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「ネットで顔出ししていないから大丈夫」というのは間違い

2018年06月05日 17時00分更新

文● ノダタケオ(Twitter:@noda) 編集●ちゅーやん

 子どもたちのネット上における「顔出し」の危険性について、メディアでたびたび話題になります。

 子どもの多くがスマートフォンを持つ時代へ変わったことで、自撮りの写真や動画を手軽に撮りInstagramやTwitterといったソーシャルメディアへ投稿するだけでなく、友達とビデオ通話をするのと同じような感覚で気軽にツイキャスやSHOWROOMなどで自撮りのライブ配信を楽しむ子どもも多く見かけるようになりました。

 こうした姿を見かけると「子どもたちは、危険性をまったく考えずに、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアで顔出ししている」と、考える大人は多いかもしれません。

 実際には、学校などでネットを利用する上での危険性を教わる機会も多くなったことから、大人が考えている以上に子どもたちは「より一層注意を払っている」ように感じています。それは特に、リアルタイムなコミュニケーションが展開されていくライブ配信の場で、顔出ししている子どもたちを見ていて思うことです。

 そもそも「顔出しすることは危険か? そうでないか?」と問われれば、その危険性を否定することはできません。ですから「顔出しすることは危険だからやめよう、避けよう」と大人が子どもたちへ注意喚起していくことは決して間違いではないと思います。

 しかし「顔出しするのは“危険”」で「顔出ししないことが“安全”」だと思っている大人たちが多いのではないでしょうか。

 多数か少数かはさておき、不特定の人たちとコミュニケーションをする可能性があるソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアへの投稿や配信をする以上、どちらが危険で、どちらが安全ということにはなりません。顔出ししていても、しなくても、トラブルが起こり得る可能性はあると思います。それは、子供だけに限らず大人も同じです。

 さらに言えば、「顔出ししていないから」「大人だから」という安心感で、ネット上における振る舞い方の注意意識が低くなってしまうことのほうが逆に問題であるようにも感じるのです。

「大人だから顔を出しても大丈夫」というのも間違いです

親しくなっても「一定の距離感を保つ」 悪意あるものは「すべてを受け止めない」

 ネットにおいてのトラブルは、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアへ投稿や配信をするとき、投稿者となる自身の投稿内容や、配信者となる自身の振る舞いと言動によって発展することは少なくありません。もちろん、ルールやモラルに反しない使い方をすることが大前提です。

 ただ、ルールやモラルに反しない、自身で自分の身を守る使い方をしていても、外的要因でネット上におけるトラブルに巻き込まれることがあるのです。その代表なのは、投稿や配信を見ている人からのコメント(メッセージ)がきっかけで、ネット上におけるトラブルに巻き込まれてしまうケースです。

 投稿や配信を見ている人からのコメントは簡単に分類すると2つのパターンに分かれます。それは「好意的でポジティブ」なコメントと「悪意的でネガティブ」なコメントです。

 前者の「好意的でポジティブ」なコメントが寄せられることに越したことはありませんが、好意的でポジティブなコメントが寄せられたとしても「距離が縮まるからこそトラブルは起きてしまう」ことは少なからずあるのです。これについては、「必ずネットで知り合った友だちとの“一定の距離感を保ち続ける”」こと、「親しくなったとしても、ネット友だちとの距離感を不用意に“縮め過ぎ”てはいけない」ということは本連載第2回でもお話したとおりです。

 一方、後者の「悪意的でネガティブ」なコメントはどのようにしたら良いでしょうか。

 ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアのサービスを利用する以上、好意的な人もいれば悪意的な人もいます。これはネットの世界だけでなく、現実の世界でも同じだと言えます。

 とても悪意が強いものについては、結果的に「ブロック」や「非表示」といったサービスが備える機能で対応する必要がありますが、それ以前の段階ではまず「スルー」をすること。悪意的でネガティブな心ないコメントすべてを受け止めてしまうと、自分自身が疲弊してしまう(疲れて弱まってしまう)からです。

 この「スルースキル(=相手にしない能力)」はソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアのサービスを利用する上で、大人はもちろん「子どもたちにも身につけてほしい欠かせないテクニック」だと考えています。

 ただ、ネット越しの顔が見えない相手から来た悪意的でネガティブな心ないコメントをスルーするテクニックは、残念ながら大人でさえもそう簡単に身につくものではありません。さらに、こうしたコメントが実際に来たときに初めてそのさじ加減を知ることになるとても難しいものです。

 少なくとも、子どもたちに知っておいてほしいのは、「悪意的でネガティブな心ないコメントはすべてを受け止めてはいけない」ということ。それを頭の片隅にでも置いておくことができれば、ゼロにはできずとも、ネット上におけるトラブルに巻き込まれてしまう可能性を減らす一助になると思うのです。

相手の顔が見えないからこそ、やり取りをするときは細心の注意を

危険を感じたら「リアルな世界にいる大人たち」へ

 子どもでも大人でも、顔出ししていてもしなくても、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアへの投稿や配信をする以上、ネット上におけるトラブルに巻き込まれる可能性があることが誰にでもあることは常に意識しておくことは大切なことです。

 世の中、絶対危なくないというツールは存在しません。だからと言って、危ないから使わせないのではなく、その危険をできるだけ回避する方法を大人たちも知り、子どもたちへ伝えなければいけません。

 ただ、トラブルに巻き込まれたときのために、身近な大人に相談できる環境にしていてほしいのです。相談しやすい人が身近にいなければ、公的な(国や自治体などの)相談窓口でも構いません。なぜ「身近な」という表現を使ったのかというと、ネットの世界にいる誰かに話しても、実は危険を回避することへつながらないことも多いからです。

 とはいえ、子どもたちは特に、困ったときこそ「リアルな世界にいる、なるべく身近な大人たち」に相談をするのはなかなか難しいのかもしれません。

 だからこそ、大人たちは、子どもたちが相談しやすい環境(雰囲気)をより整えることや、危険が差し迫ったときにどのようにすれば良いのか、という知識もあらかじめ備えておく必要があると思います。

意外とネットでのトラブルって他人に言えないこともあるんです

ライブメディアクリエイター
ノダタケオ(Twitter:@noda

 ソーシャルメディアとライブ配信・動画メディアが専門のクリエイター。2010年よりスマホから業務機器(Tricasterなど)まで、さまざまな機材を活用したライブ配信とマルチカメラ収録現場をこなす。これらの経験に基づいた、ソーシャルメディアやライブ配信・動画メディアに関する執筆やコンサルティングなど、その活動は多岐にわたる。
nodatakeo.com

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