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勝利のない勝利を目指せ 暴動リアルタイムストラテジー「RIOT - Civil Unrest」:Steam

2018年03月09日 18時00分更新

 40年近く前の昭和の中頃、日本の大学では学生運動が非常に盛んであった。大学を封鎖し、警察の機動隊と正面から殴り合うという今では考えられない光景が日常的に繰り広げられていた。かれこれ40年前で筆者も流石に産まれる前の話も多く両親から当時の話を聞いた位である。はてさて、日本ではそこまで遡られなければならないが、世界では“アラブの春”といった大規模な反政府運動などが21世紀でもまだ各地でくすぶり続けている。

 第71回はそんな実在のデモを再現したリアルタイムストラテジー「RIOT - Civil Unrest」を紹介する。

 

勝利のない勝利

 本作品は冒頭でも触れた実在の市民運動を題材としたリアルタイムストラテジーである。リアルタイムストラテジー自体の説明は長くなるため過去記事ではあるが「Off world trading company」で解説をしているので見ていただきたい。

本作品には現在日本語字幕は導入されていない。また操作はコントローラーを使用可能だが、RTSの性質上キーボード&マウスのほうが操作しやすい。

 RIOTには各種モードがあるが、基本の操作は全て共通しているので今回はStoryモードを焦点に紹介していこう。初期に選択可能なのはイタリアの高速鉄道反対デモ、ギリシャの廃棄施設建設反対デモ、近年最も有名な民主化運動“アラブの春”の三つだ。

それぞれ選択すると市民側か警察など治安維持する組織側の選択になる。指揮したい方を選択しよう。

 シナリオはそれぞれの勢力で4つあり、シナリオ毎に勝利条件が変わるが現在のところオブジェクト(目標)を守るか、一定のラインを超えるかの二つしかない。それではそれぞれ見ていこう。

市民側の画面の見方の説明。(クリックで拡大)

警察側の画面の見方の説明。(クリックで拡大)

 どちらの勢力も選択したユニットを右クリックすることで指定したポイントに移動できるが、この際にモードに応じてある程度の行動は自動で行ってくれる。市民であれば機動隊とすれ違うときに石を投げたり、目標物の近くやバリケードの近くにいれば破壊活動を始めたりとある程度操作の簡略化はされている。だが、市民側は基本無力であるため機動隊が強制的な威圧や銃を撃ち始めればひとたまりも無い。

市民側も警官隊も開始前に準備フェーズがある。それぞれの場面で有効な装備や編成を予想してデモに対応しよう。(クリックで拡大)

 暴力行動に出た場合は市民側ならモロトフ(火炎ビン)やお手製の爆弾といった危険な武器も使える。ただし、警察側であれば銃器や警棒といった鎮圧用の武器を使えるため一方的な暴力を生み出しかねないのは前述の通りだ。そのため、平和的に盾ユニットを押し出して、スモークグレネードを打ち込んで押し返し、士気の低下を待つのが機動隊の基本的な鎮圧行動となる。

 両陣営とも目標を達成するか、画面端に押し込むかでそのマップでの勝敗が決まる。だが、勝利のない勝利というデモの特徴をよく表していると個人的に思うのが本作品のリザルトである。

 暴力行動は厳しい結果を生む。あらかじめ決められた達成目標の100点を市民側と警察側で分け合った戦略スコアに対して、政治的なダメージというもう一つのスコアが存在する。戦略スコアはマップでも常に確認できるが、政治的スコアはリザルト画面で初めて明らかになる。具体的には一方的な暴力行動の結果けが人や死者を出した場合、画像のように世間からの評価を受け最終結果で負けるということもあるというわけだ。ただしこれは市民側にも当てはまるので、できるだけ平和に活動を成さなければならない。

発売前からの注目作品

 日本で馴染みのない暴動を題材とした作品だが、本作品の発売までの道のりは決して単調ではなかった。度重なる延期にゲームエンジンの変更による作業の遅れと本作品がクラウドファンディングで生まれた作品であるのも幸いした。ピクセル表現によるドットのようになめらかに動くアニメーションもさることながら、暴動をどちらの視点をもテーマにした作品というのは過去にも例がない。そのようなこともあって発売前から今か今かとSteamのストアページを睨んでいたのは私だけではなかったはずだ。

 まだまだアーリィアクセスのため完成とはいかないが、現段階でも雰囲気などもよくできている。ストラテジー作品としてみるならば、まだ難易度の調整を難しくしてもいいのではないかとも思う。その点を踏まえても今後のアップデートが楽しみなタイトルで、ネットワークでのマルチ対戦もサポートされていくのかもしれないと期待が膨らむところである。

 勝利のない勝利とはなにか。その一端をあなたも味わっていただきたいと私は思うのである。

「RIOT - Civil Unrest」の推奨動作環境は?

 最低動作環境のグラフィックの要件がIntel HD Graphics 4000以上と、CPU内蔵GPUで動く軽さだ。CPUのみで遊ぶ場合、Ivy Bridge世代のCoreシリーズ以降が必要だが、ここ数年のPCに搭載しているGPUを内蔵したCPUなら問題なく動作するだろう。

『RIOT - Civil Unrest』
●Leonard Menchiari , IV Productions
●1280円(2017年12月6日リリース) ※価格は記事掲載時点のものです
対応OS Windows MAC
ジャンル Earky Access、ストラテジー、独立系開発会社、RTS、ドット絵
Portal © 2007 Valve Corporation
RIOT - Civil Unrest developed by IV Productions and Leonard Menchiari, published by Merge Games Ltd. © 2017. Merge Games Ltd. and RIOT - Civil Unrest are trademarks or registered trademarks of Merge Games Ltd. Original Concept by Leonard Menchiari. All other trademarks, copyrights and logos are property of their respective owners.

■著者:rate-dat
・Steamのプロフィールページ:Steam コミュニティ :: ratedat
・Twitter:@rate_dat

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