2018年07月25日08時00分

メルカリ「ライブコマース定着させたい」盛り上がる市場の今を知る

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 インターネット上で動画のライブ配信を行ない、発信者と視聴者がコミュニケーションを取りながら商品を購入するライブコマース。中国をはじめ、海外で大きな市場を形成し、何億も売り上げるインフルエンサーも登場しているライブコマースは、日本でも複数のサイトがサービスを開始し、今年はさらなら盛り上がりを見せている。

 7月13日に開催された「Live Commerce Show 2018」は、そのライブコマースを支える動画配信サービスを運営している企業が集まり、さまざまな実例やライブコマース最新動向のレクチャー、そして今後のビジネスについて意見交換を行なう場として、満席となった会場は大きく盛り上がった。

 今回は、このLive Commerce Show 2018で行なわれたメルカリ 事業開発部の石川佑氏による講演と、石川氏のほか、Candee 上席執行役員の鍛治良紀氏、STARP 代表取締役の渡邊裕馬氏が登壇したパネルディスカッションについてレポートする。

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満席の中、大盛況で開催されたLive Commerce Show 2018

ライブコマースを定着させたいと語るメルカリ 石川氏

 2017年7月にメルカリアプリ内でライブコマースのC2Cサービスを開始したメルカリは、2017年12月に法人も利用できるようになり、多くの商品が販売されるようになった。この講演で石川氏は、ライブコマースの具体的な事例や課題などを紹介した。

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メルカリ 事業開発部の石川佑氏

 直近の事例として紹介されたのはライザップやMARK STYLERといった企業の8時間ライブ配信。企業やブランドなどを入れ替えながら、それぞれが商品を紹介し、視聴者からの質問に答える形式で行なわれたライブ配信の実際の撮影風景などを紹介。石川氏は「ライブコマースというとスタジオなどを借りて、すごい撮影機材で行なっていると思われがちだが、実際はスマホ1台でできる」と、その簡単さをアピール。

 また、商品説明を行なう出演者についても、「インフルエンサーやプロの販売員を雇って配信しないといけないと考える人や企業が多いが、そういう方をアサインする必要はない」と説明し、事例として紹介した配信でもその企業の社員が行なったことを説明。「ライブコマースは熱意が大事。販売したいという熱意、商品をしっかり説明できる熱意。それを視聴者であるお客に伝えることができるのがライブコマースで、ただ商品紹介するだけのインフルエンサーなどよりも従業員のほうが適している」と、敷居が低いことを説明する。

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ライブコマースの実際の撮影・配信風景

 ライブコマースを検討している事業者へは、事業者から見たライブコマースのセールスポイントを提示した。まず挙げたのはコスト効率の良さだ。従来であれば、その商品を売るために撮影や紹介原稿の用意、購入を促すLPページの作成や検索サイト対策、あるいは広告出稿などの手間が掛かったが、ライブコマースではスマホ1台で配信、そして販売ができ、視聴者からの質問に答える形となるので説明ページなどを用意する必要がない。石川氏は「商品を販売するまでの途中に掛かるコストが省けるので、コスト効率がいい」と語る。

 また、従業員を出演者とすることで、視聴者に見られるという意識や、商品に関する理解を深めるといった準備によってモチベーションが上がる効果もあったとのことだ。

 さらに、お客が購入する前にどのような部分をポイントとしているかがわかるといった、マーケティングの観点でも使えると語り、ライザップのライブ配信時の事例を紹介した。その時販売したのは未発売のEMS新商品で、ライバル商品に比べて設定項目の多さや価格の違いなどを訴求ポイントと考えていたが、ライブコマースでの質問はそのようなことではなく、実際に使用した際にどのような効果が得られるかに集中しており、販売戦略の見直しに役立ったことが紹介された。

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事業者から見たライブコマースの魅力

 逆に、配信者から見たライブコマースの魅力としては、1つ目にライブコマースならではのコミュニケーション、2つ目にテキストでは伝わらない商品の魅力の伝達、3つ目に配信者自身にファンがつく点の3つの魅力を提示。これまでのコマースサイトではできなかった、出品者と購入者のインタラクティブなコミュニケーションが行なえることによって、必要な情報を明示でき、商品のディテールなどをリアルタイムで見せられることが魅力だと語る。

 通常はこの商品だから買う、このブランドだから買うという行為も、ライブコマースではこの人が紹介したから買うという形となる。石川氏は「いままでのような契約的な買い方ではなく、信頼関係が購買に結びつく」と説明し、そのファンの形成が魅力だとした。

