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フォトグラファーから見たiMac Pro

PhotoshopとLightroomで実感したiMac Proのスゴイ実力

2018年02月22日 12時30分更新

iMac Proの5Kディスプレーは快適か

 筆者は、主にウェブ、紙媒体、映像関係の撮影をしており、撮影内容に応じて、2400万~5000万画素のカメラを使用する機会がある。通常のワークフローだと、撮影→セレクト→調整編集→納品という流れになる。

 普段はMacをトリプルディスプレー環境で作業しているが、この環境とiMac Proを比較してどれくらい時間的効率を上げられるか楽しみだ。

 まずディスプレーが5K解像度になったことにより、写真、映像の表示スペースが十分確保できるので視認性が上がり、セレクト時の時間効率が若干向上した。Retina5Kディスプレー1画面でも、ワークスペースは十分確保できる。これは写真、映像以外でも同じことが言えるだろう。

 個人的にはスケーリングも試してみたが、解像度、解像感が高いのでデフォルトが一番使いやすかった。

スケーリングデフォルト画面

スケーリングスペースを拡大画面

 何よりディスプレーに映された画像から立体感、空気感が感じられた。そして彩度も高めでグラデーションも滑らかさに目を引かれた。

Lightroomでの画像調整の比較画面

 色域については、sRGBを十分にカバーしているが、Adobe RGB運用する場合ではカラーマネージメント対応ディスプレーが別途必要になる。とはいえ、ディスプレーとしてのレベルは悪くない。今回はプロ向けキャリブレーション機器の「i1Display Pro」で、6500Kと5000Kの2種類のカラーキャリブレーションを行った。

Adobe RGBとの比較(薄いグレー部分がiMac Pro)

sRGBとの比較(薄いグレー部分がiMac Pro)

iMac Pro 5000K

iMac Pro 6500K

PhotoshopとLightroomで検証

 さらに、Adobe Photoshop CC、Adobe Lightroom Classic CCをiMac Proで使った場合の使用感について触れていきたい。まずはLightroomで、1枚あたり容量約75MBで5000万画素のRAW画像100枚の読み書き速度、読み込みから標準プレビューの作成が終わるまでの時間を3回計測して、その平均を出した。書き出しは、未調整で品質100%、フルサイズJPEGとした。

iMac Pro
読み込み 1分05秒77
書き出し 2分58秒52

MacBook Pro(15インチ、Late 2013)
読み込み 1分54秒37
書き出し 4分55秒18

 MacBook Proでは、CPUの使用率がほぼ100%で空冷ファンが全力で回ったほか、メモリーの使用量は8GBぐらいだった。

 一方、iMac ProはCPU負荷が40%ぐらいで排出孔からは生暖かい風を感じる程度。空冷ファンの動作音はあまり聞こえず、動いているかどうかは近づいてやっとわかるぐらいだ。メモリー使用量は10GBぐらいだった。

iMac ProでのLightroomの使用メモリー

写真管理は接続インターフェースがボトルネックに

 Mac Proの内蔵SSDでは、読み込まれたタイミングで瞬時にプレビューが作成されるなど快適だった。画像のセレクト、検索、タグ付けも高速なSSDのおかげで問題ない。

「Blackmagic Disk Speed Test」でiMac Proの内蔵SSDをチェック

Lightroomの写真管理画面

 ただしiMac Proは、内蔵SSDの追加や交換は難しいので数TBもある手持ちの画像すべてを管理するのは運用上厳しい。そこで外付けHDDにある2400万~5000万画素のRAWデータを読み込ませてカタログ管理をしてみた。さずがに一気に約60000枚を読み込ませているのと、USB 3.0接続のHDDの転送速度の制約もあって、読み込みやプレビュー作成後は若干の遅延がみられたが、許容できる範囲だった。

 iMac Proの内蔵SSDで収まる作業は快適だが、外付けのストレージを使う場合は接続するインターフェースがボトルネックとなる。外付けストレージも、Thunderbolt 3やUSB 3.1 Gen.2などの高速なインタフェースに置き換えていく必要があるだろう。

PhotoshopレタッチでのiMac Proの実力

 次にPhotoshopでのレタッチでの使い心地をチェックしていく。まずは、アーティストの高橋正明氏を撮影した3枚の画像に10枚程度のレイヤーを作成したが動作は快適だった。

Photoshopで調整中の画面

Photoshopでの画像合成時の画面

Photoshopでの画像合成時の使用メモリー

 体感ではMacBook Proでも快適だったので、もう少し踏み込んだ検証をしてみた。Photoshopには、フィルターなどの一部の機能でマルチコアに対応しているが、上記の作業ではiMac Proのポテンシャルを十分に生かせていないようだ。そこで、容量530MBで解像度6000×4000ピクセル、レイヤー10枚のPSDファイルを展開してマルチコアに対応しているフィルターの処理時間を計測してみる。

ぼかし フィルター
iMac Pro 8秒22
MacBook Pro 29秒93

 これでiMac Proの速さを実感できた。次にPhotoshopで130MBのPSDファイルに3Dレンダリングを適用してみた。

3Dレンダリング
iMac Pro 7分11秒
MacBook Pro 23分01秒

iMac Pro CPU 90% 使用メモリー約8.5GB
MacBook Pro CPU 90% 使用メモリー約7.5GB

どこまでいけばレインボーサークル出るのか?

 5000万画素のRAWデータ100枚をPhotoshopでバッチ処理で変換処理しつつ、同じく5000万画素のRAWデータ100枚をLightroomでもバッチ処理で変換処理、そして画像をセレクトしながらタグ付けし、iMovieで4K/30pの3分30秒の動画6本を4K/30p、品質高のProRes 422で書き出してみると、ようやくスワップ領域(仮想メモリーの待避場所)が増加していった。しかし、最後までレインボーサークルが現れることはなかった。CPU、メモリー上限一杯を使っても高速SSDのおかげか、操作が若干遅延してるかなと感じるぐらいだった。

Photoshopで画像100枚を表示した場合のメモリー使用率

LightroomとPhotoshopで同時に5000万画素の画像を各100枚表示させつつ、iMovieで3分30秒の4K動画を書き出した場合の、CPUとメモリーの使用率

 iMac Proを1週間使ってみて、現像や書き出し(レンダリング)などの高速な処理が必要な時にパワーを上げて処理して終われば、逆に静音性を上げてくれた。デスクトップPCと比べても静か。PhotoshopやLightroomでの実作業では安定感があり快適なのは確かだ。扱う画像がさらに高画素化しても十分に対応できるだろう。ディスプレー一体型でのこの結果は、十分に運用できるのではないだろか。ただ、5000万画素クラスの画像のPhotoshopやLightroomで検証結果は確かに速いが、iMac Proのハイスペックから考えるとまだ実力は出しきれていないのかなと感じた。

小泉勝利(コイズミカツトシ)

木村晴氏に師事した後独立。人物撮影が得意で、タレント、スポーツ、コンサート、舞台など幅広い分野で活躍している。

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