2018年05月24日07時00分

企業間レンタル移籍をやってみてどう変わった?体験者が本音を語る

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 企業間レンタル移籍プラットフォーム「ローンディール」を運営する株式会社ローンディールは5月16日、セミナーイベント「ローンディールフォーラム2018」を、東京ミッドタウン日比谷6FのBASE Qにて開催した。

 働き方改革で副業が解禁され、個人の働き方が多様化するなか、企業の人材活用・育成はますます重要になっている。企業の人材育成の手法として、社外の企業や現場で実践的に学ぶ「越境学習」といわれる学び方が注目されている。

 ローンディールの「企業間レンタル移籍」は、大企業の社員をベンチャー企業へ半年~1年間移籍し、越境学習の場を提供するサービスだ。ベンチャー企業のプロジェクトへ参加することで、スピード感のある思考力や実行力が鍛えられるという。

 セミナーでは、経済産業省 産業人材政策室長 参事官の伊藤 禎則氏による基調講演と、レンタル移籍の導入企業2社とローンディールの担当者によるパネルディスカッションが行なわれた。

人生100年時代は、生涯働きながら学び続けてプロフェッショナル力を磨く

 伊藤氏による基調講演では、「働き方改革とプロフェッショナル力(りょく)~人生100年時代の働き方、学び方」をテーマに、日本の雇用システムの抱える課題と、経済産業省が進めている働き方改革のビジョン、企業に求められる組織変革の必要性について解説した。

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産業人材政策室長 参事官 伊藤禎則氏。1994年経産省入省。米国コロンビア大学ロースクール修士、ニューヨーク州弁護士登録。エネルギー政策、筑波大学客員教授、大臣秘書官などを経て2015年より現職。政府「働き方改革実行計画」の策定にかかわる。副業・複業、フリーランス、テレワークなど「多様で柔軟な働き方」の環境整備に取り組み、また人材投資、HRテクノロジー促進など、経産省の人材政策の責任者

 人口減少・第4次産業革命の波を受け、日本の雇用システムは、1.長時間労働の是正、2.成長分野への人材の流動性促進、3.人材育成・人材投資の強化が求められている。

 政府の働き方改革では、労働時間の規制強化や、多様な働き方へ対応するための厚生労働省の「モデル就業規制」を企業が副業を認める内容へ改訂するなどの法整備を進めている。

 労働人口の減少と労働時間の短縮は、AIやロボットの活用で生産性をあげることで解決できるが、AIやビッグデータを活用できる人材と活用できない人材で格差をともなう可能性があり、これらをカバーするための教育・人材育成が重要になる。

 そこで、人生100年時代の働き方の方向性として、経営学者リンダ・グラットン、経済学者アンドリュー・スコットの共著「LIFE SHIFT」を紹介。

 「従来の3つの人生ステージ(教育を受ける/仕事をする/引退する)のモデルが100年時代には変質し、“働く”と“学ぶ”が一体化する。働きながら学び続け、複数の専門性、プロフェッショナル力をもつことで安心・充実した人生が送れる。教育機関での再学習に加えて、企業や現場でのインターンや出向、レンタル移籍で、実践・体験による学びが必要とされるだろう」と多様な働き方と生涯学習を提案した。

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働き方改革の本質は、「成果・生産性による評価」「多様な働き方の実現」「人生100年時代に応えるスキルの獲得」――の3点

NTT西日本からベンチャーへ1年間のレンタル移籍を体験

 企業間レンタル移籍の導入企業によるパネルディスカッション「レンタル移籍後の三者の本音」では、レンタル移籍を導入したNTT西日本の北口哲也さんと佐伯穂高さん、受け入れ企業である株式会社ランドスキップの代表取締役社長 下村一樹さんの3名が登壇し、移籍中の苦労や移籍後の心境の変化などの感想を語った。

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左からNTT西日本 ビジネスデザイン部 企画部門 部門長 北口哲也氏、同社同部 佐伯穂高氏、株式会社ランドスキップ 代表取締役社長 下村一樹氏

