戦うことになる。さらには敵をも利用する仕掛けや、立体的に入り組んだ場所など、仕掛けの難易度はどんどん上がっていく。クイルを操作し、仕掛けを動かし、さらには敵をも制御して…… と、脳と手をフルに使って仕掛けを解いていくのはなかなかの手応えだ。
ダメージを受けたクイルを回復するのもプレイヤーの仕事となる
クイルがダメージを受けた際、珠をクイルに重ねるようにしてダメージを回復させるのもプレイヤーの重要な役割。回復している間はクイルは動けないので（この間は宙に浮いているのだが、その姿もちょっとかわいかったりする）、戦闘中であればタイミングや位置取りもポイントだ。クイルが飛び乗れるよう足場を調整しつつ戦うような場面もあり、クイルとプレイヤーの共闘アクションとしてもやり応えのあるものとなっている。
本作は、かわいらしいキャラクターをはじめとした親しみやすいグラフィックでとっつきやすさを感じさせつつ、アクションパズルゲームとしては本格的な難易度で、マップ全体を見渡しながら考え込むような場面もあった。とはいえ1マップ内で仕掛けが完結しているなどこの手のゲームとしての勘所もしっかり押さえてあり、新しい要素が登場するタイミングなど、全体的なステージ設計のクオリティも高い。ちょっとわかりにくい所にクリアに必須ではないアイテムが隠されていたりとチャレンジ要素も充実している。俯瞰視点でありつつVRならではのプレイ感を世界観とマッチさせながら実現しているのも見どころで、じっくり腰を据えてプレイできるVRゲームとしてオススメの一作だ。
© 2018 Polyarc, Inc. All rights reserved. Moss is a trademark of Polyarc, Inc.週刊アスキーの最新情報を購読しよう
