2018年01月24日06時00分

日本企業が本当に事業を創出するためにすべきこと

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 2017年12月5日、企業の新規事業立ち上げの最新事例をテーマにした「01Booster Conference」が開催された。主催は学研やキリン、森永製菓などと新規事業創出を目的としたベンチャー企業のアクセラレーションプログラムを実施しているゼロワンブースター。最後のメインパネルディスカッションとして『「新規事業創造×日本企業」大放談 -賢者と経験者が語る、本当に事業を創出するためにすべきこと- 』の題で企業の新規事業創出をテーマとした対談を実施。

 モデレーターをゼロワンブースター共同代表の合田ジョージ氏が務め、パネリストとしてリクルートホールディングスの麻生要一氏、慶應義塾大学政策メディア研究科特任教授の村上恭一氏、森永製菓の執行役員で新領域創造事業部の大橋啓祐部長、ゼロワンブースター代表取締役・鈴木規文氏が登壇した。

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ゼロワンブースター共同代表の合田ジョージ氏

合田氏(以下、敬称略):テーマは「本当に事業を創出するためにすべきこと」です。ずばり、日本の事業創造の課題って何でしょうか?

麻生氏(以下、敬称略):好き勝手な個人的な意見でお話ししますが、当社リクルートもそうなのですけれど、端的に言うと、もっとお金を使ったほうがいいと思っています。ソフトバンクの孫さんとか見ていると、すごいじゃないですか。多分信用力を最大限に効かせて借入したら、レバレッジが効いて、投資の桁を2つぐらい上げられると思います。

 自社と同じ規模の会社を買収するくらいまでの、戦略オプションを考えていったら、小さい新規事業なんて決めやすくなるじゃないかなと思っています。昨今のこの好景気で、かつ日本以外の国のスタートアップや経済の成り立ちを見ていると、日本のこの張り方は桁が違うという感じを受けるのが、課題じゃないかなと思います。

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株式会社リクルートホールディングス・麻生要一氏

村上氏(以下、敬称略):これはまったくそのとおりですね。以前新店舗の開発をやっていたときは、完全に数字は無視していましたね。どれぐらいいいものを作れるかというところで勝負していた。今、投資と浪費の見極めを経営者ができていないというのは、経営学者として最大の問題点かなと。張り方が弱いというのは、いわゆるオーバーコンプライアンスなのです。

 今から思うと、たとえば本田宗一郎さんなんて、まだ浜松のころにミカン箱ひっくり返して「おれたちは世界一になるんだ」と言っていて、単なるほら吹きですよ。でもそれがオッケーで、みんながついていって、そこに国も金を払う。さらには通産省の技官が藤沢武夫さんを紹介するなど、社会的な仕組みとかがあった。最近欠けているというのは、そういうのだなと思います。

合田:では大手企業の問題というのはどこにありますか?

大橋氏(以下、敬称略):新規事業では私の会社も「アクセラレータープログラム」を3回連続してやった。すると、どうやって新規事業を進めていったらいいか、どうやって上司を説得すればいいか、みたいなご質問が多く来るのです。「そんなことより、まずやったほうがいいですよね」というのがまずひとつ。

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森永製菓株式会社執行役員・新領域創造事業部部長・大橋啓祐氏

 それと、ベンチャーの方は自ら起業して、借金を背負ってその事業をやろうとしているのに、アクセラレータープログラムは応援する形なので、一生懸命サポートはするのですけれど、何のリスクも犯してない。給料はもらえますし、運転資金も苦しくなるということもない。だからこそ、会社に何も断りを入れずに勝手にやって、何か問題があったとしたら、勝手にやって怒られるぐらいのリスクと取らないと、何のためにやっているのですかと思います。

 あとは、今までは「こうすべきだ」とか「昔からこういうもんだ」とか、そういう昔の古い慣習と、上司の顔色を伺って忖度している人がたくさんいるから、なかなかものごとが前に進まないのかなと。

