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西日本豪雨でも使われた「SNSで救助要請」のメリット・デメリット

2018年07月10日 17時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集●ちゅーやん

NHK NEWS WEB(https://www3.nhk.or.jp/news/realtime/rt0000367.html?utm_int=all_contents_realtime_001)より。画像は7月9日14時時点

 7月5日から続いた記録的な豪雨の影響で、西日本を中心に、各地で広い範囲で土砂崩れや浸水など甚大な被害が次々とテレビ番組やウェブメディアで伝えられています。

 これらのマスコミによる報道以外でも、普段から身近にあるSNSでも被害の規模は伝わってきます。助けを必要とする人たちが地元の警察や消防へ救助を求めるものの、思うように電話もつながらず、結果としてTwitterを中心としたソーシャルメディアで救助を求める投稿(ツイート)が多く溢れかえる様子を見受けられました。

 こうした広い範囲に大きな影響を与える自然災害が発生したとき、よく見かけるのはTwitterなどのソーシャルメディアに広がるデマ(根拠のない噂や流言)です。これに対しては「自身が情報を見極める力を備え続ける必要がある」ことをこの連載でも以前紹介しています。

 今回のような水害などの自然災害によって、警察や消防、自治体などの救助を直接求めることができない場合、それこそネットを通じてしか助けを求めることができないようなとき、どのような方法が最善なのかを改めて考えていきます。

必ずしも「電話」で救助要請できるとは限らない

 自然災害によって身の危険に迫る事態に自分が遭遇したとき、人命に関わる緊急性の高い救助は、地元の警察(110番)や消防(119番)に要請するのが一番です。また、人命に差し迫った状況ではないけれども、孤立してしまったときの救助や、避難したくても外は危険で出られないようなときには地元の自治体へ、電話をかけられる状態であれば電話で要請することが最優先です。

 ただ、広範囲にわたる自然災害となったとき、多くの人が電話で警察や消防、自治体へ助けを求めることになり、回線の混雑や障害によって電話での救助を思うように要請できないようなケースもあるかもしれません。また、これは一部の人に限られますが「スマホで格安SIMを使う人」も電話をかけられない場合があります。

 近年では格安SIMの普及によって「電話をかけることができないけれども、ネットはつながる」ような、音声通話SIMではなくデータ通信専用SIMを契約したスマートフォンを持つ人が増えています。このときの頼りどころは、どうしてもネットにならざるを得ません。

 インターネット上でこうした被害に関係した投稿を確認できるのはTwitterが最も多いのではないでしょうか。東日本大震災の発災をきっかけに、TwitterをはじめとするSNSで救助を求めるケースが増えており、Twitterライフラインアカウント(@TwitterLifeline)では下記のように呼びかけられています。

 インターネット環境さえ生きていれば、大多数の人に対して救助を求める声を挙げられるのがSNSに救助を求める最大のメリットです。自分自身の話だけでなく、代役としても活用できるという長所もあります。SNSとは異なりますが、インターネットを使えば被害規模などを正確に伝えるために、動画を投稿して「いま何が必要なのか」を伝えることも可能です。

Twitterでの救助要請は「電話での緊急通報と同じではない」

 1年前の出来事になりますが、昨年2017年7月5日から6日にかけて、福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨「2017年九州北部豪雨災害」でも、Twitterなどでは救助を求めるハッシュタグ「#救助」をつけた投稿が相次ぎました。

 しかしながら、東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)の調査「2017年九州北部豪雨災害にみる『#救助』ツイートの現状と問題」によれば、被災地内から救助を求める投稿される一方で、「#救助」をつけた投稿を見つけたときの対応方法の紹介や、 「#救助」の使い方の注意喚起を促すような「被災地外からの『#救助』の投稿も増加」したことで、結果的に「被災地内からのツイートは相対的に極わずか(大事な情報が埋没)」で、本当に必要な「#救助」を検出しにくいということが報告されています。

 つまり、情報が錯そうしやすいTwitterなどの性質上、肝心の救助要請が埋もれる可能性があるというデメリットも存在しているのです。同時に、忘れないでほしいのはTwitter自体が呼びかけている形式を基に投稿をしても、Twitterでの救助要請は「電話での緊急通報と同じではない」ということです。電話での要請よりは対応までに時間がかかりやすいのはすでにおわかりのとおりだと思います。

 Twitterに投稿したことによって、多くの人の目に触れてひとりでも多くの人に助けを求めることができます。ところが、同時に助けを求める人が多いときであればあるほど、Twitterには助けを求める投稿がより溢れかえることになるのです。

 結果、目に触れた人たちの悪意がない善意の引用リツイートだけでなく、投稿された内容をそっくりそのままコピーして投稿し直したり、これにデマなどが加わってしまったりすると、先に挙げたような「本当に必要な救助要請なのがどれなのか」を判断することが難しくなります。こうした状況が続くと、信ぴょう性が下がってしまうということへつながりかねません。

 デマなどは例を挙げるまでもなくおわかりいただけると思いますが、災害時のSNSでのトラブルによくあるのは「解決した救助要請が拡散されてしまう」ということ。過去の要請が拡散されてしまい、最新の要請が埋もれると言うことがあり得るのです。

電話での救助要請が難しいときは、まずは身近な人へLINEやSMSを

 自然災害によって身の危険に迫る事態に自分が遭遇し、電話での救助要請ができないときは、Twitterのような「1対多」でつながるソーシャルメディアではなく、まずは1対1でつながるLINEやFacebookメッセンジャー、ショートメッセージを最初に試してみるべきです。自身が助けを必要としていることを伝えるメッセージを送る先は「災害発生地域から少し離れた場所にいる、関係性が近くて信頼がおける、身近な家族・親戚・友人」です。

 もし、助けを必要としているメッセージを受け取ったならば、その情報をTwitterへ投稿するのではなく、被害を受けている人がいるその地域の警察や消防、もしくは自治体へ、「助けを必要としている人に代わって直接電話で連絡」をしたほうが、時間がかかったとしても、助けを求めていることの信ぴょう性を維持したまま、より確実にしかるべき機関へ連絡をすることができると感じています。自分自身が被害に遭っていないとしても、間接的に協力することは非常に有効な手段だと思われます。

 近年、電話回線の混雑や障害によってつながらないときの救助要請手段として、Twitterのような1対多でつながるソーシャルメディアを頼る人も増え、情報が錯そうして救助をしてくれる人に直接届かなかったりすることも多くなってきています。

 Twitterのような1対多でつながるソーシャルメディアで不特定多数に救助を求めるのは「最終的な切り札の手段」である考え方をもつ必要と、電話がつながらないとき、ネットと通じて救助を求めたいときの手段を改めて見直し、その方法を広げていく必要がありそうと感じています。

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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