ベンチャーのマインドへ適応できず悩んだ1ヵ月

 レンタル移籍のプログラムがスタートしたのは、2017年の春。NTT西日本の北口さんが社内で希望者を募り、佐伯さんが手を挙げた。移籍先は、風景配信サービスのスタートアップ、株式会社ランドスキップだ。

 ローンディールからは、受け入れ先企業として数社の候補を紹介され、佐伯さん本人が面談してランドスキップを選択した。決め手となったのは、「部者と社員といった関係ではなく、パートナーとしてともに汗をかきたい、と言ってもらえた」ことだそう。

 当時、ランドスキップは設立したばかりで、下村さんは「個人経営から組織の事業体として大きくしていくため、大企業の社員と働くことは魅力的だった」という。

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NTT西日本からランドスキップへレンタル移籍

 佐伯さんは、ランドスキップのCOO的なポジションで参加し、経営戦略からビジネス開発の推進、マーケティングなどを一手に担うことになった。しかし、最初の1ヵ月間は、ベンチャーのマインドに適応できず、落ち込んだという。

 「ベンチャーの方は、目の前のことをどんどんこなしていくが、自分だけが活躍できない気がした。正直、自分がこんなに役に立たないとは思わなかった」と佐伯さん。

 一方、下村さんには、ずいぶん遠慮しているように見えたそうだ。「正解を求めて『どうしたらいいですか?』と聞いてくる。自分で進めていいのに、変にブレーキをかけているようなもどかしさがあった」(下村さん)

 大企業では、段階的な会議を経て、みんなで意思決定をしていくのが当たり前だが、ベンチャーが手掛ける、新しい事業では正解は誰にもわからない。1人で意思決定して、すぐに行動しなくてはならないのだ。この違いに最初は苦しんだという。

 そこで佐伯さんは、自分ができることに注力して、気持ちを切り替えるようにしたそうだ。「もともと企画部門にいたため、そのスキルを活かしました。また、気持ちが変わったきっかけは、下村さんが『佐伯さん、答えを求めようとしていないですか? 僕も悩んでいるんですよ』と言ってくれたこと。これは大企業ではありえない。上司は、部下に対してわからないとは言わない。心が楽になりました」

 後半の半年間は、名実ともに下村さんの片腕として、会社の経営戦略や人材要件の設定、社員のために何ができるのか、といったことを考えられるようになったそうだ。「当事者となり、経営に携わらせていただいたのは、貴重な経験だった」(佐伯さん)

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佐伯さんによる移籍期間のセルフ評価。移籍後の1ヵ月間は環境の変化に適応できず苦しんだ

ベンチャーで学んだことを、どう大企業の組織のなかで展開していくか

 1年間の移籍を終えて、どのような変化・成果があったのだろうか。

 北口さんは、「修羅場をくぐったことで、自信がついて動じなくなった。パワーが上がり、常に100%以上の力を出しているように思う。直属の上司からは、情報察知力、創造性、ヒューマンネットワーク力がビジネスに生かせるようになった、と聞いています」と評価する。

 現在、佐伯さんは新規サービスを開始する部署に配属され、4Kコンテンツを配信するビジネスを進めている。「移籍して1ヵ月は環境が違う中で苦労しましたが、帰ってきたときも同様に、数週間は環境の違いで戸惑いました(笑)。ベンチャーで学んだことをそのまま大企業に持っていけるわけではなく、大企業の開発のやり方にも意味がある。学んだことをどうやってアジャストしていくのかを考えている段階」とのこと。

 また、レンタル移籍を導入する大企業側へのアドバイスとして「送り出す現場からは必ず抵抗を受ける。組織が人材不足にならないように、必ず誰かを補充することが肝心」と北口さん。

 ベンチャー側は、移籍終了後に人材を失うことになるので、在職期間中に後継者を育てておくことも大事だろう。なお、今回のNTT西日本とランドスキップとの移籍は終了したが、現在は引き続きビジネス上のパートナーとして、新たに共同で事業を行なっているそうだ。

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