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5Gで可能になる建築重機の遠隔操作

2018年05月16日 06時00分更新

 5Gの特長として上げられるのが、「高速大容量」、「超低遅延」、「多数端末接続」の3つとされている。高速大容量により、スマホではさらに通信速度が速くなり、大きなファイルも一瞬で送れるようになる。超低遅延は自動運転、多数端末接続はIoTでの活用が期待されている。

 これまで超低遅延は、自動運転での活用が期待される一方、「自動運転の実用化にはまだまだ時間がかかる。5Gでの活用はしばらく先の話になるのではないか」というのが、通信業界関係者の共通した見方だった。

 しかし、ここにきて、5Gの超低遅延に対する期待が俄然、高まってきた。特に建築業界から「5Gで超低遅延を実現して欲しい」という声が上がっているのだ。

期待される、建築現場での5G活用

 建築現場で5Gが期待されているのは「重機の遠隔操作」としての活用だ。

 NTTドコモの中村武宏5G推進室長は「これまでは低遅延の優先度は高くなかった。しかし興味を持つ企業は多い。特に建設重機やロボットの遠隔操作で超低遅延が求められている」と語る。

 ショベルカーなどに5Gの通信機器を設置し、5G回線を経由して、ショベルカーを遠隔で操作できるようにしたいと、建設会社からの要望があるという。

重機の遠隔操作に5Gが必要な理由

 素人考えだと「それって、別にWiFiで充分では」と思ってしまう。実際、すでにWiFiを経由しての遠隔操作を実現しているものの、どうしてもわずかな遅延が発生してしまい、快適に遠隔操作できないのだという。どうしても遅延があるため、操作をする人は、その遅延を考慮して、微妙にタイミングをずらして遠隔で操作するようになるという。結果として、遅延を計算しながら操作しなくてはいけない。

 中村室長は「反応が鈍いと、操作に疲れてしまう。その解決策として5Gが求められている」と語る。

 遠隔操作が5Gになれば、そうした遅延を気にすることなく、遠隔で操作が可能になる。

 また、重機に設置したカメラも、WiFi経由では標準的な映像クオリティーであっても、5Gであれば、4Kといった高解像度の映像を何本も送れるようになる。

 高解像度の映像を見ながら、現場の様子を確認し、超低遅延の通信で、重機をリアルタイムに、ストレスなく操作できるようにするためには、5Gは不可欠なのだ。

 そもそも、建築現場でなぜショベルカーを遠隔操作する必要があるのだろうか。

 建築業界では人不足が深刻な問題だ。建築重機を扱える職人は全国の工事現場で需要がある。いままではそうした人があちこちの現場にでかけて、重機を操っていた。

 しかし、これが、5G対応の重機になれば、操作をする職人を東京のオフィスに置き、各地の工事現場の重機を遠隔で操作できるようになる。

 北海道の重機を遠隔で操作したあとに、今度は沖縄の工事現場を担当するといったことが可能になるのだ。工事現場の進捗状況や作業内容に応じて、自在に重機を遠隔操作できるようになれば、少ない人数で効率的に工事をこなすことができる。

 2020年以降、工事する場所が5Gのエリアになっているとは限らない。その時は、工事を始める前に、その場所だけに5Gの基地局を設置し、エリア化してから工事を始めるということになりそうだ。

 現在、NTTドコモがコマツ、KDDIが大林組とNEC、ソフトバンクが大成建設と、5Gを使っての建築現場の効率化に取り組んでいる。人不足が解消し、効率化につながることから、意外と工事現場での5G導入は早いかも知れない。

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