2017年09月20日07時00分

ガード下の保育園「子供の声聞こえなくていい」

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髪ぐしゃぐしゃ

 家電ASCIIの盛田 諒(34)です、おはようございます。水曜の育児コラム「男子育休に入る」の時間です。今年2月に赤ちゃんが生まれて2ヵ月の育休をとり、育児の地獄と天国を同時に感じる日々を過ごしています。

 寝不足がつづき体力的にもキツいのですが、朝起きたとき赤ちゃんがニコーとしているだけで「かわいいな!仕方ないな!」という形で元気100倍のドーピング状態になっています。いつか元気の臨界点がおとずれそうで怖いです。愛と勇気しか友達がいないアンパンも似たような状態なのではないかと思います。がんばりすぎないで。

 6ヵ月をすぎ、赤ちゃんは近所の保育施設で一時保育(いっときほいく)に預けられるようになりました。ならし保育の意味もありさっそく預けてみたのですが、「保育中にミルクをあたえる場合、あたえる回数分だけ哺乳瓶をもってきてください」といわれ、妻がびっくりしていました。消毒できないということなのだと思いますが驚きです。

 保活というアホみたいなことをしているときもそうなのですが、保育園のことを知るほど「なぜこんなことになっているの?」と思うことが増えていきます。最近妻にすすめられて読んだ本が、まさに「まさか」のオンパレードでした。


●高架下の保育園

hoiku

『保育園を呼ぶ声が聞こえる』
猪熊弘子、國分功一郎、ブレイディみかこ
定価1620円 太田出版
http://www.ohtabooks.com/publish/2017/06/19182446.html

 ジャーナリストの猪熊弘子さんが、イギリスで保育士をしながらライターをしているブレイディみかこさん、哲学者の國分功一郎さんとともに、日本の保育園、保育の未来について考える一冊です。現状の問題点がわかりやすくまとめられて、とても読みやすいです。保育について勉強しようとしたときのきっかけになるのではないかと思います。

 本の中で衝撃を受けたのが「高架下の保育園」です。

 「子どもの声が聞こえなくていい、と歓迎されているようです」

 という記載があり、思わず目を疑いました。まさか。

 本で紹介されていた「高架下の保育園」は某電鉄グループが運営しているところ。振動や騒音をおさえるため線路の下にゴムが敷いてあるそうですが、ラッシュ時には3分に1本電車が通ります。園庭も高架下にあり、大きなコンクリートの柱に子どもがぶつからないようクッションを巻いています。ガード下だけあり、保育園が駅から近いことを売りにしているということでした。

 川崎市内ではなんと、産廃置き場の隣に認可保育園が建っているそうです。

 産廃ガレキを重機でつぶす音が一日中絶え間なく響いていて、ホコリも多い。保育園運営会社は「産廃の会社は立ち退く」と言っていたけれど、猪熊さんが取材したところ産廃業者が立ち退く予定はなし。でも、保育園に子供を入れた親たちは「二年待ってやっと入れたのでよかったです」と言っているということでした。

 それでも認可なのかと、本当に信じられない気持ちでした。

 認可保育園の場合、どの子をどの園に入れるかは自治体が決めます。

 親は子どもを入園させたい認可保育園を第一希望から順番に書いた書類を自治体に提出したら、あとは自治体による審査次第。保育園に子供を入れられなければ働けないので、ビミョーな保育園を希望リストに入れるということもあるかと思います。でも、それをリストに入れた親の責任ですませてしまうのはヘンだと感じます。


●監査が厳しいが高いイギリス、監査がユルいが安い日本

 ブレイディさんは本の中で、産廃の隣にある園について「イギリスだったら認可を取り消されますよ」と言っていました。日本の保育施設は監査がユルいらしく、保育内容に関する全国共通の監査が義務づけられていないことがまさかの保育園をつくる一因になっているようです。

 イギリスではOfsted(Office for Standards in Education、教育保育水準監査局)という機関による厳しい審査があります。

「子どもたちの幅広いニーズを満たしているか」
「子どもたちの健康と安全に貢献しているか」
「幹部・運営側は有効にEYFSを実践しているか」

※EYFS:国が定めた法的フレームワークと教育カリキュラム(Early Years Foundation Stage)

