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東北大学で芽生えた起業文化 第1回ビジコン盛大に開催

2018年04月25日 09時00分更新

 こんにちは、一般社団法人MAKOTOの横田です。東北大学が推し進める大学発ベンチャー創出事業の一貫として、この春盛大に執り行なわれましたイベントの様子をご紹介します。始めての開催となる『東北大学ビジネスプランコンテスト vol.1』の模様をリアルにお伝えしますね。MAKOTOの持つベンチャー育成ノウハウを惜しみなく投入しています。

 大学発ベンチャーの機運が各地で高まる中、東北大学では始めての開催となるビジネスプランコンテストが、2018年2月24日(土)、片平キャンパス内「知の館」で開催されました。

 この会場ですが、普段は世界で活躍する科学者が多く交流する場に使われており、言わばVIP御用達のホールなのです。そんな場を、大学側のありがたきご厚意に感謝です! 壁一面の黒板には数式や化学式がびっしり書かれ、議論が白熱した跡が垣間見え、本当の知的空間と感じさせる、凄い場所でした。

 当日は早春とは言え、まだ肌寒さが残りながらも、日中は暖かな日差しに恵まれ、ホールはほぼ満席となる90人を超える多数の来場者で賑わいました。

若者の本気のピッチで熱気の渦に!

 今回のコンテストは、東北大学に在学する大学生および、院生を対象とすることとしては始めての取り組みとなり、学内外から多くの注目を受けるイベントとなりました。学生ファイナリストは見事予選を通過した8チームです。

 運営側も登壇側も、すべてが始めてだらけの経験だったとはいえ全チームとも予想を超えた熱気あふれる素晴らしいピッチを繰り広げ、聴衆も真剣に聞き入る大会となりました。

大学院医工学/医学研究科教授 永富良一先生の開会の挨拶で、熱いピッチの火蓋が切って落とされました

 審査委員には永富教授を始め、株式会社キープレーヤーズ代表取締役 高野秀敏氏、AZX Professionals Groupパートナー 菅原稔氏、株式会社ニューズピックス取締役 坂本大典氏、株式会社グロービスキャピタルパートナーズ プリンシパル 湯浅エムレ秀和氏、株式会社サムライインキュベート パートナー兼Chief Strategy Officer 長野英章氏、株式会社54代表取締役 山口豪志氏で、OB、VC、起業家、弁護士などスタートアップ界隈でよく知られる方々に集結いただきました。

決戦の場は整った。あとは全力を尽くしてチャレンジするのみ!

 この状態でピッチする学生が緊張しないはずありません。5分間のピッチにこれまでのすべてをぶつける! いざ、緊張の一瞬です。

決戦の場は整った。あとは全力を尽くしてチャレンジするのみ!

 不安をよそにどのチームも素晴らしい内容でした。前日まで発表の内容を修正し続ける彼等を見ていたので、大丈夫かな? とちょっぴり不安もありましたが、本番当日はしっかり仕上げて来て聴衆を唸らせるシーンもあり、心底安堵な気持ちを覚えました。

 たとえば、法学部の学生は法律の現場体験から、旧態依然とした古い慣例に違和感を感じ、AIで一新するサービスを提案。医学部チームは医師と患者間で生じている情報ギャップを徹底した顧客目線で掘り下げた情報サービスなど、どれも目の付け所が鋭く、課題を解決することに必死な語り口が印象的でした。

 そうかと思えば、ボディービル部での体験からジムのSNS、といったユニークなプランもあり個性にあふれていました。

 プランはどれも共感の持てるものばかりで、なかでも就活の実態を改善したいと、自身のインターン経験から勉学のすき間時間に企業とつながるアプリを考案した法学部の学生は、内容およびプレゼンテーションも大人顔負けで、特に「就活をぶち壊す!」と言っているシーンは印象的でした。

