2018年07月09日10時00分

製造業をAI化するスカイディスク、高火力コンピューティングのコスパに驚く

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 福岡からIoTソリューションをワンストップで提供するスカイディスク。最近ではAI分野に注力しており、さくらインターネットの高火力コンピューティングでディープラーニングの学習を加速させている。スカイディスク 取締役兼最高技術責任者 CTOの伊藤 俊介氏に導入までの経緯や利用の実態、効果について聞いた。

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スカイディスク取締役兼最高技術責任者CTO 伊藤 俊介氏(左)とさくらインターネット 長谷川 猛氏

製造業やインフラ系事業者のIoTに強み

 2013年に福岡で創業されたスカイディスクは、IoTソリューションに必要なセンサデバイスの開発から、通信、データ蓄積、可視化、AI分析までをワンストップで提供するスタートアップ。これまでの資金調達は8.4億円にのぼり、業界内での注目度も高い。

 スカイディスクは産業分野のIoTシステム構築に強みを持っており、これまで自動車、建機、食品などの製造業、水処理、電力会社などを手がけるインフラ系事業者などを中心に、設備保全や歩留まりの向上、検品の効率化などを手がけてきた。

 たとえば、モーターやポンプなどの設備保全の事例。従来の保全作業では「聴診棒」と呼ばれる装置を機器に当て、音と振動で不良を判断していたが、これには熟練の技術者のスキルが必要だった。これに対してスカイディスクの「スマート聴診棒」アプリを使うと、設備機器の稼働音をあらかじめ録音し、学習しておいたAI学習モデルで判定させることで、故障の予兆や動作不良を検出できる。伊藤氏が「これなら新人でも作業でき、巡回点検する人数も減らすことができる」と説明するように、若年層の労働生産人口の減少や技術継承の課題をテクノロジーで解決できる。

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スカイディスク 取締役兼最高技術責任者 CTO 伊藤 俊介氏

 また、浄水・廃水設備における水処理の事例では、浄水フィルターの洗浄タイミングを最適化した。井戸から水を汲み上げ浄水するためのフィルターでは、ろ過後のきれいな水でフィルターの目詰まりを解消する「逆洗」というメンテナンスが必要だが、その回数が増えると水の利用量が増加するろ過後のきれいな水の量が減ってしまうし、回数が少ないと目詰まりが増える。ここで、スカイディスクではIoTによるセンサーデータ収集と機械学習を組み合わせて、最適な逆洗の頻度を割り出した。

 このようにスカイディスクのIoTソリューションは、製造業やインフラ事業者の現場のカイゼンをテクノロジーで実現する。伊藤氏は、「火力発電所のシステムがダウンした場合、1日で1億円台の損失が出ます。こうしたシステムダウンで損失が出る前に故障を予知し、損失を最小限に抑えられます」と語る。

IoT事業で培ってきた知見を活かした「SkyAI」の真価

 昨年末に発表された「SkyAI」は、同社がIoT事業で培ってきた知見を活かし、機械の故障予測や異常発生などの障害対応を迅速に行なうべく、AIによる分析のみを切り出して提供するサービスだ。今回お話を伺った伊藤氏も、金融機関でAIを用いたトレーディングシステムを開発した経験を持つ、AIのプロフェッショナル。「今まではデバイスを作るところから、インテグレーションまでという流れでしたが、SkyAIを始めてからはコンサルテーションから入ることが多くなりました。工場の設計工程から製造に至るまでの間にAIを導入して、精度を上げたり、歩留まりを上げたりといったことに取り組んでいます」と語る。

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SkyAIの概要

 製造業の事例では、たとえばプラスチックの加工を行なう射出成形機で、不良品ができる原因を探るというケースが挙げられる。「原因となりうる項目が100以上にのぼるので、人間が調べるのが難しく、工数自体も足りませんでした。でも、SkyAIを導入することで、不良品につながる項目を絞り込むことができるようになりました」(伊藤氏)。