 全国の保育施設を上記3分野で4段階評価し、総合評価(レビュー)をウェブで公開。保護者はレビューを見て、どの保育園がいいか決めます。便利ですね。

 また、イギリスは日本のように「認可保育園」「認証保育所」「認可外保育施設」など分かりづらい保育施設の違いもなく、施設による保育方針の差もありません。

 日本では、認可外保育施設で子どもが亡くなるような事故が起きてしまったあとも、監査・レビューがないおかげで、保育施設側が有利になってしまうことがあるそうです。

 “大勢の子どもを無資格の大人が一人でみていたような劣悪な認可外で死亡事故が起きても、ほかに証人がいないからと、裁判でも子どもを亡くした親が負けたり、裁判所から和解を勧められることが多いんです。自分たちのせいではない、と親に謝罪しない施設も多いですね。そして、そういうどうしようもないところほど、裁判の和解条件に「今後、うちの園について話さない」「名前を出さない」といった条項を入れてきます。ですから、インターネット上でその事故についての記事が出てこないことがあります。業者にお金を払って検索エンジンに引っかからないようにしている可能性もありますし、名前を変えてまた新しい保育施設をはじめることもあるからです。過去に二人の子どもを死なせる事故を起こしているのに、何食わぬ顔で名前を変え、保育施設を経営しつづけて三人目の被害者を出したところさえあります”(p.46より引用)

 ただしイギリスの保育園もいいところばかりではありません。料金面の不平等性です。

 ブレイディさんによれば、ロンドンでは月20万円を超える地域もあるとか。猪熊さんも本の中で言っていますが、日本では都内でもせいぜい月7万円台です。

 背景にはイギリスの階級主義社会があるそうです。低所得家庭が子どもを無料で預けられる制度などもあるのですが、実際に保育園に入れようとすると、ほかの子の親御さんに「そういう子どもは入れないで」と言われてしまうのだといいます。


●現場を第一に考えてほしい

 逆に、日本の保育園がいいのは平等であることです。

 哲学者・國分功一郎さんは本の中で日本の平等思考を評価しつつ、保育士の配置基準や、子ども1人あたりの面積など、改善すべきだった点を放置してきた点を課題としてあげています。

 理念は良いのに、現場が顧みられていないのが問題なのだなと感じます。いちばんイヤだと思ったのは、いま厚労省が進めようとしているという、介護福祉士と保育士の一本化です。

 介護業界は人手不足で、介護福祉士になれる人が増えるのは歓迎。一方、保育側としては、保育施設と高齢者介護施設を統合できれば人材を流用できて経営メリットがある。施設を一緒くたにして「むかしのコミュニティーのように子供と高齢者が一緒にいる空間」として紹介すれば、おたがい良いことづくめの名案のようにも見えます。

 でも、育児と介護はまったく別物です。

 保育施設は子供を教育する場所で、保育士も子供を教育する人なのに、なぜ介護福祉士資格と共通化できるのか。学校の先生と介護福祉士がおなじ資格だといわれたらヘンだと感じるはずなのに。

 國分さんは本の中で「教育にしろ保育にしろ『財政難でお金がないから、お金がかからないものを』という方向性しかないんじゃないですか?」ときびしく指摘していました。

 本を読んでいてたびたび感じたのは、現場が軽視されているということでした。

 たとえば、待機児童問題を解決するため、保育士1人が見られる子供の量を増やそうとか、子供と保育士のことを考えているとは思えない施策を導入していくのは、解決ではなく単なるその場しのぎのように思えます。こうした現場軽視のその場しのぎが積み重なった結果「まさか」が増えているのだとしたらとても悲しいことのように思えました。

 本のあとがきにもありますが、赤ちゃんがいると社会を子供目線で見つめなおすようになります。自分が子供のころはどうだったか、本当はどうなっているべきなのか。保育園は赤ちゃんが社会にふれる最初のきっかけです。おかしいと思ったものには素直におかしいと言い、少しでもいい環境をつくっていけたらと感じました。

 次回から、今回のように親としての知識を勉強していく「親勉」シリーズをちょこちょこやっていきたいと思います。親1年生として疑問に感じたこと、納得したことを共有できればと思います。


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