優勝、準優勝、ほか各スポンサー賞受賞のみなさん

 基調講演には、株式会社メルカリ執行役員の松本龍祐氏に登壇いただきました。

 特に松本氏自らの学生時代の起業体験談が面白く、試行錯誤しながらさまざまなサービスを生み出していったことに大変共感を覚えました。未来の起業家へのハングリー精神や、情熱、そして一歩踏み出す勇気を与えてくれるありがたいお話しでした。

開催までは紆余曲折

 ビジコンは大成功だったのですが、実はここにいたるまではそう簡単では無かったのです。その模様をほんのちょっとご紹介します。

 ビジコンの告知は2017年12月の東北大学スタートアップガレージ(TUSG)で開催されたイベントの最後でのことでした。

 同時に開催案内の告知はネット・メール・ポスター・チラシなどなどさまざまな方法で展開したものの、エントリーはさっぱり集まりませんでした。それもそのはず。学内に起業文化がないのですから、起業がイメージできるわけがないのです。

 そこで私達は、まず東北大学にある「起業部VEX」をコアに起業志向の人材を育てるところから始めました。この起業部、20年程前から続いている歴史ある部なのですが、主に起業研究が主体で自分達が起業するという活動ではありませんでした。

 そこで意識の転換を促して、部活の運営者ではなく「自らがプレーヤーになろう、実際に起業しよう」という志向に変えていくことを試みました。そのために弊社メンターや起業経験者によるメンタリングを毎週続けました。

 ときには東京や海外から遠隔でOB・OGメンターも交えながら続け、学生達は少しずつ起業家志向に変化していったのです。

 課題の掘り下げ、アイデア出し、プロトタイピング、そしてヒアリング、それらを繰り返すことで次第に独自の起業テーマが見え始めてきたのです。ようやく霧の中から一筋の光が見えた瞬間です。

 その後はブラッシュアップとプレゼンテーション練習の日々でした。

 こうしてプランのエントリーは予想以上の数が寄せられました。当初は起業部だけかな? と思っていたのですが、ほかの駆け込みエントリー学生も多かったことは、このような活動を見てくれていた証拠で、大変嬉しく思いました。

まとめ

 今回は大学生・院生を対象に始めての企画でしたが、各業界関係者様に、多角的視点でフィードバックもいただけ大変感謝致します。ありがとうございます。

 起業文化の創造はまだ第一歩を踏み出したばかりですが、きっと次年度以降も続いていくことと思いますので、引き続きご支援をお願いいたします。

 開催後なによりも嬉しかったのは、登壇学生から、絶対起業します! という力強い言葉をもらえたことです。これまで起業に否定的だったところから、ポジティブに気持ちが大きく切り替わったことは凄いと思います。これぞ起業文化なんだなと思います。きっと次回の大会ではエントリーが殺到することでしょう。

 私達は各地域の大学からベンチャーが生まれことで、新たな雇用が生まれ、それを取り巻くエコシステムが回り始め、結果的に地域経済活動が活性化されることにつながると考えています。

 大学には多くの技術と人材が詰まっていて、使わない手はないです。それを可能にするには1人でも多くの方々の賛同が必要です。ぜひ知恵を貸してください、一緒にやりましょう!

「東北大学ビジネスプランコンテスト vol.1」
主催:東北大学 EDGE-NEXTプログラム
共催:独立行政法人中小企業基盤整備機構東北本部
後援:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、経済産業省東北経済産業局、一般社団法人東北経済連合会、宮城県、仙台市
協賛:株式会社ベガルタ仙台、株式会社ニューズピックス、株式会社七十七銀行、東北大学ベンチャーパートナーズ株式会社、株式会社東北テクノアーチ、株式会社C&A
東北大学スタートアップガレージ:http://tusg.jp

横田洋一(一般社団法人MAKOTO ディレクター)

著者近影 横田洋一

大手IT企業を勤めたのち、ベンチャーを創業し資金調達を受け事業展開後に売却。その後2017年からMAKOTOに参画。東北大学の起業家創出プログラムのプロジェクト推進を担当。

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