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国内大手・グローバルと手を取り拡大する「RECLO」

海外で爆売れ ブランド市場を裏から変える泥臭いリユースプラットホーム

2018年04月27日 07時00分更新

 アクティブソナーは、2012年11月に創業したリユース事業を手がけるスタートアップだ。ハイブランドの商品を委託販売・買い取りできるサービス「RECLO」(リクロ)を提供しており、近ごろはさまざまな企業と提携し業務拡大を進めている。その範囲は、質屋や中古販売ショップでの中古商品売買というレガシーなイメージとは次元の異なる取り組みとなっており、グローバル展開も進んでいる。

 「RECLO」というサービスの現在について、そして4度目の創業かつ2度のIPOを経験したシリアルアントレプレナーが感じた不安とは。株式会社アクティブソナーの青木康時代表に話を伺った。

株式会社アクティブソナーの青木康時代表取締役社長

ラグジュアリーアイテムのリユーススキームをゼロから構築

 クローゼットをリフレッシュする”リクローゼット”から名付けられたサービス「RECLO」は、オンライン上でラグジュアリーアイテムを委託販売したり、また逆に買い取れる国内最大級のリユースプラットホームだ。ユーザーがアプリで依頼すると、同社のコンシェルジュが受け取りに来るため、商品を玄関で渡すだけで出品できる手軽さが特徴となる。すべての商品は「RECLO」が鑑定・値付けをして、ユーザーは「委託」か「買い取り」か選ぶだけ。買い叩きがないため、従来の買い取り業者と比べると1.5~2倍くらい高い金額になるスキームを構築している。

 青木氏が「RECLO」を立ち上げたのは、自身の体験からだ。

 「フリマアプリでたまたま買ったブランド品が偽物で、事務局に問い合わせると、『個人間で処理してください』となった経験がある。ECの購入体験として、非常に不安定と感じた。安いものなら泣き寝入りすればいいのが、高い商品だと買う側にとっては不安が残る。また、私がフリマを使ったときに、30代のおじさんユーザーが10代の女の子から『これ早く届かない?』『超遅いんだけど』とタメ口で突っ込まれるのは、出品ユーザーとして個人的に辛かった。ここを解消できる絶対的に安心なCtoCサービスが欲しいと思ったのがきっかけ」(青木氏)

 もともと別の事業展開を行なっていた青木氏は、ファンドと相談し「RECLO」をスタートさせた。だが、リユース事業では、売る側と購入者それぞれを集める作業と、商品をサービス内で回してコントロールするという、3つの要素をバランス良く育てていく必要がある。それぞれのユーザーとモノが集まって、売り買いを勝手に始めてもらえるといいのだが、ラグジュアリーアイテムを安心して売りたいユーザーは高所得者層が中心となり、一方でそれをお得に買いたい層とは異なってくる。両者を集客するためにすべて広告で集めてまかなおうとすると、2倍の費用がかかってしまう。

RECLO

 この課題に対して青木氏は、1年くらい経ったある日、戦い方を変えたという。

 「そもそも自社でサービス設計ができているのであれば、この機能はほかの小売企業や会員企業にとっても、必要なのではと。もちろん、理想とするスタイルは、勝手にお客さんが集まって、RECLOの中で楽しんでもらい、ぐるぐる回ってもらうこと。とはいえ、商品がなければ誰も幸せにならないし、ユーザーが増えないとどうしようもない。そもそもその自社サービスを伸ばしたいというプライドはいるんだっけ、と。お客さんからすると、RECLOでも他のサイトでも、自分の好きな場所でサービスを利用できれば、欲求は満たされるのではないかと考えた」

 リユース事業をゼロから構築し、オペレーションを練り上げた青木氏は、ほかの企業との提携に舵を切る道、CtoBtoCでの協業サービスによる拡大方法を選択した。ピボットまではいかなくても、会社としては大きな方向転換となる。当然、社内でも色々と話し合ったそうだ。

 「みんなで議論しながら、提携以外で100万ユーザーを得る方法や、1万個の商品をすぐ集める方法を考え抜いた。でも、それには5億円がかかる、といった明確な障壁が見えた。理想とする絵が不確実なら、確実な方法に振るという判断も必要。それを私が行なった。当然、ブランディング重視派だった人の中には離れるメンバーもいたが、経営判断としては、急成長して早くグローバルで活躍するリユース企業を目指した」

100倍のコンバージョンを得た方向転換

 まず声をかけたのは、BUYMAやSHOPLISTといった大手のEC。ベンチャーであるRECLOからの提案ということで、テスト導入からスタートした。最初はサイトを経由することでのアフィリエイトを行なったのだが、1ヶ月間で数件の登録と失敗。

 しかし、アンケートの結果、リユースのニーズはあるが認知不足から「よく知らない中古屋さん」というイメージが「RECLO」に対して持たれていることがつかめた。そこでユーザーの不安をなくすため、青木氏はRECLOが黒子となり、BUYMAやSHOPLISTのサービスとして打ち出すことを提案した。担当者を1人付けてくれれば、2週間でローンチし、コール対応もすべてRECLOが対応するようにしたのだ。先方としては、手間がかからず自社サービスを展開し、手離れがいいならやってもいいということになった。

 「2015年11月にBUYMA ALL-INをリリースしたところ、初動でアフィリエイトのときの100倍近くのコンバージョンが出た。やはり、BUYMAがやっているから安心だと受け取られた」(青木氏)

 当初、提携先としてECを想定したが、意外にも多様な業種との引き合いが増えていく。ポイントサービスを提供している企業や百貨店、不動産企業などだ。たとえば、高級新築マンションの説明会で顧客満足度向上の一環で不要品としてのラグジュアリーアイテム引き取りサービスを提案したり、賃貸の場合では不要品引き取りがそのまま仲介手数料になるといった接客もできた。生活のありとあらゆるところで、暮らしをサポートする文脈が見えてきた。

 そして百貨店への提案に進むが、こちらはレガシーな業態で多数の判断軸がある。新規事業開発部が乗り気でも、部署によってはテナントを向いており交渉の難易度が高かった。流れが変わったのは、三越伊勢丹ホールディングスからのRECLOへの出資だ。これを受け、”親戚筋”になったという印籠を持って提携を実現させるに至った。とはいえ、ごり押しではなく、あくまでWin-Winを狙う。

 「コートを売った人のほとんどは3ヵ月以内に新しいコートを購入する。買い取りの時に、現金なら1万円、ポイントなら1万2000円とすれば、次回購入のコンバージョンがさらに上がる。そもそもお客様の予算が増えているので、狙い撃ちでクーポンを打てばさらに効果的な展開ができる」(青木氏)

 現在RECLOは、BUYMAとSHOPLISTを皮切りに、三越伊勢丹ホールディングス、セブン&アイ・ホールディングス、auなどのビックネームと提携を進めている。さらに、その先に見据えているのが、ラグジュアリーアイテムの日本品質での海外リユース展開だ。

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