合田:ここまでの話を受けて鈴木さんいかがでしょうか。

鈴木氏(以下、敬称略):本気度が高い人が少ないというのが、正直なところです。われわれが大手企業の方々と新規事業開発部の方と話をしているときに、本気で事業をつくろうという感覚が伝わる人って、実はあまりいない。そういう人たちは、積極的に外へ出ちゃっている。そこが課題かなと思っています。社内に埋まっている人材をどうやって掘り起こし、輝かすかというのは、実は組織自体かなと思っています。

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ゼロワンブースター代表取締役・鈴木規文氏

麻生:本気度が高い人がいないという点ですけど、これはぼくが着任していた2年半に変えた大きいポイントです、大企業で安定して働いていたら、本気になれというほうが無理で。ただ、僕は新規事業開発エグゼクティブだったので、やらなきゃいけない。一番苦労したのが「やりたい」って言い出してくれる従業員の心に火を付けるということでした。だから、そこを仕組みにしました。

 やることはすごいシンプルです。年間におよそ90回の社内イベントをやっていました。2、3日に1回ですね。研修やセミナー、ミートアップというただの飲み会をやったり、パネルディスカッションといって、社内の新規事業開発をやっている従業員を集めてやってみたり、役員の人を呼んできたりとか、いろいろなことをやりました。

 一番当たったのが、課題が根深い現場にとにかく行ってみてくださいということ。貧困の現場、介護でほんとに回らない現場、病院の先生が足りなくて、病院のオペレーションが破綻している現場、なんでもいいので行ってみてくださいと。生で困っている人を見たら、目の前に人が倒れていたら、助けなきゃと思うのが人間なので、そこでこの世の中をなんとかしなきゃいけないって、やっぱり一定の確率で思うのですね。みたいなことを、2年半やってきてすべてのサラリーマンは社内起業家に覚醒させることができるという、確信めいたものを持っています。

合田:大橋部長は社内の人間を全員社内起業家にできると思われますか?

大橋:リクルートさんとうちは、まったく社風が違うと思うので、全員は厳しいかなと思いますが、そういう人を育てることは十分可能だと思っています。全然違う外部の方と混ぜ合わせると、自分たちの思考の狭さとか、ものの見方の狭さみたいなものに気づいて「ああ、世の中ってこうだったのか」みたいなことが起きます。うちの会社ですと、普通にマスマーケットにものを売るということしか考えてなかった人たちが、「ああ、こんな売り方も、あんな売り方もあるんですね」ということに気づくことで「世の中にこんな面白い事業がいっぱいあるんですね」という、新規事業に興味が湧いたり、自分でやってみたい、みたいな人は十分つくり出せるかなと。

鈴木:実はそういう起業家気質を持った人というのは、大手企業には必ずいる。環境をつくってあげると、覚醒できる人がいる。というのは痛感しています。それは体験です。今、われわれがやっているのがゼロワンブースターの起業家のオフィスに連れてきちゃうこと。横で起業家が朝から晩まで、飯を食うのも忘れて、寝る時間も忘れて、裸足で短パンで歩いているところで、一緒に仕事をさせるわけですね。そうすると変わる。変容するわけですね。

村上:こういう名言をおっしゃった方がおられます。「あんな、金魚いるやろ。金魚買いましたろ。みんな、金魚のことを気にすんねん。金魚飼うときな、金魚のことしか気にしてなかったら、金魚が死んでしまうねん。金魚を飼いたかったらな、水をちゃんと変えなあかんねん」

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慶應義塾大学政策メディア研究科特任教授・村上恭一氏

 松下幸之助の言葉です。今の最大の問題は起業家をつくることを考えて、人のことばっかり集中していて、会社の環境を考えていない。昔の賢者はちゃんと金魚を飼うなら、水という環境の問題だということを見抜いておられたんです。私は、松下幸之助さんの名言集と言われている本の中で、一番好きな言葉がこの金魚を飼うというところでして。まず水を替えるというのがひとつですね。

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