 SkyAIでは「分類」「回帰分析」「特徴量分析」「クラスター分析」「ディープラーニング」など、さまざまな手法で画像や音声、時系列などのデータを分析できる。「分類ならなんでもディープラーニングでよい、というような風潮がありますが、分類問題によってはSVM(サポートベクトルマシン)の方がよいというデータが出ています。ですから、データの種類ややりたいことによって、アルゴリズムを使い分けています」とのことで、用途に対して最適な方法を提案している。

 SkyAIとしてAIサービスが切り出されたことで、ユーザー側で利用できるデバイスの選択肢が拡がった。「たとえば、設置型の保全をしたい場合は、お客様の振動検知デバイスでデータを収集し、SkyAIで分析するということが可能になります。一方で、世の中にないデバイスはわれわれが作ります」(伊藤氏)

高火力コンピューティングのコスパは際立っていた

 こうしたSkyAIの機械学習を支えているのが、さくらインターネットのGPUコンピューティングサービスである「高火力コンピューティング」だ。高価なGPUを定額料金で利用でき、投資を大幅に抑えられる。さくらインターネットの長谷川猛氏は、「プロジェクトでやることが明確になっていて、常時GPUを使わなければならない場合は、高火力コンピューティングはコストパフォーマンスが優れていると思います」と語る。

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さくらインターネット 長谷川猛氏

 スカイディスクが高火力コンピューティングに行き着いたのも、やはりコストパフォーマンスの高さが背景にある。「ディープラーニングの学習で必要なGPUを調達するのに、コストとパフォーマンスが見合うところがさくらの高火力コンピューティング以外なかったんです。やはり24時間動かそうとすると、パブリッククラウドのGPUサービスは高くつく。高火力コンピューティングのコストパフォーマンスは際立っていました」と伊藤氏は語る。

 スカイディスクが利用するGPUサーバーは、導入当時(2017年夏)のフラグシップ、NVIDIA Tesla P100を搭載したモデルだ。さくらインターネットのサポートがあったため、スムーズに導入できたという。「最先端の技術って、やっぱり相談できる先が少ないんですよ。でも、業務で利用するにあたっては、調べる時間はなるべく短縮したい。その点、さくらインターネットから、どのライブラリ、どのバージョンを入れればよいかなどサポートしていただいて、非常に助かりました」と伊藤氏は振り返る。

半年以内のプロジェクトであれば時間課金も便利

 現在、スカイディスクはディープラーニングでの前処理、モデル生成、トレーニングで高火力コンピューティングを幅広く利用している。具体的には、画像データをAIで分析しやすい形に変換したり、音による機器診断のモデルを生成するといった用途で、毎日ヘビーに使っている状態だ。「エンジニアも毎月1人ずつ増えている感じなので、GPUが取り合いになります(笑)。ベトナムと日本で業務時間帯が重なるので、今では時間帯を切り分けて共有していますね」(伊藤氏)。

 伊藤氏にとって高火力コンピューティングのインパクトは、ディープラーニングの学習に必要なGPUを定額で利用できること。「機械学習のモデルって、一発でできることはない。試行錯誤の結果としてできるものだし、計算にまるまる1日かかることもある。とにかく定額で使えるところがうれしいです」と語る。

 一方で、使い勝手に関してはパブリッククラウドに軍配が上がる部分もあるという。「案件が突然来るんです(笑)。その点、スピーディにプロジェクトを立ち上げるという点では、パブリッククラウドに軍配が上がります。定額で利用できて、なおかつすぐにGPUサーバーを立ち上げられるサービスができたら、最高ですね」と伊藤氏はさくらインターネットに要望を出した。

 高火力コンピューティングでは、期間を限定した利用において時間課金のサービスも用意されている。長谷川氏が、「時間課金は半年くらい使い続けると、月額課金と同じくらいになる料金設定。ですから、半年未満でプロジェクトを回すのであれば、初期費用の要らない時間課金もお得です」と提案すると、伊藤氏もそれは「いい情報」だとうなづいていた。最後に、長谷川氏は「お客様はGPUサーバーが欲しいのではなく、AIで問題を解決したい。スカイディスク様は、まさにこうした問題解決のために高火力コンピューティングを活かして下さっています。弊社としても意義を感じます」とインタビューを振り返った。

(提供:さくらインターネット)

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