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配信者から見たライブコマースの魅力

 最後に、「ライブコマースを日本で定着させたい」という石川氏は、スマホ1つで簡単にでき、コストもかからないという点を再度アピールし、「ライブコマースは難しくない。まずはやってみましょうと伝えたい」と講演を締めくくった。

ライブコマースはただ物を売るためのツールではない

 続いて行なわれたパネルディスカッションでは、LockUP 代表取締役社長の長尾純平氏をモデレーターに、Candee上席執行役員の鍛治良紀氏、STARP 代表取締役の渡邊裕馬氏、メルカリ 事業開発部の石川佑氏が登壇。来場者からの質問も含め、ライブコマースの魅力などについてのディスカッションがなされた。

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左からCandee 上席執行役員 鍛治良紀氏、メルカリ 事業開発部 石川佑氏、STARP 代表取締役 渡邊裕馬氏、LockUP 代表取締役社長 長尾純平氏

 まずはライブコマースの魅力について。鍛治氏は「商品を購入するときにもっとも気になるところを瞬時に解決できるのがライブコマースで、購入者の背中を押すツールとしては最適」と語り、石川氏は「いままでのコマースサイトは自動販売機のような感じで、ライブコマースは地域の八百屋さんなど、コミュニケーションを取ってから買うという感じ。接客を受けてこの人から買いたいと思う、その良さがテクノロジーによってできた」と語った。

 逆にライブコマースが苦手な分野は何か。鍛治氏が「靴が難しかった。サイズが国内外で違うし、メーカーによっても違っていたりするので、実際に履いてみないとわからないといった靴のような商品が難しい」と語ると、渡邉氏は「この商品売れますか? ではなく、考える前に配信してほしいと言っている」といい、「その商品は売れないなと思っても、違う好みの人が買うこともある。商品ありきではなく、ライブコマースはユーザーありきで考えるべきだ」と来場者にアドバイス。

 それに付随して、情報発信力の弱い人はどうしたらいいかという質問に対し渡邉氏は「ユーザーのことを考えていないからファンがつかない。誰だか知らないユーチューバーの視聴数が高かったりするのは、すごいなと思ったり、共感することでユーザーがつくため。最初に考えることは、発信力がないということではなくて、ユーザーが満足するコンテンツは何か? という考え方から入って、そこにアプローチする努力をすること」と語る。

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「ライブコマースは出演者に対して親近感がわく」と語る渡邉氏

 「ライブコマースで一緒に作っていこうとすると、視聴者が応援してくれる」と語ったのは鍛治氏。「アクセサリーを作れる人が、その手元だけ映してリアルに商品を作っていくとか、スウェットをプリントしながら受注販売することもできる。そうした配信をしていくうちに自信がついていって、いまではファンとのコミュニケーションで新しいブランドを作るというところまで育っている人もいる」と、具体的な例を紹介。

 メルカリチャンネルでもそれがきっかけで全国的に有名になった方が多いというのは石川氏。「にんにく生産者が、配信で自分の思いや背景を伝えたことでファンがついて、配信するとにんにくがものすごく売れる」と事例を紹介し、「ライブコマースで売れる人は、その熱量がすごい」と、売り手側の意識が重要であることを説いた。

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「テクノロジーで昔の対面販売の良さが戻ってきた」と語る石川氏

 最後にライブコマースの本質的な部分、導入するメリットを聞かれた3氏。鍛治氏は「ライブコマースはクオリティーの高いものを届けないといけないと思われがちだが、配信映像のクオリティーよりもコミュニケーションを大切にしてほしい」、石川氏は「ライブコマースはコミュニケーションプラットフォーム。売るだけだったら大手のコマースサイトで売ればいいが、お客とコミュニケーションをとって、そこからのフィードバックがあるといったことが大事」、渡邉氏は「獲得単価などはやってみないとわからない。しかし、ライブコマースを行なうことでファンが徐々に増えていき、それを試していきながらさらにファンを増やしていく、新しいコンテンツマーケティングの1つ」と、それぞれの考えを示した。

 渡邉氏が「ライブコマースはまだ始まったばかりで、いま、文化を形成している。まだまだライブコマースで物を買った人は少ないが、来年になったらもっと増えるし、再来年になったら普通になっているかも知れない」と語ったように、ライブコマースはこれからさらに広がっていくツール。講演やパネルディスカッションを聞いて、まずはやってみようと思った人も多かったのではないかという、中身の濃いイベントであった。

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